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 宝箱のあった部屋から注意しながら出て、未踏破領域へと歩を進める。

 通路の先は行き止まりではなく、どうやら左側に曲がる角になっているようだ。

 後ろを振り返りつつ前進し、ゆっくりと近づいていく。

 途中で罠が一箇所だけあり、そのすぐ後に光の粒子が集まって『敵』が出てきて魔力になった。


 角を曲がるとどうやら少し先には部屋があるみたい。

 1度ここで休憩することにしてルー君とロウ君にご飯をあげる。

 角は『敵』が出現するのを監視するのにもいい。通路の途中で監視するよりはずっと楽だと思う。


 まだそんなに歩いていないので足のはりもないけど、一応揉んでおくのも忘れない。

 ルー君とロウ君のご飯が終わって食休みを少し取ったら出発の予定だから、休憩といっても小休憩くらいの長さだ。


 休憩しながら通路の先の部屋を観察する。

 角から見える範囲は少ないけれど、部屋の反対側にも通路が伸びて少し先で壁になっているのが見える。あそこも角かな。少し遠いので多分だけど。

 部屋は恐らく先ほどの魔力の宝石があった部屋と同じくらいの広さじゃないだろうか。でも見える範囲が少ないからまだまだわからない。もしかしたら凄く広い部屋かもしれないし、見える範囲だけかもしれない。


 観察しているとひょっこりとずんぐりむっくりしたものがぴょん、と飛び跳ねて現れた。『敵』だ!

 気配察知の範囲外なのでまだまだ距離がある。


「ルー君!」

「きゅ? きゅい!」


 後ろ足で耳の裏をぱたぱたしていたルー君に『敵』を教えればすぐにルー君はウサギを待ちうけ魔力にしてくれた。

 駆け出さないのは罠があったらルー君ではわからないからだ。

 一応角から罠探知が届く範囲には罠がないことがわかっているけれど、それ以上はわからない。なので念のためルー君も待ち受けたのだ。


 ちょうどいいので休憩を切り上げ、部屋へと進むことにした。

 お尻についた汚れをパンパン、と叩いて落としてカタログを背負いなおして鞄の位置もしっくり来る位置に直す。よし、準備完了。


「行こう!」

「きゅい!」

「ホォ!」


 念のため手鏡で部屋の入り口を確認してゆっくりと侵入する。

 部屋に入るとどうやらこの部屋は壁で区切られているタイプだとわかった。コウモリ地帯にあった部屋と似たような感じだ。

 部屋の入り口から壁に仕切られて見えないようになっている場所があるのでそちらの方を先に調べてみる事にした。


 一応見えないところが『気配探知』の範囲外よりも広い可能性があるので、『敵』の不意打ちを受けないように壁から少し離れて近づいていく。


「あ……また宝箱」

「きゅ~い!」

「ホホーホォ」


 壁の仕切りで見えなかった場所には『敵』は居らず、代わりにちょっと大きめの宝箱が置いてあった。

 しかも――。


「……南京錠?」


 鍵がついていた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 初めて見る鍵付きの宝箱。

 しかも今まで見つけてきた宝箱よりも若干大きい。

 警戒しながらも近づき安全を確かめたけど、もちろん鍵が付いているので開かない。


 鍵は南京錠で凄く錆びていて年代を感じさせる。

 でも宝箱にはそんな錆なんて浮いていない。宝箱の外観には金属っぽいものも使われているのにこちらは錆ていない。どういうことなんだろう? ただの演出?


 私が変なところに気を取られて首を傾げていると、ロウ君が羽根で私の頬をくすぐってきた。


「ん、もうロウ君、なぁに?」

「ホホォ~ホォホ」

「え? うん、鍵が付いてるから開けられないよ?」

「ホォ~ホホ」

「きゅい~」

「ホォホ~」


 なんだろう、ロウ君もルー君も私の答えに呆れた表情を作っている。あれ? 私なんか忘れてる?


「……鍵……鍵……あ」


 そうだった。長い通路を越えた先にあった部屋でロウ君が変な彫像の中に鍵があるのを教えてくれたっけ。すっかり忘れてたよ。

 『埋没探知』が活躍したところだね!


「……これ?」

「ホォ!」

「きゅい!」


 魔法の鞄から取り出した鍵は南京錠と同じくらいに古い感じがひしひしとしている。

 どっちも錆が浮いていてセットにしたら違和感がまったくない。当たりっぽいね。


「よぉ~し……」


 こんな鍵がしてある宝箱ならミミックでしたー、なんてことはないだろう。『罠探知』にも『気配探知』にも反応はないしね。

 でも一応もう1回短剣を差し込んで突付いておこう。


 チェックを終えて鍵を南京錠の下側にある差込口に差し込んで捻ってみる。

 やっぱり錆び付いているからちょっとガリガリとした感触がしたけど、ちゃんと回ってくれた。


「……あ」

「……きゅい!」

「……ホホォ」


 ガチン、という思いの他大きな音を立てて鍵が外れ、南京錠と鍵はそのまま砂のように崩れてしまった。

 驚いて呆然としてしまったけど、ここは不思議な事でいっぱいのところだ。鍵が外れたら砂になったとしても……え、どうなの?


