17宝くじの行方
次の日。
俺は次の試合に備えてロードワークに出た。
努力すればきっと普通に勝てるはずだ。努力は自分を裏切らない。
問題は・・今からだと努力する時間が全然足りないことかな。
通行人1「お、実は策士だったにいちゃんじゃねーか。次もがんばれよ!」
双星「え?俺?」
通行人2「次もアッと驚く勝ち方してくれよな!」
双星「いえ違うんです。全部偶然の出来事なんですよ。」
通行人3「ふふふ、もう誰も信じないわよそんなの。新聞にちゃーんと書いてあるもの。」
・・どうして本人が言ってることよりも、新聞の方を信じるの?
ついこの間は国が偶然だったって調査結果を出したと新聞に載ってたのに。
内容がころころ変わる新聞と一環して変わらない本人の声・・本当に信じるべきはどちらかわからないのだろうか?
・・・・
外を走っていると声かけられまくって訓練にならないので宿に戻って来た。
宿は入口をくぐるとエントランスになっていて、食事なんかもここでできる。
客室はここを通るのだけど・・いつもと違う。
テーブルをいくつか占拠して、なんか袋がたくさん置かれてる。
?「お待ちしておりました。」
双星「俺?えっと、どちら様ですか?」
?「当方は宝くじ協会の者です。先日は宝くじのご購入ありがとうございました。」
双星「・・あ、あの時のか。ちょっとおかしかったから調査してもらった時のやつ。」
?「はい。調査の結果、なにひとつおかしな点はなく、無作為でシャッフルした結果・・偶然当たりくじが偏ったと判明しました。」
双星「そうなんですか・・え?」
あの当たりまくりのクジが偶然だと!?
?「つきまして、1等1000万が10枚、2等100万が90枚、合計1億9000万の当選金です。」
宝くじ協会の使者さんはテーブルに積まれたものを見た。
・・え、この袋たちに入っているのって全部お金?
?「どうぞご確認ください。」
双星「いや確認と言われましても・・金貨1枚10000だとして、1億9000万だと19000枚の金貨ですよ。」
双星「数えるのに1枚1秒かかるとすると、19000秒・・5時間以上かかりますが?」
?「・・さすが噂通り、計算高いですね。」
いや普通の計算だけど。俺の噂、進化してきてない?
1時間は3600秒、5時間で18000秒。こういうキリのいい数字って便利だから暗記しない?
?「ところでお名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」
双星「ふぇ?双星ですが。」
?「紙に書いてもらってもよろしいですか?」
双星「はい。」
紙に名前を書いた。
?「受け取り契約書にサインいただきありがとうございます。では私はこれで。」
宝くじ協会の人はダッシュで逃げた。
双星「・・あれ!?」
受け取り契約書って・・えー1億9000万とか持ち運びに困るよ。
客1「持つべきものは友達だよな!」
双星「え?どちら様ですか?」
客2「困ったときは助け合う。友達っていいもんだよな!」
双星「まぁ・・で、どちら様ですか?」
客3「辛いとき、苦しいとき、友達がいる・・心が安らぐよな!」
双星「だーかーらー、どちら様ですか?」
客4「私ね、ずっとひとりで生きてきたつもりだった。でも本当は友達がいてくれたから私がここにいる。そう気付いたの!友達って素敵!」
双星「はいはい、つまりたかりですか?」
大金を手にすると見知らぬ親戚が増えると聞いたが、世の中どうなっているんだ?
悪人を残らず死刑にしていけば、やがて善人だけの世界になるんじゃね?もしくは人類が絶滅するか。
客5「たかりだとは心外だなぁ。友達同士助け合うのは当然のことだろう?」
双星「で、どちら様ですか?」
客6「友達って素晴らしい!」
その理論はWIN-WINに似ているかな。
強い者が弱い者に対して言うWIN-WINは、WIN-LOSEと同じ意味というやつ。
友達同士助け合うという言葉も、助けられる側が言えば、お前が俺を助けろという友情の強制。
双星「俺は、名前も知らない人を友達とは思いませんから。」
モルダー「モルダーだ!」
ルシファー「ルシファーや。」
コード「コードだぜ。」
アルファ「アルファよ。」
ゴッド「ミラクル・ゴッドだ。」
タヌキ「キツネだ。」
麗しのミルキーウェイ「ジェニカよ。」
堕天使だったり神様だったり、本名だろうな?
