7話
結局、丸二日月村は家に帰って来なかったらしい。どうやら昨日には警察に捜索願を出したらしい。月村のお母さんからうちにも連絡が来ていた。日曜日に母さんは僕達兄妹に外に出ないように促して自分は月村のお母さんと協力するという事で出かけていた。
「やはり来ないか」
月曜になりいつも一緒に登校するための待ち合わせ場所になっている家の近くの公園前で時間になっても来る様子が無かった。心の中では何事もなかったかのように現れるのではないかと期待していたが、その期待は見事に空振りのようだ。僕は念の為、月村に先に学校へ行くというメッセージを送り学校へと歩き出した。
しばらく歩いていて学校の近くまで来ると何処か生徒達がざわざわと騒がしい。何かあったのだろうかと考えながら歩いて校門まで行くと周りの生徒の会話が聞こえてきた。
「おい、聞いたかよ?」
「なに?やけに騒々しいじゃん」
「なんか二年の教室に死体があったって。早くしないと先生達が立ち入り禁止になるかもしれないから早く行こうぜ」
僕はその会話を聞いた瞬間、嫌な予感がして校舎に向かって走り出した。僕は上履きに履き替える事も忘れて自分の教室がある二階まで走る。そして2−Aの教室前では泣いている生徒、嘔吐している生徒、そして教室の中も覗き込む生徒が何人かいた。僕はその生徒達を押しのけて教室の中へと入る。
「つ、つきむら……」
中に月村朱音がいた。いや月村朱音の死体だった。すぐに死体だと分かったのは胴体と首が離れていたからだった。月村の頭部は教壇の上に載せられて、胴体は教壇の横に並べられている形だった。僕はそれを見て気分が悪くなって体が崩れて座り込んでしまう。どうやら上手く呼吸が出来ていないようだ。口からコヒューコヒューと音が漏れ出ていた。
「はい、皆どいてどいて」
他の生徒を押しのけて天王寺が教室の中へドカドカ入っていき、鞄からビニール手袋を取り出して手にはめ、マスクを装着しながら歩いていく。
「お、おい、天王寺、あんまり中に入るのは……」
他の生徒があまりに堂々と入っていく天王寺を静止しようとする。
「どうせすぐ警察が来て調べにくくなるんだから今のうちに調べるのよ」
天王寺は平気な顔をしてそう話す。生徒達は今の状況と合わせて意味がわからず黙ってしまう。そういって天王寺は死体の周りをキョロキョロしながら調べ始めた。
「ふーん、頭部を教壇の上に乗せる為に何かコーティングしているのね。それで首元を固定するために固めた……」
天王寺は何かブツブツ言いながら熱心に死体を観察している。僕達はそれをポカーンとしながら見つめていた。しかし少しすると更に騒がしくなる先生達が来たようだ。
「君達、この場から離れなさい。後具合が悪いものはすぐ保健室に連れていくから言いなさい」
担任の海野先生が生徒たちを押しのけて教室までやってくる。そして教室の中、ましては死体のすぐ近くにいる天王寺を見つけた。
「天王寺、何してる!!早く外に出なさい」
「ちっ、来るのが早い」
天王寺はそれを聞いて舌打ちをして教室の外まで出てきた。天王寺はつまらなそうな表情をして他の生徒達と一緒に現場に離れる事になった。
「おい、菊地、大丈夫か?」
海野先生は天王寺を注意した後、僕のところまで来て心配そうに見つめている。
「だ、大丈夫です……」
「無理をするな。立てるか?」
先程まで呼吸するのすら困難だったが、天王寺の突拍子の無い行動で唖然とした影響か少し落ち着いていた。今、教室の前には先生たちが中に入れないように扉の前に立っているのが見えた。そうして僕は具合が悪くなった生徒と海野先生と一緒に保健室に向かうことにした。ベッドには特に具合が悪そうな女子たちを寝かせて僕は空いている椅子に座らされた。
「どうして、こんな事に……」
唖然としていた僕は、鳴っていたであろうパトカーのサイレン音ですら聞こえていなかった。




