表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/227

171THE FIRST ENCOUNTER(出会い)


A国に帰ってからずっとなにか感じる。

誰かに見られている。

きっと俺に強運を授け馬たちと話せるようにした者。


俺は運命に逆らった。


恐らくこの国で罰を受けるだろう。

でも・・他の人を巻き込みたくない。

みんなに別れを告げたいけど、そしたらダークエルフさんたちは俺をひとりで行かせてはくれないだろう。


せめて馬たちにはお別れしよう。


双星「みんな元気してた?」

馬「おうよ!」

馬「食べまくり運動しまくりだぜ!」

馬「健康が一番!」

あれ・・なんで喋っているの?


馬「え・・今更?(困惑)」

馬「前からだろ?(困惑)」

馬「記憶喪失か?(困惑)」

いやその、俺は運命に逆らったわけで。

お前らと話す力も剥奪はくだつされたんじゃないの?


馬「勘違い星人現る。」

馬「人間が運命に逆らえるわけないだろ。」

馬「お前が皇帝になれと言われて、それに反発するのも既定路線だ。」

ど、どういうこと?


馬「わざとお前が嫌がることを言われたんだよ。それくらいわかれよ。」

馬「子供を殺せと言われてお前が違う道を選択する。その結果全部うまくいきました、ちゃんちゃんっていうのが当初の予定だぜ。」

馬「お前が皇帝になるっつーのはミスリード。騙されたのはお前な、OK?」

あれー?じゃあ・・ん?どういうこと?

俺・・運命に逆らったから処刑されるんじゃないの?


馬「バカだねぇ。猿の手のときにお前もう逆らってるじゃねーか。」

馬「今更王国。」

馬「アホはアホだからアホなのではない。学習しないからアホなのだ。」

うーん散々言われている。馬に。


馬「・・お前が処刑されるとしたら、お前の都合とはまったく別の論理で行われる。」

馬「人の常識で”あの方”を語ることはできない。」

馬「終わりは突然やってくる。すべては・・いや、なんでもない。」

最後まで言ってほしいな。

でも俺もわかっている。馬たちの言っているあの方のこと。


C国での悪魔騒ぎ。あれはフェイクだ。

俺の強運が無くなっていないことからまだ存在している。

人より遥かに恐ろしい力を持つ。


C国の亡くなった王様の見立ては正しかったんだと思う。

俺の近くにいて、直接手伝わない者。


あの方とは、受・・パチン!

馬に叩かれた。うーん2回目だ。

顔にちょっと土ついた。


馬「言ってはいけない。」

馬「捜してはいけない。」

馬「見つけてはいけない。」

・・わかってるよ。

わかっているけど・・


・・

・・・・


馬たちと話をして遅くなってしまった。

みんな気さくで話しやすいんだもん。

夜。人通りがないのは珍しいな。


街灯が照らす。街灯が俺を見ているような気がする。

そんな町中で、ふと路地裏が気になった。

街灯の光が照らされない闇の世界。

俺はふと、誘われるかのように足を踏み入れた。


月の光がない今日は一段と暗い。

闇の中は心が休まる。

覆い隠された心が露わになる。


俺は、困った人がいたら助けなければならないと思っていた。

苦しむ人を助けなければならないと思っていた。

A国へ来る前はそんな力なんてなかった。

困った人、苦しむ人がいてもなにもできなかった。

でもA国へ来てから助けたいと思ったら助けることができた。

相手が個人だろうが国だろうが魔王だろうがなんとかなった。

助けてきた。

助けてきた。

みんな助けてきた。

だから・・誰か俺を助けて・・

俺が本当に助けたかったのは、俺自身なんだよ・・


どう生きるのが正しいの?

なにが正しいの?

みんな仲良くって、ひとりに嫌われたらそれだけでダメなの?

悪人とも仲良くしないといけないの?

お金くれたら仲良くしてやると言われたらどうするのが正しいの?

仲良くしないといけないのに競争社会なの?

仲のいいライバルとか変じゃない?

他人の悪口言ってる人を注意したら、俺が悪口言われるようになったけどなんで?

俺の悪口言う人とはどうやって仲良くなればいいの?

みんなの幸せって、自分が犠牲にならないとダメなの?

苦しんでいる人を助けていたら自分を助けられないよ。

でも苦しむ人を助けないとダメなんだよね?

なんで俺を助けてくれないの?

ずっと苦しかったのに。

ずっと悩んでいたのに。

ずっと辛かったのに!

