177第二王子
研究室を出て俺は少し悩んだ。
B国には苦しんでいる人がいる。
この強運は、苦しむ人たちのために使わなければならないんじゃないか?
考えながら部屋に戻ると、もうみんな戻っていた。
メイド「あ、双星様。そろそろ夕食だそうです。」
記者「早く!早く!王宮の食事だよ!」
宮廷料理ってやつ?
普通にかつ丼とかでいいんだけど。砂糖いっぱいの甘じょっぱいやつ。
もしくは鮭とかお寿司とか。
・・
・・・・
夕食は、第一王子と。
出された品を見ると・・
記者「一点豪華主義って感じ。」
メイン料理は豪華そうだけど、それ以外は地味な感じがした。
第一王子「せめてもの見栄です。国民が飢えているのに王族が贅沢などできないでしょう。」
第一王子「お口に合わなかったらすみません。」
双星「いえそんな、おいしいですよ。」
記者「B国ってそんな貧乏なの?」
第一王子「ええ、土地は痩せていて目立った産業もなく、それでいて強国C国から防衛しなければならず・・」
第一王子「騙し騙しやっている状況ですね。」
んー。
双星「C国はそんなすごい国なんですか?」
第一王子「今のC国は本当に強いですよ。経済力、兵力は間違いなくA国B国に大きく差をつけています。」
第一王子「およそ3倍以上ですね。」
確かA国の兵力って10万くらいだったような。第一回魔王戦の時点で。
B国はどれくらいかわからないけど・・最低でもC国は30万以上か・・ミルカさんもいるし、強いだろうなぁ。
ダークエルフ「練度もかなりのものだった。特に国王直属の兵はよく鍛えられていた。」
第一王子「ご存知でしたか。」
ダークエルフ「悪魔騒ぎの時にな。あれを見ると、他にも隠し玉がありそうに思える。」
ダークエルフ「亡くなったC国の前王なら色々仕掛けていそうだ。」
第一王子「前王は行き過ぎと言えるほど慎重派でしたね。しかし新王は違います。」
第一王子「まだ経験は浅く他の兄弟との仲も良好とは言い難い。内部が固まっていない今がチャンスです。」
記者「・・記事にしたら消されそう・・」
第一王子「ご安心ください。そちらに人を送りますので、出していい記事かチェックしてあげますよ。」
記者「ふぁーい。」
うーん、検閲かな?
双星「というか記者さん、言論弾圧とは戦わないの?」
記者「本当に消されるとかごめんです。」
まぁ・・あれ、つまり俺は舐められてる?
記者「でもそれだけC国がやばい相手なら、双星がいてもなんとかならないんじゃない?」
第一王子「いえ、幸運とは人間の常識とはかけ離れた結果をもたらします。」
記者「具体的には?」
第一王子「そうですね。双星殿なら東西南北新聞を世界一の報道機関にすることも可能ですよ。」
記者「じゃあ、採用!」
双星「いや辞退します。」
捏造機関と関わったら、俺も同じような人だと思われちゃう。
悪人の仲間もまた悪人なり。
悪い人と関わっていると、いつの間にか悪事の片棒を担がされているんだよ。本人の考えや性格なんか関係なくね。
記者「後悔しても知らないから!」
双星「しないしない。」
第一王子「とはいえこちらも双星殿にすべてお願いする・・ということはありません。」
第一王子「・・今日は遅いですから、明日は我が国の秘密兵器をお見せしますよ。」
第一王子さんは妖しげに笑った。
中々のイケメン。敵認定していい?
皿「デブチビハゲの嫉妬は見苦しいぞ。」
い、いや全部違うし!たぶん!
彡⌒ミ「髪の話した?」
お帰りください。
宇宙人「そろそろ出番だな。」
お帰りください。
アメリカンショートヘア「みゃあ♪」
猫かわいい。
・・
・・・・
ダークエルフ「さて、さっき城内を見て回ったところ、シャルロット王女が軟禁されていることがわかった。」
メイド「シャルロット王女って、双星様と武闘大会で闘ったB国の王女様?」
部屋に戻ったら、ダークエルフさんがやばい調査結果を報告してきた。
記者「記事にしたいぃぃぃでも暗殺されそう・・」
ダークエルフ「暗殺なんて古い。今は存在を消す方が主流だ。」
メイド「どうなるんですか?」
ダークエルフ「いつの間にか本人がいなくなり、一切報道されない。最初からいなかった人な扱いになる。」
うん、それ法的にも人権的にもやっちゃダメなやり方だよね?
記者「きーじーにー、しーたーいーぃー。」
ダークエルフ「手柄もとられるが、他の人の名前で書くとか。」
・・その人が消されるのでは?
記者「それももにょるぅ・・そうだ、双星が書けば幸運で平気では?」
いや、俺も消されちゃう!
