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175第一王子


中も最低限の装飾という感じだ。

A国やC国はもっと華美だったなぁ。


B国使者「こちらでお待ちください。第一王子を呼んできます。」

中に入ったすぐの休憩スペースで俺たちはのんびり待つことに。

給仕の人が飲み物と簡単につまめるものを持ってきてくれた。


記者「うーん、これおいしいけど・・どこのメーカーのかわかんない。」

記者さんがクッキーを食べながら首をかしげた。


双星「おいしければいいんじゃないの?」

記者「記者たるもの情報は大事!B国の特産品はチェック済みのはずだったのにぃ。」

メイド「たぶんですけど、これ厨房で作っているんじゃないですか?」

記者「えー?」

双星「手作りは嫌い?」

メイドさんのお菓子食べ過ぎて飽きた?


記者「A国だと名店のお菓子とか出たんだよね・・すっごい高いやつ。」

ダークエルフ「自国の名品を外国の要人が気に入ってくれると、国へ帰ったときに宣伝してくれることがある。」

ダークエルフ「宣伝力の高い人に、お勧め商品を紹介するのは普通のことだ。」

つまり・・名産がでないのはおかしい!これは事件の香り!


ダークエルフ「とはいえ、必ずそうしなければならないというわけでもない。」

ダークエルフ「料理に自信があれば手作りを出すこともあるだろう。」

つまり・・問題なし!事件解決!ハッピーエンド。


第一王子「お待たせしました。」

あれ?

B国使者さんが正装したように見える。


第一王子「騙すような真似をしてすみませんでした。少しでも早く双星殿にお会いしたかったのです。」

双星「え・・じゃあ王子様自らA国に来てあんな危険なことしてたの?」

第一王子「あれくらい危険のうちに入りませんよ。」

B国怖い。

第一王子は椅子に座った。


双星「ここで話するんですか?丸聞こえになりますよ。」

第一王子「やましいことが無ければ、どこでだって話はできます。」

なんてまっすぐな目をしているんだ。

どうやら平和な話になりそうだ。連れて来られた時はびっくりしたけどちょっと安心。


記者「ですよね!なのにみんな秘密にしすぎ!」

ダークエルフ「新技術や国の方針など敵に聞かれては困ることもある。秘密は大切なことだ。」

記者「それにしても隠し過ぎです!」

ダークエルフ「お前みたいに悪人を責めず、正当な権利を行使している者を責めるやつにも聞かせられない。」

ダークエルフ「それがどれだけ国を蝕んでいるか考えたこともないのだろうな。」

あ・・ダークエルフさんが殺気を出してる?

もしかして記者さんって、ダークエルフさんの嫌いなタイプだったり?


第一王子「まあまあ、こんなところで喧嘩しないでくださいな。」

第一王子「ですがどうしても喧嘩したいなら特設リングをご用意しましょうか?」

双星「いやいやそこまでしなくていいですから!」

特設リングって、リアルバトルさせるつもりなのだろうか。

ダークエルフさんの圧勝だよ・・もしかしてB国流のジョーク?


第一王子「ではみなさんを連れて来た要件ですが・・双星殿をB国に迎えたいと思ってのことです。」

迎え入れるって、要は勧誘?


双星「いえ俺は別にA国で・・」

第一王子「そのA国にあなたの居場所はありますか?正しい評価はされていますか?」

第一王子「理不尽な目に遭ってはいませんか?」

・・言葉に詰まった。

A国の王様は俺を危険視している。

俺はただ、馬小屋で馬の世話をしているだけで満足なのに。

なぜか活躍して、危険な存在だと・・いや、なぜかじゃないな。きっと全部・・


ダークエルフ「ずっと監視していたのか。」

第一王子「ええ。そして双星殿もよくわかったでしょう。A国ではあなたは幸せになれない。」

第一王子「正しき者が報われる世界にしなければなりません。」

第一王子「お互い虐げられた者同士、共に歩むべきです。」

双星「お互い・・?」

第一王子さんも虐げられているの?誰に?