考えないようにしていた。

考えたら辛くなるから。

でも、もう限界・・答えがほしい。

絶対の真実が!

信じられる正しさが!

抽象的ではない具体的な真理が!

誰か俺を助けて!!!


「双星さん?」


後ろから声が聞こえた。

声の主を俺はよく知っている。

A国へ来たその日に知り合った。

明るくて、綺麗で、トラブルメーカーで・・でも・・その正体は・・

俺は振り返った。


受付「珍しいですね。こんなところにいるなんて。」

受付のおねーさん。


双星「あ、はい。なんとなく行ってみたくなったんですよ。不思議な感じですよね路地裏って。」

受付のおねーさんとは5歩くらいの距離。

遠すぎず、近すぎず。

その顔はいつも通り・・綺麗な顔でにこやかにしている。


受付「暗くてワクワクしますよね♪」

受付のおねーさんが1歩近づいた。


双星「中二病ですか?」

受付「違いますよ。闇は恐怖と同時に安らぎを与えてくれるんですよ。」

受付「明るいと眠りにくいでしょ?人間に闇は必要なんです。」

受付のおねーさんが1歩近づいた。


双星「そうですね・・そうかもしれません。」

受付「双星さんは、闇に何を求めますか?恐怖?それとも安らぎ?」

受付のおねーさんが1歩近づいた。

受付のおねーさんとは2歩の距離・・

緊張で心臓がバクバク言ってる。


双星「・・安らぎが・・ほしいです。」

受付「そうですか。」

受付のおねーさんが1歩近づいた。

すぐ目の前に受付のおねーさんがいる。

安らぎって・・どういう意味でとられただろうか。

受付のおねーさんは変わらずニコニコしている。


受付「なら安らぎあげちゃいます♪」

受付のおねーさんの手が俺の首・・いや、頭の方へのびた。


双星「!?」

受付のおねーさんの手は、俺の後頭部を包むように抱きしめて来た。

俺の膝が曲がった。

膝立ちになり、俺の頭は・・吸い寄せられるように受付のおねーさんの胸にフィットした。


受付「よしよし。」

受付のおねーさんの手が俺の後頭部をなでなでする。

こ、これは・・・・あれ?

なんか・・すごく落ち着く。安心する。

肩の力が抜けて、受付のおねーさんの胸により顔をうずめた。

エッチな気分にはならなかった。


受付「いい子いい子、双星さんは溜め込んじゃうタイプなんですよね。」

双星「うん・・」

受付「どうしたらいいかわからないんですよね。」

双星「うん・・」

受付「なんでこんなことになったかわかりますか?」

双星「・・それもわからないです・・」


受付「それはね・・あなたががんばって来なかったからよ。」


え・・

声のトーンが変わった気がした。

顔をあげてみた。

・・いつもの受付のおねーさんじゃなかった。

美しい・・だけど、鋭い目がこちらを捉えていた。

背筋が寒くなった。


受付「あなたはいつもその場しのぎしかして来なかったわ。」

受付「無計画だからいつも準備不足。必要なときに必要な力が身に付いていない。」

受付「その日の気分でやることを決めているから、気が付くと楽な方へ楽な方へと堕ちていった。」

ごめんなさいと言いたかった。

でも言ったら堕落を認めるようで、罪を認めるようで・・

それは・・罰が待っているような気がして・・

あまりの恐ろしさに口をパクパクさせ、涙が出て来た。


受付「どうすればいいかわかる?」

双星「・・わからない・・です・・」

まばたきしたら目に溢れた涙が頬を伝っていった。

終わった・・俺は間違っていたんだ。


双星「あ・・」

俺の後頭部を撫でていた受付のおねーさんの手が、再び俺の顔を胸にうずめさせた。

受付のおねーさんの顔が見えなくなる。


受付「これからがんばればいいの。」

ん?


受付「今まで、あれができれば、これができればって思ったりした?」

双星「・・戦う力があればよかったと・・思い・・ました。」

受付「なら戦うための訓練をしなさい。」

双星「えっと・・?」

どういうこと?

