極上決裁
「お前の言う前提っつうのは、大福には餡が入っているとか、チェスは交互に動かすもんだとか、それと同じってことでいいんだな」
(また始まったよ。)
「ただな。よく考えろよ。大福に餡が入っているのも、チェスを交互に動かすのも、最初は誰かが決めたんだよ。いいか。前提っつうのはあるんじゃなくて、誰かが作ったんだよ。」
(いや、チェスを動かすっておかしいだろ。動かすのは駒だろうよ。)
「じゃあよお。お前の言う、お前が頼りにしてるその前提っつうのは、誰が決めたんだ。何のために決めたんだ。それを知らなきゃよ、軽々しく使っていいもんではないだろうがよお。大福になんで餡が入ってんだ?俺は発想が逆だと思うな。餡が入ったら大福になったんだよ。俺の場合、餅ありきなんだよ。逆なんだよ。」
(何の逆だよ。餅ありきって何だよ。)
「わかんないんだよ。その感覚が。俺がやってたころなんて、その辺は普通におさえてたもんだよ。意識せずに。失敗するからとかじゃなくてさ、普通におさえてたんだよ。だからさ、逆になんでそういう発想になるのかがわからないんだよ。」
(でたよ。言いてぇ。知らねぇって。お前の過去をお前が高く評価する話なんて知らねぇって。)
「ポリクソンって知ってるか。哲学用語なんだけどさ。哲学って前提だろ。現実があって、その前提を抽象化するのが哲学だろ。その思考過程をポリクソンっていうんだよ。別にいいんだよ。この言葉は。知らなくても。知らないだろ。まず知らんわな。いいんだよ。ただな、気をつけろってことだよ。前提ってお前が思ってる以上に深いんだよ。」
(それ言いたかっただけかよ。ポリクソン?聞いたこともねぇな。)
「申し訳ありませんでした。勉強不足でした。シルバー人材センターのシルバーについて、もう一度確認して出直します。」
「うん、それ分かったら押すから。」