contract-2-
「行かなければならない場所がある」
「菜摘のところか?」
「違う」
光の問いを否定する未弥。
「全ての終わりの場所」
「すべてのおわり……」
「そこへ行けばかぁくんとなっちゃんの最期がわかる」
「ちょっ、まてよ。どういうことだよ。菜摘の最期って。菜摘は生きてるだろ。それにかぁくんって誰だよ。俺の知ってるやつなのか?」
未弥はじろりと睨み、光を黙らせる。
「私が知ると思ってるの? そもそもなっちゃんが生きてるのを知ったのもついさっきなんだから。かぁくんはかぁくんだよ。 ………そうだね。この世界に住んでるたいていの人はかぁくんのことを雷神だと思っているのかもね」
そこで光が唖然としているのを見てつづける。
「ただ、二人とも『ある時』を境にしていなくなった。その時の戦いが今この世界を創ったともいえる。案外、かぁくんはなっちゃんと一緒のとこにいるのかもね。正直会いたい気持ちがないと言えばそれは嘘になる。ただ、二人がそれを言わないのであれば、私に伝えないのであればそれを知られたくないということだから、私はまだ会わない。その前に真実を見届ける。だから行くよ。あの時の戦いのあった場所に」
光はついていけない。
そもそも光の目的は自分を知る為だった。
それがいつの間にか世界の根幹を知ることになるというのだろうか。
いいのか。
自分がそれを知ってしまっていいのだろうか。
けどそれでも。
その先に光の知りたい事実があるのなら、
光の求める真実があるのなら、
行かなければならない、のだろう。
「わかった」
光は短く答える。
そしてその小屋を出るところで、
「ところで、光、あなたのランクは?」
訊かれる。
「……Bだ」
少しためらったが、それでも答える。
ためらった理由は、そのランク設定が不自然だと光自身が思っているからだ。
能力者でない自分がBランクなんて何かがおかしい。
「そう」
しかし未弥は光のランク設定に対して大した疑問を抱かなかった。
未弥はランク設定の本当の意味を知っていたからだ。
「なるほどね。そういう見解なの」
その態度でそれ以上聞くなという意思を感じ、光は追及をあきらめた。
「やっぱり、行かないとわかんないか」
未弥は行く気持ちを強めたようだった。
「ところで、えぇっと…未弥、さん。あなたのランクは?」
未弥は光を見つめ、大きなため息を一つついた。
「これは、言わないでおこうかと思ったけど……どうせなら言ってしまったほうがわかりやすいのかもね。私のランクはSS。あなたよりは三つ上のランクになるかな、形の上では。本当はそれ以上の差が広がっているけど」
それはそうだろう。光はランクB。しかも光は自分がBランクほどの実力を持っているとは思っていない。能力者でもない光がB級のクエストを受けたりすることもない。ちまちまD級、たまにC級のクエストをこなして日銭を稼いでここまで来たくらいだ。だが、光のその考えと未弥の考えとは異なっていた。
「そういう意味じゃない」
光の思考を読み取り告げる。
「ランク付けは、能力の強さだけで決まるものではないし、クエストをクリアできる目安になるものでもない。それはもちろん、試験でランクを決めているし、能力や実力が反映されてないわけでもない。でもそこには限界があるし例外がある。それは私であったり、あなたであったり…」
「いったい何なんだよ」
「…ランクは危険度。そういうこと」
「危険度?」
「この世界に対する危険度を示しているの。そして管理するための指標にもなる。例えばランクAの人が発狂してしまい誰かを襲ってしまったりしたときにそれを止める役。それはランクAを数人、あるいはランクSを使わないと止めれない。そういった判断基準のために使われているの。ほんとはね」
「それは………」
実際のところ、能力者が発狂してしまうのは少なくはない。
最近ではだいぶ減っているようなのだが、それでもたまには起こる現象であった。
それを発狂と呼んでいいのかどうか。
ただ、人を殺し、物を壊し、能力の限りのままに暴れまわる。それを何と呼べばいいのだろうか。
だが、それを抑えるための楔がランク制度だとは、階級の制度だとは、光の思考の範囲を超えていた。
けど、だとすると未弥のランクの意味は何だろうか。光のランクの意味は何だろうか。
そこにある意味は。
「あなたの場合は単純。あなたが雷神の子孫、その可能性を考慮されているから。ただ、あなたは能力者ではない。そのことがいまいち確信が持ててない理由なんだろうね」
「じゃあ、未弥、さんは?」
「私は『その事件』の中心にいたからね」
「事件?」
「雷神が現れてからいなくなるまでの世界の流れの中心にいたってこと」
「!!」
それなら、
「それなら、俺のことはっ?」
「全く記憶にない。私の記憶にないということは私は会ったことがないってことになるね」
「そう……か」
「だからこそわからない。あの後、何があったのか。なっちゃんがいるのならかぁくんはどうなったのか。これまでは知るのが怖かった。それでも知りたいと思ってしまった。全てを知って判断したい。なっちゃんに会いに行くのか。かぁくんに会えるのか、そして会いに行くのか」
さて・・・・
実を言うと、ストックが切れました
とはいってももう一個のほうはストックがもともとないので別に・・・
ただこんごのながれ、全く考えてないんだよねー