第一王子「B国は、A国C国に虐げられています。」

ダークエルフ「待て。A国はそんなことはしていない。むしろ今の王はお前らの味方だろう。」

第一王子「味方?A国は敵です。利用をしても、味方だと思ったことなど一度もない。」

言葉は静かだけど、第一王子さんに怒りが宿っているのがわかる。

体が緊張するからすぐわかるんだよね。


第一王子「なぜB国の土地が痩せているか。なぜそのようなところに国を構えなければならなかったか。」

第一王子「元々、A国B国C国はひとつの国だったのです。だが国を追われ国民と共にやって来たのがこの地。」

第一王子「当時の王は優しい方だったそうです。その王を騙し裏切った者たちが勝手にA国C国を作った。」

第一王子「良い土地を自分たちだけで占有し、王をこんなところへ追いやった。」

第一王子「B国こそ正統な王の血筋を引いているのであり、A国C国は裏切り者が作った国。建国以来変わらぬ敵です。」

初めて聞いた。

そんなことがあったなんて。

そしてそれがずっと尾を引いていたなんて・・

俺は馬たちの言ったことを思い出した。


―――回想ここから

馬「お前はB国へ行く。」

馬「B国も問題を抱えている。だが今のお前では解決できない。」

馬「そしてA国に戻ったお前は、新しい日常に遭遇する。」

―――回想ここまで


確かにこれは解決できる気がしない。

建国以来だから・・100年以上昔だよね?根が深そう。


双星「ダークエルフさん知ってた?」

ダークエルフ「いや、知らなかった。そんな話はA国で聞いたことがない。」

メイド「私も知りませんでした。昔過ぎて建国当時のことなんて教科書にも載っていませんし。」

記者「私も知らない!作り話じゃないの?」

第一王子「いえ、これが真実です。A国では都合が悪すぎて教わらない・・と言いたいですが、単純に昔過ぎてもうわからないのでしょう。」

第一王子「C国に支配された時期もありましたし。無くなった資料も多いと思います。」

ダークエルフ「・・そうだ。C国がA国を支配した70年前、お前たちB国はA国の王族を匿っていなかったか?」

ダークエルフ「恨みを晴らすチャンスだっただろう?」

そうなの?俺の知らない話が次々出てくる。

そろそろ・・いえとっくに話についていけません!


第一王子「恐れたからですよ・・絶対的な幸運の力に。」

ダークエルフ「なっ!?」

幸運って・・俺と同じ・・?


第一王子「70年前、A国で革命を起こした者がいました。」

第一王子「その者は、なにをしても成功する幸運を持っていました。争いも、商売も、すべて思い通りにすることができた。」

第一王子「当時、C国の王はA国を憎んでいました。父親をA国に殺されたからです。」

第一王子「C国王はA国を攻める準備をしました。そしてA国を滅ぼすだけの戦力を用意した・・しかしA国王は何の対応もしないまま。」

第一王子「このままではA国は攻め滅ぼされてしまう。そうなればA国民は・・」

第一王子「幸運を得た者は考えました。争いを止める方法を。C国王の恨みを終わらせる方法を。そして導き出した結論、それが・・」

ダークエルフ「革命して、A国をC国に売り払うことだと!?」

なんて無茶苦茶な方法だ。

C国王の気持ちひとつでA国民は苦しむことになる。


第一王子「幸運を得た者は裏工作もしました。」

第一王子「C国内に協力者を作り、C国王がA国民に八つ当たりしないよう頼みました。」

第一王子「それでも不当に苦しむA国民が現れることを念頭に、支援団体を作ったり・・」

第一王子「そしていつかA国が再興できるよう、王族を保護してくれる協力者も作った。」

記者「それがB国?」

第一王子「はい。B国とC国の協力者は当時の計画を本人から聞いています。当然、幸運のことも・・」

ダークエルフ「幸運とは一体なんなのだ。本当にそんなものがあるのか?」

第一王子「幸運はあります。しかしその正体はわかりません・・が、その恐ろしさはみなさんが実感しているのではありませんか?」

第一王子「双星殿、あなたこそ幸運を授かった者。その力は正しく強い。どうかその力をB国のために使っていただきたい。」

双星「B国へ来る間に話してくれた・・ミルカさんのお父さんのアルバルさん?でしたっけ。その人も幸運を授かっていたんですよね?」

第一王子「はい。」

双星「70年前の人、アルバルさん、そして俺・・他に幸運を授かった人っていますか?」

第一王子「少なくとも私共は他に知りません。」

双星「幸運を授かる条件とかは?共通点とか。」

第一王子「ほぼありません。男性ということくらいでしょうか。」

男性・・性別がなにか関係している?


