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僕は奇跡を信じない

作者: 卍

 告白されたらフラれたので、もう何も信じられません。

 

 人間なんか、滅んでしまえばいいのに。


 死のうかとも思ったけど、あんなずる賢い女のために死ぬのもなんだか悔しい。


 思わせぶりな態度をとっているけど、結局は自分に一番興味があって他人には無関心なんだ。


 自分。自分。自分。みんな自分が好きなだけ。それ以外は何もない。みんな、自分だけ。自分だけが好き。


 寂しいから、誰かに隙間を埋めてもらおうとするけど、それは自分が、寂しいだけなんだ。ほかの人がどうなろうと、知ったことか。自分に施しを与えるだけに存在する、他人。


 でも僕も自分が好きだから。だから怖い。僕が怖い。すべて投げ出したい。ただただ、生きているだけ。


 幼馴染の女の子が、僕にチョコレートをくれました。彼女は恥ずかしそうに上目づかいに、「おめでとう」と言ってくれました。何がおめでたいのか僕はわからなかった。なんでプレゼントをくれるのか僕はわからなかった。彼女の行動が僕にはわからなかった。何をすればよかったのか。何をしてあげればいいのだろう。


 僕は、人の心がわかりません。なにを考えているのかわからないので怖いです。でも僕も自分がなにを考えているのか、わからない。成人式にも出席したのに、全然大人になれていない。子供みたい。大人ってなんだろう。社交的なひととか?僕は社会不適合者なのかな?約束も守れない愚か者なのかな?


 なんであのとき彼女は笑ったんだろう。その笑い声に僕はどう答えればいいんだろう。彼女が僕を愛していて、だからプレゼントをくれるのならどうして「誕生日プレゼントだからね」なんて念を押されるんだろう。彼女は僕をどうしたいんだろう。こんな僕をみて大人たちは「青春だね」なんて茶化すのかな。つまりは人生経験がないとか?はやく大人になりたい。この体に、この心は、居心地がよくない。


 小さな男の子が、道端で会って一目ぼれした女の子の詩を書きました。男の子は、詩人だった。でもあの小さな可愛らしい体に、あの大人の心はなかなか入り切れなかったから、男の子は死にました。僕は死んでくれてよかったような気がした。生きていてほしくはなかった。体が心を突き刺す前に、心が体を突き刺したから。それは運命だった。だから子供のままのほうが死ななくていい気がする。子供の心、子供の体でいい気がする。変に固い僕の身体が、僕は好きじゃない。大人の心、大人の身体も僕には荷が重すぎる気がする。


 ホワイトデーにお返しをしたら、彼女は嬉しそうだった。でも僕は人の心がわからないから、もっと彼女のために、彼女が楽しむようなものがほしいのじゃないかと思ったけど、何もできなかった。この前女の子にフラれたから、「好きです」という四文字も言えなかった。だから彼女があのとき何を考えていたのかさっぱり見当がつかない。お母さんは、女の子はおしゃべりが好きだから、おしゃべりを聞いてあげるのがいいと思うけど、って言ってたけど彼女は何が好きなんだろう。好きな映画?好きな俳優?好きな音楽?好きなテレビ番組?好きな絵画?好きな本?好きな言葉。


 内容はどうでもよかったから、でも僕は彼女の顔を見ているだけでよかったんだ。なんだか安心したんだ。でもそれだけじゃダメなのかなあ。彼氏にならないとだめなのかなあ。できればこのままで、死ねたらいいのになあ。結婚して家庭をつくって、絆を深めないといけないのかなあ。そのために彼女を作らないといけないのかなあ。なんだかそういう考え方は嫌いだったし、悲しかったし、寂しかったから、だから今が楽しければいいのじゃないかと思ってしまう。


 何よりも今の関係が崩れてしまうのが一番いやなのだ。僕はうそつきだから、嘘をつきまくって、女の子と一緒にいたいだけだから。だから僕はうそつき。特別な関係とか、いらないし。彼女のために生きたいと思っても、結局僕は独りよがりだから彼女もいらない。


 天から魔法使いがやってきて、「あなたの恋をかなえてあげよう」と僕に言いました。僕はそのとき怒ったから、魔法使いの杖を取り上げて面白半分に世界を滅ぼしたいと杖に言いました。そしたら杖はOKと言ってくれたから、今は世界が終わってしまうのを笑いながら僕は見つめている。天使とか、悪魔とか、神とか、仏とか、ありとあらゆる人たちがひっきりなしに僕のところを押し寄せて、お願いします、世界が滅亡するのを止めないでくださいといったけど、僕は彼らを土下座させたままで世界の終わりを迎えることにした。なかなか面白い世界だったし、でも僕は他人とか結局どうでもいいから。世界が崩壊しても別に知らないし。自分が死んでも別に知らないし。学校の屋上から飛び降りるのとたいして変わらない問題なんでしょ?


 フラれてとかもうどうでもいいから。それ以前の話だから。正直もう飽きたし。生きるのも飽きたし、死のうとするのも飽きたし。何も考えたくないから、だからそういうときは上を見るようにしている。そこには美しいものがあると信じているから。


 こんなこと書いたってどうにもならないし。それには僕は世の中にあるありがたくて礼儀正しい人たちみたいに、世界の滅亡の日に遺書も書かないし家族へのメッセージも書かないし、自分が世界を滅亡させる理由も書かないし。でも面倒くさくなくてそれがいいなあと思っているときもあるよ。ああ、もう疲れた。話すの疲れたし。考えるのも疲れたし。それではそろそろね。バイバイ。

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