9話
「ちょっと時間いい?」
席につくなり天王寺さんから声をかけられて僕は驚いてしまった。一体どんな用なのだろうか。何と返事すれば良いか分からず固まっていると天王寺さんは首を傾けて不思議そうにこちらを見つめている。
「あ、ああ、良いけど、すぐ朝礼始まっちゃうんじゃない?」
「それもそうね。じゃあ、一時間目の後の休み時間で」
「う、うん。分かった」
僕がそう返事するなりくるっと背を向けて自分の席へと行ってしまった。相変わらず不思議な女の子だと思った。自分を探偵だと名乗ったり、死体を調べたりかなりの不思議ちゃんなのだろう。そう考えていると海野先生が来て朝礼が始まった。
朝礼では黙祷、登下校中の注意喚起などされた後、いつも通りの流れになった。その後、一時間目の授業も終わり休み時間になった。その瞬間、天王寺さんはこちらへ来た。
「菊地君」
「うん、何かな?」
「ここではちょっと」
「う、うん」
僕が返事をするなり天王寺さんは廊下に向かって歩き出す。ここでは話せないから着いてこいという事だと分かったので立ち上がり天王寺さんの後ろへ着いていく。
天王寺さんは廊下の端まで来てしまった。あんまり人に聞かれたく話なのだろうか。そして彼女はこちらに振り向いて何やらモジモジし始めた。
「菊地君、私実は菊地君の事……」
「いや、絶対告白じゃないよね」
天王寺さんは照れた振りをしながら見つめてくるが嘘だというのは分かる。いくら人が少ないとはいえ他の人に見られる場所だし何より天王寺さんが僕の事を好きではない事くらいは分かる。
「まあ、冗談だとしても聞きたいのは……」
「月村のことでしょ?」
聞きたいと思われていることを先回りして答える。僕は事件の時の様子を思い出す。猟奇的な殺人事件があってすぐに調べだしたことからもかなり興味を持っているのだろうなと考えていた。
「……、ごめんなさい。あなたも傷付いているのに」
「いや、良いんだ。ただ……、あんな事に興味を持つのは趣味が良いとは言えないと思うけど……」
僕の表情は怒っていたのか、悲しんでいたのか自分が自分では分からない。僕は彼女になんて言えば良いか分からなかったがそう呟いた。
「勿論、興味本位だけで事件を調べているわけじゃない」
「なら……」
「言ったでしょ。私は探偵よ。犯人を見つけ出す」
僕は何を馬鹿なと天王寺さんの顔を見る。すると彼女の表情は真剣そのものだった。それを見た僕は冗談などではなく本気で犯人を探し出すという強い気持ちが現れているのが分かった。
「で、でも一介の高校生にそんな……」
「あなたの言いたいことは分かる。犯人探しは警察に任せようということでしょ?」
僕は肯定の意味で頷く。いくら何でも殺人事件を調査するなど危険すぎるし、高校生が調べられる事などたかが知れているように思えるからだ。すると彼女は何と言おうかと悩むように顎に手を持ってくる。彼女はう〜んと呟きながら考え出しているようだ。
「勿論、警察も全力で調べているけど、それだけでは犯人は見つからない」
「どういう事?」
何故、そんな事を言いきれるのか意味がわからず僕は首を傾げる。彼女はその様子を見て決心したように天井を一瞬見つめて僕を見つめる。
「この世界が実はミステリーゲームの世界で、私はその世界の主人公として転生してきたと言ったらあなたは信じる?」




