少年と少女
少し過去に戻ります。
誤字脱字や謝った表現などがあった場合、ご指摘してくださると助かります。
少し過去の話をしよう。
これはアスカがエクストランサーとして目覚めてすぐの話である。
「…ん…ここは…?」
アスカが目を醒まし、身体を起こすと、横には1人の少女が立っていた。茶髪のロングヘアーで、顔も整っていて、美人だ。が、アスカが別に思うことが一つ。
「…アイ…リス?」
不意にそう思ってしまった。すると少女は首を傾げて、
「…?いいえ、私はアリス・フォトリウムと申します。」
否定された。そうだ彼女はアイリスではない。
アイリスは…もう…。
「アスカ…様?」
「…いや…なんでもない。…それと、アスカでいい…。」
「左様でございますか。…あ、じゃなくて、わかったわ、じゃアスカ。」
敬語からタメ口に急に変えるとこんなに違和感があるのか。いやそうじゃない。
「…なんだ?」
「えーっと。初めてまして、だよね。さっきも言ったけど、私はアリス・フォトリウム。よろしくね?」
と輝かしい笑顔で、そう言った。
「…アスカ・マグナだ。よろしく頼む。」
「存じ上げてるわ。」
と、何故かドヤ顔で言われた。
まあ、そうか、最初にアスカ様と言われたな。うん。
ん?ひとつおかしい。アスカ…様?
いや、まさかな、歳も近そうだし。
アスカは確認の為に訪ねた。
「…さっき、俺の事を様と言ったか?」
するとアリスは首を傾げて、
「…?だってあなた、私より階級が上でしょ?」
…あぁ、俺の方が階級が上なのか、なら納得がいく。
確か俺は少尉くらいだったか?念の為確認を、
「…ちなみに俺の階級はどれくらいだ?」
またアリスは首を傾げて、
「あなた、おかしな事ばかり言うわね。あなたは中佐でしょ?」
あー、はいはい中佐ね…。中佐?嘘だろ…。
「…中佐?…俺が?」
「そうよ。」
うん…わかった。百歩譲って俺が中佐だとしよう…。こうなった原因はあいつだ。
「…アレン。説明しろ。あと、アリス、席を外してくれるか?」
いきなり呼び捨てだったからか、少し驚いた顔で頷いて、部屋から出て言った。少し、アリスが嬉しそうだったが、もちろんアスカは気付いていない。
そして、目の前にあったモニターにあいつの顔が映し出され、あいつの声が聞こえた。
『おーう、アスカぁ、目ぇ醒ましたか。元気か?不機嫌そうだが。』
「…当たり前だ馬鹿。なんで俺が中佐なんだ?おかしいだろ、俺は少尉だったはずだろ。なんだこの大出世は。それと、あの女はなんだ?」
『んー?ああ、アリス・フォトリウムだぞ?』
「…そこじゃない。」
『まあいいや、おめでとうアスカ。君はエクストランスに適合した。』
流された。まあ、いいだろういつもの事だ。はて、えくすとらんす?
「…えくすとららんすってなんだ?」
『ん?言わなかったか?まあ、20年も眠ってたんだ。記憶に多少の不備があってもおかしくない。』
…ああ、20年も眠ってたのか…じゃあ仕方ないな。…おい。20年?
「…20年も眠ってたのか?俺は。じゃなんで老化してない?」
『コールドスリープ。人体を冷凍保存する機械だ。だから歳もとってない。お前は今、コールドスリープから目醒めたんだよ。』
…なるほど。そんな機械があったことに驚きを隠せないんだが、それなら合点がいく。
『エクストランスは…トランスの強化版みたいなものだ。それより、アリス・フォトリウムと仲良くしてやってくれよ。アリスはお前の専属秘書だ。』
ああ、思いだした。確かそんなやつだと話された記憶がある。
……専属…か。と、心の中でそう思うアスカだった。
アスカに席を外せも言われたアリスはコールドスリープ室の外でアスカを待っていた。
「…あれがアスカ・マグナかぁ…結構いい男じゃん!」
バッチリ一目惚れである。
そんな事を呟いていると、アスカが部屋から出てきた。
「お疲れ様、アスカ。今からあなたを中佐室に案内するわね。」
「…ああ。」
と頷ぎ、2人は中佐室までの長い廊下を歩きだした。
道中の会話はほとんどなかった。アリスに「何話してたの?」と聞かれ、「大した話じゃない。」と答えたくらいだ。
「ここよ。」
とアリスが指した部屋のドアには中佐室と書かれていた。
入って見ると中は綺麗に掃除されていた。
「ここの中にあるものは基本的に好きに使っていいから。あと、困った事があったら私に聞いてね、それと私も出入りするって事も忘れないでね?」
「…ああ、わかった。」
とアスカは一言。
すると、アリスは少し俯いて、
「今度、アスカの事を話して欲しいな、アスカの事をもっと知りたいし。もしアスカが私の事を知りたいって言うなら、私の事も話すよ。」
と少し、恥ずかしそうに言った。
「…ああ、わかった、よろしく、アリス。」
「うん!」
と、笑顔で返事をした。
「じゃあね!アスカ!」
と言って部屋から出ていった。
アリスを見ていると、アイリスの事を思い出してしまう。
今は…冬なのか…。
地下都市の中は地上の気候を再現している。中佐室には暖房がきいていて、とても暖かかった。
だが、アスカの心に空いた穴には冷たい、すき間風が入り込んでいた。
それに対して、アリスの輝かしい笑顔はとても暖かかった。
次回こそ!都市外調査です!