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風待ちの猫/0
眠りに落ちる前のことだ。
いつもの箱の中で、いつものように目を開けた。そこにはいつもと同じ景色がある。
なんの面白味もないその様子にトラ猫は小さく溜め息をつき、すると愚痴のようなものが一緒に口からこぼれた。
「やけに、静かじゃないか」
時間を止めたようだ、とトラ猫は思った。
周りから音は聞こえず、自分の声さえひどく遠い。匂いすら感じられなかった。両の瞳にはいつもの景色が映っているが、ただそれだけだ。耳も鼻も、そこだけ死んでしまったかのように沈黙している。
あいつは、どこだろう。
あの人間は、どこだろう。