人を呪い殺す方法なんてないらしい。
人を呪い殺す方法なんてないらしい。
俺は馬鹿なことを言っているらしい。
俺は馬鹿なことを言っていないで早く就職しなければならないらしい。なるほどな。
馬鹿なことを言っているのは一体どっちだ?
無理矢理学生時代の全てを捨てさせて、いい大学行けなきゃ負け組だと洗脳して、それで失敗したら失望する。
冗談じゃねえ。
俺はお前の見栄とプライドで人生を振り回された。
友人を作れなかった。遊ぶ暇があったら勉強しろと言われたから。
恋人を作れなかった。お前に、そんな浮ついたものアンタには必要ないと言われたから。
高校の時虐められた。お前のせいだ。
お前の言う通りにしたせいで、俺の人生は滅茶苦茶だ。
人を呪い殺す方法なんてないらしい。
おかしいだろ。
真面目に生きて来た人間が、それを馬鹿にしてきた人間に何も出来ずに負けるだなんておかしい。馬鹿げてる。
悪いことをして生きてきた、不真面目な人間を殺す手段を俺が持てないだなんて、ふざけている。
俺は何も成せていない。何者にもなれていない。
全て母親のせいだ。
父親は母親が俺に怒鳴るのを渋い顔で見るだけの空気みたいな存在で、同級生にはスクールカーストでしか人間の価値を測れない馬鹿しかいなかった。
教師は俺の事情も鑑みずに周りに見世物にするようなクズで、俺はいつだって孤独だった。味方なんていなかった。
せめて何かを成し遂げたい。いや、そうじゃない。悪い人間に罰が下って、俺は良い人間だから下らなくて、それで、奴らを見返したいだけだ。その欲求はいつまで経っても収まらない。
二年三ヶ月ぶりに1階に降りた。母親が夕飯を作っている。
悪い人間には罰が下るべきである。
天罰じゃなくていい。呪いなどという手段は必要ない。母親が背後に迫る俺に気づいた。
俺はそのままその心臓にハサミを突き立てた。