記者「結局のところねぇ、幸運って具体的になんなの?」
メイド「あらゆることが都合のいい結果になる力じゃないですか?」
記者「だからこう、原理とか。」
メイド「・・運命?」
記者「運命を変える能力?運命ってなんなの?私たちは自由に生きてるんじゃないの?運命が決まってるならそもそも自由なんてまやかしじゃない!」
記者「というか変えられるなら運命は決まっていないことになって、じゃあ決まっていないならそれって運命とは呼ばないんじゃない?」
・・なんなんだろうね。
ダークエルフ「考えてもわからないことを考えてどうするの?」
記者「幸運とか、変なのに振り回されすぎてない?私たち人間だよ?万物の霊長じゃん。」
ダークエルフ「はっ(笑)」
記者「ダークエルフなんかにはわからないでしょうけど、人間は地上の大半を支配しているんだから!」
ダークエルフ「今は夜か・・ちょうどいい、窓から空を見てみろ。」
星が綺麗だ。
いつも星は変わらず光り輝いている。
記者「見たところで夜空に星が見える程度だけど?」
ダークエルフ「私たちがいるところも星のひとつだ。」
記者「そだね。」
ダークエルフ「空には数多の星がある。当然それぞれに大地があるわけ。」
ダークエルフ「ここから見える星がすべてではない。夏には夏の星、冬には冬の星が見えるように。」
ダークエルフ「わかる?お前たち人間が支配している世界は、全体から見たら極々小さな世界だということを。」
記者「誰も行けないところなんかカウントする必要ないでしょ。人間はすごいの、偉大な存在よ。」
ダークエルフ「お前の言っている幸運・・わけのわからないものは、人間の行けない領域から来ているとなぜわからん。」
ダークエルフ「お前たち人間はちゃんと言葉を用意しているだろうに・・井の中の蛙だと。」
双星「えーと、つまり、宇宙人の仕業ってこと?」
宇宙人って、あれのこと?
宇宙人「あれですよろしく。」
これ?
ダークエルフ「目に見えるものがすべてではない。天使は天界、精霊は精霊界、そしてあの世があっても、目には見えない。」
ダークエルフ「幸運だろうが運命だろうが、私たちには認識できない領域なのだろう。」
圧倒的な未知の力に、絶望を感じる。
人は抗うこともできず決められた道を進むしかできないのだろうか?
壁「そんなことないよ。人間は事実を積み上げ見えないことも理解しようとしてきたじゃないか。」
壁「今はわからなくても、いずれわかる日が来る。一緒に解き明かしていこうよ。」
壁さん優しいなぁ。
でもどうすればいいの?
壁「事実を把握するんだ。ほら、例えば双星にしか聞こえない声がある。」
壁「他の人はわからないから、双星が教えてあげるんだ。」
幻聴だって言われそうな気がする。
いやメイドさんとダークエルフさんは信じてくれるかもしれないけど。
壁「安心していいよ。他の人に聞こえるよう喋ってみるから。」
壁「ボクたちは双星の味方だよ。できる限り協力してあげる。」
壁さんの優しさに涙が出そう。
双星「あのー、みんなちょっといい?」
記者「なに?」
双星「実は、強運っていうか幸運?の力で、俺は他の人には聞こえない声が聞こえるんだ。」
記者「双星しか聞こえないんじゃなぁ・・」
双星「ところが!みんなに聞こえるよう喋ってくれるって。」
ダークエルフ「それは興味深い。」
メイド「その方の性別が気になりますね。」
性別?壁に性別ってあるの?
記者「で、いつ喋るの?」
だそうだけど、壁さんどんな感じ?
壁「これで黙ってたら爆笑もんだね。」
虚言癖があるって思われるだけだよ俺が!
壁「大丈夫、すぐ喋るから。さぁ、耳を澄まして・・」
―――――
声「地上の生物に警告します。明日、エンペラーズスキルが発動します。」
声「双星を殺せば発動を防げます。繰り返します。」
声「地上の生物に警告します。明日、エンペラーズスキルが発動します。」
声「双星を殺せば発動を防げます。」
―――――
・・え?
双星「・・あの、みんなまさか聞こえた?」
ダークエルフ「ええ。」
メイド「いつもこんな声を聞いているのですか?」
記者「とりあえず双星を殺せばいいの?」
ちょーっ!壁さん言葉選んで!
・・また黙るし。
メイド「どうして今回だけ私たちに聞こえるよう話したんでしょうね。」
ダークエルフ「双星、事前にどんな声が聞こえたの?」
双星「えーと、人間は事実を積み上げ見えないことも理解してきたから、幸運についてもそうすればいいって。」
双星「で、俺にしか聞こえない声があるから、それをみんなに教えてあげるところから始めようって言われて・・」
ダークエルフ「普段からああいう感じ?」
双星「ううん、普段はもっと気さくでなれなれしい感じ。会話もできる・・よく無視されるけど。」
記者「双星は見捨てられた?」
そんなぁ!
ダークエルフ「今までの流れを考えればいい。そうすれば・・最後は双星にとって都合のいい結果で落ち着くとわかる。」
メイド「そうなんですか?」
ダークエルフ「演出は過剰に行われるものだ。」
バタン!扉が勢いよく開いた。
第一王子「双星殿、無事ですか?」
双星「え?はい無事です。」
第一王子「よかった・・おかしな声が突然聞こえたので心配しましたよ。」
双星「おかしなって・・俺を殺せばいいみたいな声?」
第一王子「はい。」
壁さーん!何人に言ったんですか!?
