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罪人の魔術師

 私が普段生活していて『なんだろうな』と思ったことを自由に表現してみたいと思って書いています。彼等がどのように動いてくれるのか皆無ですが、暖かい気持ちで読んでくれたら光栄です。私が作った、なんだかよくわからない世界でさまよってください。

 「罪人、アクセル・ミン・イェンセン。お前はビースト研究思想を持ち行動に移そうとしていた。その行為は天空界てんくうかい憲法に背いたと同然。有罪とする。魔法術すべてを封印し、速やかに下界に流れるように。」

 

 

 天空人であったアクセルが下界に流されたのは、ほんの一週間前のことであった。

 しかし、彼は既に下界暮らしを楽しんでいるようだった。

 アクセルは魔術師マジシャンで、数百年に一度といわれる才能を持っている、エリート組の天空人である。地位もそれ相当の者についていて、暮らしもほかの魔術師に比べて優雅なものであった。

 誰もが憧れる存在となって、彼の一族も鼻を高そうにしていた。

 しかし、本人に限ってはつまらなさそうにしていた。

 何かつまらないのか。

 天空界の環境と自分自身は水を油のように気が合わない。ただ窮屈な場所としかアクセルには思えない場所で、不自由な場所。

 彼の求める自由はそこにはないのだ。



 アクセルが今住処としている洞穴の出口からは小さな町と海と緑が一望できる。

 この風景が気に入って彼は山のほぼ頂上に拠点を置いた。誰の手も加えられていない自然そのままの静かな場所だ。

 しかし、今日は訪問者がいるようだ。

 「アックス、元気にやってるか?」

 「・・・サイモン。」

 後ろに仰け反ると、同じ銀色の髪と自分と対の瞳が目に入った。

 サイモンと呼ばれたその男はアクセルの唯一無二の親友であるが、二人は互いを腐れ縁と言う。

 アクセルが魔術師ならば、サイモンは悪魔族セイタンという天空界では対となる身分であるのだ。

 人間界(天空界で言う下界)の者にとってはどっちもどっちだあろうが、これには天空界における長い歴史と様々な問題があって『対』と言われるのだ。

 二人にとってはもうどうでもいい状態にあるが、たまに寂しさが生まれることは否定できない。

 「気のせいかな・・前よりも生き生きしている気がするよ。」

 「恐らく気のせいじゃないと思う。ここは自由だ。上みたいに監視下の生活じゃないし。まぁ自分でやらなくてはならないことがかなり増えたが、そんなことどうだってなる。」

 「罪人のくせにお気楽だな・・・で?獣の研究のほうはどうするの?」

 「下界には下界なりの獣が存在するし、まずそいつらを観察してみようかと思ってる。話によれば、この下界にも天空獣がいるらしいし。さすがに上のやつらは下界のモンまで見ないだろ。この下界をただの活用源としか考えてないんだから。」

 下界が天空界の配下(植民地)となったのは、もう何年も前のこと。

 しかし、そのおかげで下界は前よりも発展していて豊かになったといわれている。

 本当なのかどうかはアクセルは下界のことは一つも知らずはじめて来た身である為よくわからないが、天空界に対して反抗的な態度をとっている者も暴動も起きたりいたりしないため、その情報は確かに正しいのかもしれない。

 ただ確かなのは、『天空界は下界の何かを利用している』ということなのだ。

 「まぁ、そうだろうね。でも君は今、魔術をすべて封印されている身だよね。どうやって獣を捕獲するの?」

 「術は生まれ持っての術である、医法吸引術いほうきゅういんじゅつは使える。・・・使ったこと一度もないから使い道もわからないが・・・まぁ、なんとかなるだろう。」

 「言っとくけど、俺は手伝わないからね。君みたいに罪人になりたくないし、そもそも俺はインキュバスだから戦闘バトルタイプじゃないから。」

 「安心しろ、最初から期待してない。」

 「酷い!君のことをこんなにも思って言ってあげてるのに!」

 袖でヨヨヨ・・・と涙を拭く茶番をしたサイモンだった。

 が、ふとあることを思い出したようにアクセルのほうを向きなおした。

 「なんのために俺はここまで来たんだ・・・そんなことより!君に頼みたいことがあるんだ。」

 「何、急に。」

 「子供を一人、預かってほしい。」

 インキュバスの男が子供を預かってほしいと・・・そう言った。

 「何お前、子供作ったのか?」

 「違う!!・・・君に預かってほしいのは、ウルフ家の子なんだ。」

 「ウルフ家?天空界天使族エンジェルの一つの?」

 天使族とは、天空界では高等位に位置する神聖な種族である。

 「そう、ちょっと事情があってその子供は天空界にはいられないんだ。俺も天空界にいる身だし・・。だから、下界にいる君にに預かってほしいんだ。」

 「・・・どんな事情があるかわからんが、お前の頼みなら聞こう。で、いつまでそいつを引き取ればいいんだ?」

 「えーっと、自立するまで・・・?」

 サイモンの若干いい加減な返事が、しばらくの沈黙を生んだ。

 アクセルはサイモンの預かってくれるよね?と言いたげな笑顔の前で、一つため息をついて頭を抱えた。

 「子供を持ったことのない俺に里親にでもなれというのかお前は。」

 「しょうがないじゃん。上司が、下界に暮らしていて・それなりの学問を修めていて・天空人で・高等な血を受け継ぐ子どもを育てるのに相応しい者、を探せって言われたんだよ。そんなの君しか考えられないし。だからよろしく。」

 「前言撤回・・・」

 「おとこに二言は無し!・・・あ~これは♂♀だんじょ差別か。ともかく、今度連れてくるから。アクセル頼むよ。援助はもちろん出す。マニュアルも持ってくる。」

 「・・・監視下でない自由な生活が始まると思ったのに、それは俺への処罰か。」

 「子育てを処罰とか言わないでよ。これは君の義務なんだから。」

 「・・・・・・・。」

 真面目な顔をして義務とか言っていたが、絶対心の中ではやった~仕事終わった~♪とでも思っているのだろうと、アクセルは思ったがもうそのまま流されてしまえと諦めた。

 どうせ故郷では罪人の身。前向きにいろいろやってみるか。


 そうアクセルが決心したのは、もう10年ほど前の話。

お疲れ様でした。


天空界とは、今でいう非科学的なことを指したりするものに値する気がします。

天空人は、天使族・魔術師・悪魔族・獣などをさし、ほかにもいくつかの種があります。出てきたら少しずつ紹介したいと思います。

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