「先輩ザッコ〜」と表では煽ってくる生意気後輩は、俺の前だけでは清楚になる件
座右の銘「恥じらいは捨てろ」
最近流れてくる同じ作品の色んなシチュエーション漫画の小説版みたいなのを想像
起きたら日間恋愛短編9位、すべて25位だった!ありがとうございます!
俺はとても腹が空いている。
その原因は目の前にはいる…
「先輩、もしかして今日も焼きそばパンの競い合い負けちゃったんですか〜?本当に先輩ザッコ〜い」
「…仕方ないだろ。移動教室だったんだから。しかも旧校舎の方」
そう言うと同時に、上がりそうになる口角を必死に耐える。
「ふ〜ん。ま、まぁでも?そんなザッコ〜い先輩が食べたいんだったら、食べてもいいですよ?…私の食べかけなら」
そう言うのは俺の一つ下の高校一年、白雪麗奈。
ツインテールで、服のボタンは上から二つまで開いており、スカートは折っていて膝より少し上まで脚が出ている。
白雪さんは俺の机の上に乗りながら、脚を組んで、今まで食べていた焼きそばパンを俺の目の前で、食べかけの方をチラつかせる。
その焼きそばパンは、一口だけ食べられているがまだ全然残っている。
めっちゃ美味そうだ。
「あれれ?先輩、要らないんですか〜?ほ〜ら」
白雪さんは俺に匂いが来るように、焼きそばパンを俺の鼻に近づける。
そして、遠ざけ、また近づける。
クラスの奴らは「またか」みたいな視線を送ってきて、俺たちのやり取りを流していたが、その内の一人が近づいてきた。
「白雪さん、俺にもちょっとくれない?購買、遅れちゃって買えなかったんだよ。あ、ちゃんとお金は払うからさ」
そう言うのは、クラスの陽キャグループに入っている佐藤。
「え?…あ、ヴヴン!え〜佐藤先輩も買えなかったですか?」
「そうそう。だからさ…」
そう言って焼きそばパンに手を伸ばす。
「ッ!だ、ダメです!」
手が来るのは予想外だったのか、俺を煽る時のような余裕はなく、口調も違う。
俺はもう限界かと思い、その焼きそばパンを右手で奪うように手に取った。
「ありがとう、白雪さん」
俺は焼きそばパンを食べかけの方から食べる。
ちょうど、取ったときに口の前に来たのが食べかけの方であったから、別に狙って食べたわけではない。
「ッ〜!か、かんせつ…そ、それじゃあ、先輩。私は帰りますからね!」
顔を紅潮させると、白雪さんは顔を隠して、逃げるようにそう言って出て行った。
すると、教室内はいつもの恒例、へこんでいる佐藤の励まし会に入った。
「どんまい!次がまだある!」
「いや、もう諦めろよ」
「ちょっと今回は強引に行き過ぎだったよ!」
やり取りを聞いていたクラスメイトたちからの励ましの言葉で、佐藤は段々立ち直っていた。
「ま、あいつはお前みたいなタイプは苦手だかな。しょうがない」
そう言って、俺は佐藤の背中を叩いた。
だが、俺のこの一言で佐藤はまたへこんでしまった。
「あーあ、せっかく励ましたのに〜」
「黒瀬、佐藤で遊んでやるなよな〜」
「…こいつはこの状態でいたほうがいい」
俺は焼きそばパンを全部食べ終わると、佐藤の肩に手を置いた。
「じゃあ、行くか」
「…え、もしかして白雪さんの教室!?」
「いや、アイス」
目を輝かせていた佐藤は深いため息を吐いて、「アイスじゃ腹はたまんねぇーよ」と言い、地面に倒れた。
それをクラスメイトたちは笑って見ていた。
そんな中、俺だけは必死ににやけ顔にならないように保っていた。
それは、俺だけが白雪さんの素を知っているから。
・・・・・・
・・・・・・
六時間目が終わり、放課後。
「黒瀬、今日も白雪さんと帰るのか」
「まぁ、多分?約束とかはしてないけど、下で待ってたら帰るよ」
聴いてきた佐藤にそう言うと、佐藤は「そうか…楽しんでこいよ」とハイライトのない目で言った。
そして、深いため息を吐きながら、部活場の体育館に向かって行った。
ちなみに、俺は部活には入っていない。
階段をおりて外靴に履き替えると、後ろから背中を指でなぞられた。
それに反応してジャンプしてしまった。そして、俺は後ろを向いた。
「おい、白雪さん。よくもやってくれたな」
「ププ〜、先輩、後輩に背中なぞられて、ジャンプするなんてはっずかしい〜」
「…いつか、絶対してやる」
「え〜、じゃあ私いつか、先輩に急にセクハラされちゃうってこと〜?」
「ッ、そうは言ってないだろ!」
「焦ってる先輩、かっわいい〜」
後ろを向いた時に、周りにいた生徒たちが俺たちを見て笑っていた。
この会話を聞いて、新たに来た他の人たちも笑い始めた。
「か、帰るぞ!」
俺はそれから逃げるように校舎から出た。
俺の後をついてくるように白雪さんも靴を急いで履き替えて、俺の横まで走ってきた。
校門を出て、学生たちが誰もいなくなったところで、白雪さんはツインテールを解いて、髪をおろす。
服はボタンを上から一つまで留める。
折っていたスカートは元に戻して、膝が隠れるまで丈が伸びる。
「…先輩、先程はちょっとやり過ぎてしまいました。ごめんなさい」
「……マジで恥ずかったぞ」
すると、自分たちの会話を思い出したのか、白雪さんは顔を少し紅潮させた。
「でも、私、上手くなりましたか?」
メスガキのような相手を煽る声から一変、一切の汚れがない、純粋無垢のような声。
そして、丁寧な言葉使い。
「うん。でも、想定外なことが起きると素が出そうになってるぞ」
「そ、それは先輩がすぐに受け取ってくれなかったからで…」
もじもじしながらそう言う白雪さん。
「俺のせいか…」
「い、いえ!私がまだまだ未熟だからです。先輩のせいではありません!」
顔を下にそむける白雪さんに、俺はもう耐えていた口角が限界になり、気持ち悪いくらいのにやけ顔になった。
それを見られないように、白雪から顔をそむけた。
「先輩?何で顔を背けるんですか?」
「い、いや、別に?」
「本当ですか?」
そう言って、「ひょいッ」みたいな可愛い効果音が付きそうな動きで俺の視界に入る。
この小動物みたいな白雪さんについて、今ここで叫びたいことがある。
――こいつの声。マジで興奮するんだよ!!
普段の白雪さんは清楚キャラみたいな透き通って、落ち着きのある綺麗な声。
それが人前では、生意気後輩みたいな声と口調になって、それで煽られても嫌な思いどころか、興奮して仕方ない。
俺が声フェチなのも関係するのかもしれないけど、この変貌は誰だってそんな感想を抱くと思う。
「慣れましたけどまだ…あれには遠く及ばないですね」
「あれは生粋のメスガキだからな。……でも、本当にここまで出来上がるのは想像してなかった」
「あ、ありがとうございます。もっともっと磨いていくので、覚悟していてくださいね!」
両腕を畳み、小さく拳をつくってそう言う。
俺はそんな白雪さんとのこの生活が楽しくて仕方ない。
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