ダークエルフ「なるほど、地上の生物はみんな聞いたわけか。」
壁さーーーん!!!!!
兵士「いけません今お通しするわけには・・」
?「いいからどけ!!!」
誰か来る?
?「双星はここか!?」
第一王子に似た人が現れた。
だけど、朗らか笑顔の第一王子とは違い、怖い顔してる。
第一王子「あなたは来ないよう言っておいたでしょう。」
?「双星なんか呼んでも碌なことにならないって言ったはずだぜ兄貴!」
?「なんなんださっきの声は!?」
兄貴?えーとつまり・・第一王子の弟さんで・・第二王子?
壁「くくく・・明言を避けることにより、実は第三王子だったという叙述トリックに騙されないようにな。」
マジか!教えてくれてありがとう。
あと、できれば声かけたら返事をしてくれると嬉しいな。
第一王子「みなさんすみません。これが双子の弟の第二王子です。」
第二王子「これってなんだよ!紹介なんかいらねえよ、声の通り双星は殺されるんだろ?」
殺されたくないよ!あと第二王子ってめっちゃ明言してるやん!
壁「・・別に、こいつが第二王子じゃないって言ったわけじゃないしー。」
なんか今回嘘多いなぁ。他に嘘ついた?
壁「明日エンペラーズスキルが発動するっていうのも嘘。」
大っぴらに宣言しといて嘘とかやめろよぉーぉーぉー。
壁「(ぼそっ)邪魔が入るからな・・」
第一王子「双星殿は殺させませんよ。彼こそ時代を変える人ですから。」
第二王子「必要なのは幸運だけだろ?双星なんておまけじゃねえか!」
第二王子「第一!・・・・あれ?双星はどこだ?」
双星「ここです。」
第二王子「一般人じゃねぇか。お前があらゆる困難を解決する完全無欠な無欲な人なのか?」
双星「なにそれ?」
第二王子「そういううわさなんだよ!」
誰が流したうわさなのそれ!?
壁「はーい。」
床「がんばったよーほめてほめて。」
やりたい放題ですね!!!
第二王子「筋肉はそこまでついてねーし、のほほんとしたアホ面。魔力も感じられない。何かの冗談だろ?これが?この国の希望になんのか?」
第一王子「そうですよ。幸運の力は、あらゆる常識をひっくり返し最良の結果をもたらします。」
第一王子「人を超えし力は、人の裁量では計れません。あなたもいつか気付くでしょう。」
第二王子「・・気に入らねーなぁ。」
第二王子が歯をむき出しにして怒りを表してる。
双星「なんかすみません。こんなんで。」
第二王子「ちげーよ!お前はただ利用されようとしているだけなんだぞ!気付かねーのか!?」
双星「利用価値があるから声をかけられたんじゃないの?」
第二王子「そうじゃねえ!!!10年前も、70年前も・・幸運の持ち主は非業の死を遂げてるじゃねーか!!!!!」
ダークエルフ「・・」
メイド「!?」
記者「!?」
第一王子「・・」
・・あれ?
第二王子「最良の結果がお前の死か!?その力でお前は死地に飛び込んでるってわかんねーのかよ!」
第二王子「A国でのほほんとしてろ!その力は・・人が扱えるもんじゃねーんだよ!!!」
何度も危険なところへ行ってたから麻痺してたけど・・
というか死んでもおかしくないのに無傷なことだらけだったから・・気にしなくなってたけど・・
第二王子「兄貴はB国さえ良ければそれでいいんだぞ。お前が死んだって、B国の礎になりましたちゃんちゃんってだけだ。」
第二王子「・・本当に最良の結果になるんだったら・・世界は・・もっと優しいもんになってんだろうよ。」
じゃあ幸運の力ってなんなんだろうね。
もっと他の・・誰かさんにとって都合のよい結果なのかも・・
・・
・・・・
第二王子は、お兄さんにたしなめられて部屋に戻った。
というかみんな戻っていった。
記者「わけがわかんない。双星はなにがしたいの?」
双星「俺もさっぱり。」
記者「どうせこれもいつもの計画なんでしょ?ほら、記事にしてあげるから早く言っちゃって。」
双星「計画を立てたことなんて一度もないよ!トラブルはいつも向こうからやって来ます!」
記者「それも幸運?」
双星「・・・・トラブルを幸運だとは認めないよ?」
全容がまったくつかめない。なんでだろうな。
メイド「意外と第二王子さんは優しい方でしたね。双星様のこと気遣ってくれてましたし。」
双星「怖いのは表情と口調だけだったかな。」
ダークエルフ「B国を出るなら第二王子の方が話は早そうだな。後で話をしておこう。」
ダークエルフ「今日は遅いからもう休んだ方がいい。いざという時に体力が回復していないとどうにもならないわ。」
それもそうだ。
俺たちは休むことにした・・にしても・・みんな俺がいる部屋でよく眠れるよね。
今さらだけど。
・・
・・・・