双星「あー、授ける側が女性だからなのかな。」

記者「ちょ、双星は誰が幸運を授けたのか知ってたの!?というか授けてもらったとか?」

双星「いや最近・・それっぽい人に話かけられただけ。」

記者「それ早く教えてよ!記事にしないと!」

第一王子「私も気になります。どの様な方でしたか?」

どの様な・・どう言えばいいんだろうな。


双星「よくわかりませんでした。俺、殺されると思ったんです。そのために俺の前に出て来たのかと思って・・」

双星「でも全然違ってて、説教されただけでした。」

双星「最初は怖い方かなって思ったけど、ただ厳しくて優しい方でした。」

記者「ん~要領を得ないなぁ。一言で言って。」

双星「綺麗な人」

記者「???」

ダークエルフ「記事にはしない方がいい・・と言おうと思ったが、大丈夫そうだな。」

記者「なんで?」

ダークエルフ「私もちらっと見たが、あれは人間じゃない。人の論理で考えてもどうにもならない相手だ。」

ダークエルフ「記事にして怒りを買っても人の法は守ってくれないぞという意味だ。」

記者「報道は弾圧に負けないのだ!」

第一王子「やはり人間ではありませんか・・」

そのとき、兵士さんが報告に来た。


兵士「王子!第二王子が帰って来ました!」

第二王子?


第一王子「みなさん、すみませんが今日はここまでのようです。お休みになるお部屋に案内します。」

双星「次の予定が入っているんですか?」

兄弟でゲームとか。


第一王子「弟は双星殿を快く思っていないので・・出会えば揉めてしまいます。」

それは・・まぁ・・

B国も色々ありそうだ。


・・

・・・・


案内された部屋で相談タイム。


ダークエルフ「勧誘は予想の範囲内。私は双星次第だと思う。」

メイド「私は双星様がどこへ行ってもついていきます。」

記者「A国を裏切るつもり?」

双星「いやA国に戻るつもりだから。」

馬に未来を聞いたらB国行った後でA国に戻るって言ってたし。

そう言えば馬車馬が研究所へ行けって言ってたっけ。

・・行った方がいいのかな?


記者「ならいいけどさー、第二王子は双星嫌ってるみたいじゃん。B国にいたって苦労するのは変わりないって。」

俺もそう思う。


ダークエルフ「全員が双星を祭り上げるような環境がいいとは限らない。それは神格化だ。」

ダークエルフ「神格化は下の者たちとの溝を作る。失敗が正しく報告されなくなる。多少は物怖じせず反対を言える環境も必要。」

うん確かに。


メイド「話を聞く限り、双星様が必要というよりは、幸運の力が必要なだけって聞こえました。」

メイド「私はあまりあの人を好きになれません。」

メイドさんが人を嫌うなんて珍しい。

・・でもその通りだよな。

強運が無ければ誰も俺のことなんか見向きもしてくれない・・

俺に価値はなく、強運こそ・・みんなが見ている俺だ。

どうして俺はこんなに無力なんだ。

・・力がほしい。誰かから与えられた力じゃなく、俺の力が。


ダークエルフ「さて・・では少し城内を探って来るとしよう。」

記者「話し合いは?」

ダークエルフ「双星はA国に戻るつもり。ならこれ以上話をしても無駄な時間だ。」

記者「・・いいなぁ。うちの会議もこれくらいさっさと決まればいいのに。」

記者「まいっか!じゃ私も取材して来よっと。」

メイド「なら私はB国の料理を教わって来ます。」

みんなやることあるのか。

・・じゃ俺も研究所に行ってみるか。

というわけで一時解散!


・・

・・・・


こんこん。


第一王子「失礼します。みなさんよければ・・おや?」

しかし部屋には誰もいなかった。


第一王子「・・さすが素早い。今までの功績は幸運の力だけ・・というわけではなさそうですね。」

第一王子「一秒でも早く決断すれば、一秒でも早く行動できる。基本ではありますが、それができる人は中々いません。」


・・

・・・・


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