涙は止まっていた。


受付「あなたは今までがんばって来なかった。だから、これからがんばればいいのよ。」

双星「今から何をがんばれば・・」

受付「今さっき言ったでしょ?戦う力がほしいって。」

双星「は、はい・・」

受付「あなたは貴族になったとき、礼儀作法が必要だと思わなかった?」

双星「あ・・思いました。」

受付「目標を持ちなさい。そして目標に必要な力を身につけなさい。そのためにがんばるの。」

双星「俺・・もうすぐ30歳だけど・・」

受付「例え50でも80でも遅くはないわ。でもがんばることを諦めたらあなたの人生はそこで終わり。」

受付「他人があなたを見捨てても、あなたはあなた自身を諦めないで。」

受付「死ぬまでがんばり続けなさい。死ぬ気でがんばりなさい。がんばらない言い訳を考えないで。」

頭を押さえつけられているから顔をあげることができない。

受付のおねーさんは・・今、どんな顔をしているんだろう?


受付「でも、がんばっても結果が出るとは限らない。」

受付「武闘大会の参加者が全員がんばっても、優勝できるのはひとりだけ。」

受付「人の世はがんばっても結果が出ないことの方が多い。」

受付「やっても無駄だからって、苦しくなる。がんばることをやめたくなるわ。」

受付「それでも・・私はあなたにがんばってもらいたい。」


受付「もしあなたが結果を出せないまま亡くなったら、私があなたを褒めてあげる。」

受付「もしあなたが結果を出せないまま亡くなったら、私があなたを認めてあげる。」

受付「もしあなたが結果を出せないまま亡くなったら、私があなたを救ってあげる。」

受付「だからがんばることを諦めないで。」

受付「私があなたのがんばりを見ていてあげる。」

受付「楽な方に逃げないで。」

再び受付のおねーさんが俺の後頭部を撫で始めた。

俺を殺すわけじゃ・・なさそう?

質問とか・・大丈夫かな・・


双星「あの・・俺、全然才能とかないかなって思うんですが・・」

受付「戦う才能が無くても、人付き合いが苦手でも、アドリブが苦手でも、女の子が近くにいても手が出せないヘタレでもいいのよ。」

受付「才能だけで結果が出るわけじゃないわ。」

受付「自分に足りないものがあれば仲間に補ってもらったり、訓練してみたり。」

受付「道具に頼ってもいい。良い靴は足を疲れにくくしてくれる、良い馬はより早く安定して目的地へ行ける、良い鎧はあなたの命を守ってくれるわ。」


双星「・・俺自身が優秀になりたいと思ったら、どうすればいいですか?」

受付「早く行動しなさい。」

受付「多くの事柄は時間をかければより有利に事が進めるわ。でも時間制限がある。」

受付「より多くの時間を用意するには1にも2にもまず動き始めること。誰よりも早くね。」

受付のおねーさんに従っていれば、なにもかもうまくいくような気がする。

ならもう・・


双星「・・受付のおねーさんならみんなを幸せにできますか?」

受付「できるわ。でも、私に管理された自由のない世界がお好き?」

双星「自由はなくなるんですね。」

受付「自由にやってうまくいかないから私に管理されたいんでしょ。」

受付「なにもしなくても幸せになれるわ。自由なんて必要だと思わないくらいにね。」

双星「ははは、素敵ですね。」

受付「でも飽きたらやめるわ。私は人間の奴隷じゃないの。人間のために働くなんて気が向いたときしかやりたくないわ。」

受付「すべての生き物は、自分か、自分の種族のための行動しかとらないのよ。」

うん。


受付「そうそう、死ぬ気でがんばるのと無理をするのは違うから。無理をしたら心や体が壊れちゃうわ。」

受付「最初は自分の限界がわからないもの。プロに教わりなさい。」

プロ?


受付「お迎えが来たようね。」

お迎え?


ダークエルフ「双星!」

え?ダークエルフさん?

顔をあげると、受付のおねーさんの顔が目に映った。

・・いつもの受付のおねーさんだ。


ダークエルフ「なにをしている!?」

受付「いつもがんばっている双星さんにサービスです♪」

ダークエルフ「・・双星、帰るぞ。」

ダークエルフさんに手を引かれ、路地裏を出た。


ダークエルフ「・・あの女にはあまり近づかない方がいい。」

ダークエルフさんの顔は真剣だった。

ああ・・そっか、ダークエルフさんも気付いていたんだ。

受付のおねーさんのこと。


双星「・・うん、わかってる。ごめんね。」

でも・・そんな危険な存在とは思えなかった。

もっと・・んー、どう説明すればいいかわからなかった。


最後に後ろを振り返ってみた。

路地裏にいる受付のおねーさんは、暗闇の中なのにはっきり見えた。


・・

・・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