「……ま、まぁいいか」

「きゅぃ」

「ホォホォ」


 考え出したらだめ。いらないことまで考えちゃうもの。

 だからここはスルーしておくのが1番いい。第一、鍵が砂になっても私は困らないもの。


 とにかくこれで鍵はなくなった。

 あとは中身が何か……。

 心臓の鼓動が大きくなるのを感じながらゆっくりと大きな宝箱を開けていく。

 いつものように途中まで蓋が開くと自動で開き、中に入っていたのはこれまで見つけたものよりは少し大きな『卵』だった。

 そう、大きくてもこれは『使い魔の卵』だ。


「ルー君! ロウ君!」

「きゅきゅい!」

「ホホーホォホ!」


 少し大きな宝箱だから後ろ足をぎりぎりまで伸ばして中を見ているルー君も、私の肩の上にいて片翼を広げているロウ君も私と同じ気持ちのようだ。


「新しい仲間だよ!」

「きゅ~い!」

「ホホホォ!」


 宝箱の端を軽やかに前足で蹴って1回転して華麗に着地するルー君。

 両翼を広げて私の後頭部をばしばし叩いてくるロウ君。


 いた、痛いよ、ロウ君!


 でも2人共私と同じで新しい仲間が出来ることに興奮しているみたいだ。

 仲間が増えるのは大歓迎だ。

 ルー君もロウ君もとってもいい子で可愛い。きっとこの子も同じに違いない。

 これが楽しみでないはずがないではないか!


「……よし、まずは『使い魔使役』をLv3にしてっと」


 『使い魔使役』はまだLv2なのでもう1つLvを上げないと仲間を増やす事ができない。

 『消費魔力』は1500。でも『魔力総量』は2712だ。

 さっきの宝箱で魔力をゲットできたのが大きい。というか魔力をゲットできなかったら全然足りなかった。危ない危ない。


 背中から降ろしたカタログを捲って、にやけてしまう気持ちを抑えきれずにすぐに『使い魔使役Lv3』を取得した。

 流れ込んでくる情報により使い魔の使役できる数が増加したことがわかる。

 さぁあとは名前をつけてあげるだけ。


 私達の新しい仲間。


 あなたの名前は――。


「リーオ。あなたの名前はリーオだよ」


 少し重たい『使い魔の卵』を持ち上げて慈しむ様に名前をつける。

 ルー君とロウ君の時と同じように卵に一気にヒビが入り、そこから現れたのは青い鬣が美しい子馬だった。


「ブルルッ」

「……わぁ……カッコイイ……」

「きゅぃ!」

「ホホホォ!」


 吸い込まれるような蒼い瞳に流れるような青い鬣。

 リーオ君は大きな使い魔の卵よりもずっと大きな体を持ち、ポニーよりは少し小さいくらいのサイズだ。

 たぶん私と同じくらいの大きさはありそう。


「えっと……よろしくね、リーオ君」

「きゅきゅい。きゅーきゅぅきゅぃきゅ」

「ホホーホォホォホ。ホォホホホォ」

「……ブルルル」

「きゅい!」

「ホォ」


 恒例のルー君とロウ君による話し合いが始まり、それにリーオ君は静かに答えている。


「きゅ~い!」

「ホォホ」

「ブルル」


 最後にはリーオ君が頭を垂れてルー君が飛び乗り、どうやら円満に話し合いは終わったみたい。

 リーオ君はルー君が先輩だっていうことをきちんと受け入れてくれたみたいだ。


「……あはっ、くすぐったいよ、リーオ君」


 ルー君達の話し合いが終わったのでリーオ君はルー君を頭の上に乗せたまま私に近づき、頬をぺろっと舐めて吸い込まれそうな瞳で見上げてきた。

 私も鬣を手櫛で梳いてあげてそれに応えてあげる。

 気持ちよさそうに目を細めるリーオ君の青い鬣はすごく繊細で綺麗だ。尻尾の毛も青くて気持ちよさそうに揺れている。


「改めてよろしくね、みんな」

「きゅぃ!」

「ホホォ!」

「ブルルゥ!」


 3人目の王子様は蒼い瞳と青い毛並みのとても綺麗な子だった。



リーオ君、ゲットだぜ!


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