双星「というか今聞いても・・」
モルダー「まあまあ、お前にためになる話をしてやろう。」
モルダーさんは勝手に喋り出した。
モルダー「あるところに、4人の遊び友達がいた。いつも一緒に夜遅くまで遊んでいた。」
モルダー「ある日、その中のひとりがすっげえ宝物を見つけたんだ。」
モルダー「仲間たちは宝物を見せろと迫る。だが、宝を見つけたやつはそれを頑なに拒否する。」
モルダー「業を煮やした仲間たちは、そいつを殺して宝物を奪ってしまうんだ。」
モルダー「ああ、独り占めはよくないよなぁ。そうすりゃ殺されずに済んだのに。」
双星「自分の宝は自分の物。他の人に見せなくてもなにも問題ない。」
双星「他人の宝物を殺してまで奪うやつらはとっとと死刑になればいいんだよ。」
双星「それで終わり?」
モルダー「なぁ、仲間が突然宝物を見つけちゃったらそりゃ見たいだろう?オレたちの友情を忘れないでくれ。」
・・いつ俺たちに友情が芽生えたんだろう?
双星「まぁせっかく話をしてくれたんだし、お酒でもおごるよ。」
モルダー「現ナマが大好きです!」
双星「さて部屋に戻るか。」
タヌキ「おい待て待て。モルダーは自分の欲望に正直で困る。友達なら相手の望む話をしなきゃな。」
双星「・・つまり俺の望む話?」
タヌキ「次の対戦相手の話なんてどうだ?」
双星「そういや明日の相手知らないや!」
全員「(また計算か)」
タヌキ「とびっきりにやばい奴だぜ。前回大会優勝者、”神の子”クリストファーだ。」
双星「神の子?」
タヌキ「誰もクリストファーに攻撃できないんだ。相棒であるお前が闘ったあの改造人間も前回大会はそれでやられたんだ。」
そういや前回は準優勝だっけ改造人間さん。
てかいつ俺はあなたの相棒になったの?初対面なんですが。
タヌキ「奴を攻撃しようとすると、体が動かなくなるんだ。んで動けない間にやられる。」
双星「なるほど。」
タヌキ「今日の新聞見たか?明日の対戦についての話がトップニュースだぜ。」
双星「なんて書いてあるの?」
タヌキ「”すべては計算による結果です”・・道化師双星が神の子クリストファーを計算で打ち破れるか!?神への挑戦が明日、始まる!」
双星「俺のセリフねつ造されてるぅぅぅ」
新聞にコメントとかしてないよ!?
タヌキ「で、どう闘うつもりだ?」
双星「攻撃しようとすると体が動かなくなるのなら、攻撃しなけりゃいいんじゃないの?」
罠を張って、偶然相手が引っかかるのを待つとか・・いやバレバレか。
タヌキ「それが敵意とか殺意とかを向けるだけでダメらしい。武器を構えたら動けなくなったってやつがいたぞ。」
双星「・・まぁ俺は元々武器を扱えないから。」
タヌキ「昨日ナイフ投げたのは?」
双星「色々アイテムもらった中のひとつだよ。扱い方は習ってない、痺れナイフだからかすればOKって代物だからね。」
タヌキ「武器なしで・・そうか、蜂を使うんだな!・・だがそれも無理だ。」
双星「なんで?」
タヌキ「クリストファーを攻撃できないのは人間だけじゃない。動物も、虫も攻撃できないんだ。」
なるほど、そりゃ神の子と呼ばれるだけあるわ。
タヌキ「急所攻撃はダメとして・・そうか、おならで倒すつもりだな!」
双星「それも広い意味で攻撃になりそう。」
毒ガス攻撃として。
タヌキ「ま、やつを倒せたやつは今までいないってことだ。十分気を付けるんだな。」
双星「まぁぶっちゃけここまで勝ち残ったことが奇跡みたいなものだし、別に五体満足なら負けても構わないよ。」
タヌキ「おいおい優勝すれば100億だぞ!・・い、いやこれも計算のうちか・・?」
双星「いや計算とかないから。全部ぶっつけ本番で偶然勝っただけだよ。」
タヌキ「お、オレは騙されないぞ!全部計算だったってみんな言ってんだから!」
本人が否定してるのに・・どうして本人の話を軽視して、周りの人の話を重視するんだ?
