litmus-5-
「黄色いな」
「黄色いね。だからコーンムカデなんだけどね」
二人が探していた討伐対象。
それはあっさりと見つかり……
「でも、多くないか?」
「群れを作ってるって聞いてない?」
「それでも。多くないか?」
「…………」
目の前に広がる黄色の絨毯。
もちろんそれは絨毯などではなく。
「結構一瞬で目標クリアできるのか?」
「全部倒せたらね。余裕でいけるわよ。百体はいるから。ただ、私は倒さないからあなた一人でそれができそうかどうかの問題かな?」
「そりゃあ無理に決まってる」
「断言されても…」
癒希は頭を抱える。
確かにザヴァに厳しいことはわかってるつもりだ。
できるのならそもそもCランクを倒せる実力を持ってることになる。
それができないからD級ライセンスで止まっているのだから。
「んー……じゃあ、戦いの基礎から」
癒希は少し悩み話し始める。
「大切なのは相手の長所と短所を見極めること。例えばスライムの場合、通常の物理攻撃だと分裂させるだけで意味がない、とかね。知ってたら酢のようなものですら効果があるのに、知らなかったらそれだけで死にかねない。 …ここまではわかる?」
「あ、ああ」
「だったらまずは観察する。もちろんそういったことができないときもある。急に襲われたときとか。それでも観察することを怠っていい理由にはならない。今だったらあのコーンムカデ。あいつを見て一番特徴的なのはあの顎の大きさ。おそらく八割方、あれはあいつの武器になっていると考えていい。次に群れていることだけど…今回のこれは繁殖期だから、知らなかったら知らないけれど、モンスターが人を襲う理由は繁殖期あるいは育児での気が立っていること、餌を探してでのこと、あたりが時期で現れる依頼に多いから時期で変わってくる依頼があればそういった理由が多いことも覚えておいていいかも」
「あ……ああ」
「で、気づきにくいかもしれないけどあいつの弱点といえるかどうか……として、あいつらは今私たちに気づいていない」
「えっ、でもそりゃあ当たり前だろ? 俺たちは今あいつらから見えない位置にいるんだぜ」
そういうザヴァと癒希。
二人は木の枝の上に立ち、黄色の波が蠢くのを眺めていた。
「わかってないわね。気づいてないその理由。一つ目、上が見れない。二つ目、においがわからない可能性。三つ目、音も聞こえない可能性。私たちはさっきからすごい喋ってるのに」
「おお、確かに」
「だから実験してみることもできる。例えば――」
と、癒希はそばにある木の枝を折り少し離れた位置にそれを放った。
木の枝が落ちた瞬間、そこに群がるコーンムカデ。
「今のは木の枝が落ちた『音』に反応したのか、それとも『振動』を感知したのか、あるいはそばにいた一匹が何らかの合図を送ったのか」
「だんだん選択肢が増えていってねぇか…」
「全部を知る必要はないわよ。それを知りたかったら学者にでもなればいいと思う。今いえることでこっちに有利なのは今の私たちが相手に知覚されてないってこと」
つまり、と癒希は小さな鎌をどこからか出し、投げる。
それはコーンムカデの一匹に突き刺さり―――――動かなくなる。
「は?」
「こんな感じで」
「…え?」
「ほかにも弓とかあるだけで、それだけで一方的に攻撃できたりするから」
「いや…」
癒希はまだ、これが能力者もしくは力を持つものによる特権だと気付けないまま――――
「さぁ、やってみましょうか」
「いや、えっ!? できるかっ!!!」
こっち、無駄に明るいな
同じシリーズなのに