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伯爵家のメイド 3


「何のプレイだか知らないけど、ハチミツやらバターでシーツを汚すのはやめてよねっ!汚れをおとすのにどれだけの労力がいると思ってんのよ!」


「汚く食い散らかしてんじゃないわよ!あんたがぐちゃぐちゃに食べ残した分を換算すれば、庶民の食事の3日ぐらいにはなるっつーの!お百姓さんに謝れっ!」


「3人に同じデザインの指輪をやるなんて底の浅いことしやがって!自分の手のつけた女たちは互いに無視しあってるから、同じ指輪だってバレないに違いないと、軽く考えてるのが腹立つ!しかも、みんな気づいてないようだけど、あの指輪、質の悪い模造品じゃないのっ!」



怨念を込めるように一目一目を編みこんでいく。 


一日の仕事を終え、軽い夕食をとったあとは、自分にあてがわれた部屋に戻る。

質素な綿の寝巻きに着替え、揺り椅子に座って、編み棒を手に取るのがいつもの日課だ。


編み物は私のストレス発散方法なのだ。

手を動かしていると頭がだんだんスッキリしてくる。

一日で積もり積もったストレスをこうやって晴らす。


編み物に集中すると、無意識にブツブツ不満を口にしてしまうのが私の悪い癖で、前の職場では不気味がられたが、ここでは贅沢なことにメイド一人に一部屋が与えられている。

ヴァルターがムラッときたとき目当てのメイドの部屋にすぐ入り込めるように、というしょうもない理由からだが、一人でゆったり過ごせるのでこの際理由はどうでもいい。



ウ~ッ、ワンッワンッ

(何だか今夜は犬が吠えるわね…)

つい手をとめて、耳をすませる。

この屋敷では夜になると外に犬を放している。

あれだけわかりやすくあくどい事をやってるんだから、身の危険もそりゃ感じているんだろう。

現に私がこの屋敷にやってきてからの2年間でも、2,3回不審者の侵入があった。

一つは野党の類だったらしいけど、あとの侵入者は警吏に引渡しもせず闇から闇に消された。きっと“公にできない”類の不審者だったのだろう。


猛犬がウロウロしているので、うかつに夜に外に出られない。

それでもどうやっているかは知らないが、ジェニ、リタ、モリーはそれぞれ恋人をちゃっかり部屋に連れ込んでいる。


詳しく聞いたことはないが、犬に嗅ぎつけられない抜け道があるんだそうだ。

それを男に教えて、忍んでこさせ、逢瀬をする。

相手の男もまったくご苦労なことだ。

こうホイホイと部外者から屋敷の中に入られちゃあ、警備の意味がないようだけど、厳重に警備しているのは主にガマガエルたちが住む棟のようで、使用人の住む棟は比較的手薄になっているようだ。


常になく犬が騒ぐのを聞き、軽い胸騒ぎを覚える。


(でもメイドの私には関係ないことだわね。深く考えない。深く考えない)





「ああ~んっ、いいっ~!」

(はじまったか)

犬よりもデカイ声でモリーが喘ぐ声が、壁越しに聞こえる。

今日はモリーが男を引っ張り込んでいるようだ。

今夜のヴァルターのお相手はリタで、左隣のリタの部屋は静かなものだ。

ジェニはおそらく屋敷の下働きの男の部屋にでももぐりこんでいるのだろう。


ヴァルターに呼ばれて母屋に行く以外は、自分の部屋か屋敷内の男の部屋に泊まる。

せっかく一部屋ずつ与えられているが、あの3人が自分の部屋を使うのは男を連れ込むときだけだ。



(盛り上がってもっとデカイ声を出さないうちに、寝てしまおう)


編み物をカゴに片付けてさっさとベッドに入った。

何事も我関せず、で過ごすのが一番なのだ。




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