タヌキ「で、どうだったオレの話?」
モルダー「・・全部新聞見りゃ載ってる話じゃねえか。価値ない価値ない。」
タヌキ「うっせえお前は黙ってろ。」
双星「お酒でもおごるよ。」
タヌキ「えー。」
モルダー「ぐへへまあその程度の情報だな。もっと価値がある情報っつーのは・・」
ルシファー「・・神の子を殺す方法だろ?」
双星「ええとあなたは・・ルシファーさん。」
ルシファー「かつて神の子と呼ばれた者がいた。神の祝福を受け、魔の王を倒す運命を背負った・・勇者。」
勇者・・魔王を倒すあれか。
双星「でも今は勇者も魔王もいませんよね?」
ルシファー「そうだ。とある者が勇者を殺し、魔王を殺し、その存在を殺した。」
ルシファー「存在を殺された勇者も魔王も二度と現れない。ま、自称は現れるがな。」
双星「学校で習いましたけど、それおとぎ話みたいなもんじゃないですか?いつの時代の話かもわかっていないんですよね?」
ルシファー「本当にあった話さ。だがどの時代の話でもない・・消された時間の物語だ。」
双星「意味がわかりません。」
ルシファー「そうだなぁ・・例えば過去に戻って失敗をやり直したとしよう。そうすると失敗した過去と成功した過去が存在することになる。」
ルシファー「その場合、過去に戻った奴はそれがわかるだろうが、他の奴らは気付かない。」
双星「過去に戻ってやり直した方の時間軸しか存在しなくなる?」
ルシファー「いや、過去に戻る前の時間軸と、過去に戻った後の時間軸の両方存在する。平行世界、パラレルワールドと呼ばれるものだ。」
それが消された時間となるわけだ・・そうルシファーさんは言った。
双星「・・待ってください。それっておかしくありませんか?」
双星「勇者と魔王の存在が殺されたのは、消された時間・・この時間軸じゃないって話でしょ?ならこの世界の勇者や魔王はいるはずでは?」
ルシファー「存在を消すってのはな、すべての時間軸から存在を消すんだよ。だからどれだけ過去をやり直しても、もう勇者や魔王は現れない。」
双星「誰が、なんでそんなことを?」
ルシファー「おっと、その情報はそこに積んでる金を全部使っても教えられない。それより神の子を殺す方法だろう?」
まぁそうだな。ちょっと気になるけど。
双星「勇者・・神の子を殺す武器でもあるんですか?」
ルシファー「おしいな。神の子を殺した武器・・その欠片がこれだ。」
ルシファーさんは親指と人差し指でその欠片を持って見せてくれた。
・・鉄?いや違うっぽい。
ルシファー「これをお守りに入れて・・これを装備すりゃ神の子を攻撃することが可能!ってわけだ。」
双星「へー」
超うさんくさい。
ルシファー「神の子を倒せる大事な大事なアイテムだ。ああ!そんな目で見るなよ。わかってる、大事な友達が困ってるんだ・・助けなきゃ友じゃねえよな。」
双星「いや別に。」
ルシファー「ほらよ、これはお前にやる。困ったときはお互い様さ・・ちらっ。」
タヌキ「そんな鉄くずに金出すやつはいねぇよ。」
双星「うーん。」
ルシファー「信じるべきは外野の言葉じゃない。話しているのはオレと、お前だ。」
ルシファー「決めるのは誰だ?外野か?オレか?・・それともお前か?」
双星「うーんどうしよっかなぁ。」
タヌキ「そんな無駄金使うんならオレにくれよ!」
双星「・・さっき、俺が試合で勝っていたのは偶然だと言った時、あなたは俺を信じず周りの人を信じた。」
双星「友を信じないのなら、俺もあなたの言うことは信じません。」
タヌキ「う・・」
双星「ただ、だからと言ってルシファーさんのこれが信用できるってわけでもない。うーんどうしたものか。」
ルシファーさんが渡してきたこれ・・お守りを見ながら眉を寄せる。
ルシファー「論理的に考えれば怪しいもんだってのはオレでもわかる。」
ルシファー「だがな、神の子と闘うっていうのは神に抗うってことだ。論理的にどうにかなることじゃない。」
ルシファー「今お前に必要なのは非論理な力だ!オレを・・信じろ。」
双星「・・昔を思い出した。」
双星「俺が旅に出たのは、友達が誘ってくれたからなんだよな。」
そいつは木刀と鍋ふたを持って言うんだ。さらわれたお姫様を助けて英雄になろう・・って。
みんな笑いながら断って・・俺だけがそいつと一緒に冒険をした。
失敗だらけで、さらわれたお姫様なんていなくて、4回死にかけた。
うまくいかないことだらけで、お金がなくなって・・俺を誘ってくれたやつは地元に帰ったよ。
・・でも俺はまだ、夢を見ている。さらわれたお姫様を助けて英雄になるという夢を。
双星「俺はさ、論理的に考えれば無理だろってネタで冒険を初めて、今ここにいるんだなぁって。」
双星「物事を解決するには論理的な力が必要だ。でも人を動かすのは非論理的なものでよい。」
そして人が動けば物事は新しい展開を見せる。
ただまぁ、鬼が出るか仏が出るかはわからないけどね。
双星「いくら欲しい?」
ルシファー「ちょっと研究費がほしくてね、1千万。」
双星「いいよ持ってって。さすがにこれを信用しろというのは無理だけど、久しぶりに昔を思い出させてくれた礼だ。」
ルシファー「んっしゃー!」
ルシファーさんは1千万持っていった。
モルダー「・・実はこの割り箸、神をも貫くと言われる伝説の割り箸なんだ。」
タヌキ「いやこのお手拭きは神の力を拭き取ることができる魔法のお手拭きでな。」
アルファ「信じられないかもしれないけど、このコップはすべての攻撃を受け止める力があるの。」
コード「この椅子は伝説の木を使っていて、この椅子の下で告白すると恋人になれるという伝説がある。」
ゴッド「オレがミラクル・ゴッドだ!」
麗しのミルキーウェイ「私が使った食器はファンが高額の値をつけるくらい価値が跳ね上がるの。」
後半なにが言いたいんだ!?
双星「というかいつの間にか夜になってるじゃないか。そろそろ休むよ。」
タヌキ「オレの金は!?」
双星「俺のなんですが・・とはいえ使い道はないし、重くて邪魔だよね。」
双星「多少目減りするけど、持ち運びしやすい宝石にでも変えようかな・・」
モルダー「えーモルダー銀行はいかがー?余ったお金はモルダー銀行にお預けください。お預け、積み立て喜んで!」
引き出しには応じない銀行っぽい。
ヒミカ「すまぬがここに双星が泊まっていると・・お、双星!ちょうどよかった。」
シャルロット「こんなところで作戦会議か?」
双星「ヒミカさん、王女様。どうしたんですか?」
モルダー「なに?王女様!?」
タヌキ「うおおヒミカ様あああああ!」
うーん王女様は当然として、ヒミカさんもかなりの人気な感じ。
ヒミカ「明日の試合のことで話があってな・・取り込み中か?」
双星「いえ構いませんよ。まぁ困りごとはありますが。」
ヒミカ「困りごと?なんだ?」
双星「ああいえたいしたことじゃないので・・」
ヒミカ「いいからさっさと話せ!」
双星「はい・・えーと、実は宝くじが当たったんですが、金額が大きすぎて処理に困っているんです。」
ヒミカ「ほう・・なら軍に貸してもらえないか?予算を絞られてちと困っていてな。」
双星「いいですよ。」
ヒミカ「いくらだ?」
双星「ええと、残っているのは・・1億8000万ほど。」
ヒミカ「・・なるほど、旅人が持つには重すぎるな。」
ヒミカさんは部下を呼んでお金を持っていってくれた。
宿の人たちは残念がっていたが。
途中、メイドさんが夕ご飯を作りに来たので、ヒミカさんたちの飲み物も頼んでおいた。
・・
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