5話
翌日、僕は駅前のベンチに座り月村を待っていた。僕はポケットに入っているスマホを取り出して時刻を確認すると既に十一時を回っている。約束の時間から一時間も過ぎている。今は七月のため、かなり暑い。日陰にいるとはいえ一時間もいると汗が止まらない。僕は持っていたタオルで顔を拭きながらため息をつく。これまでに何回も電話やメッセージを送っているが一向に返信がない。
「仕方ない……、帰るか」
待っても来ない上、連絡もつかないのでは仕方がない。諦めて帰ろうかと思ってベンチから立ち上がろうかと思った時、眼の前に見たことがある人が立っていた。
「天王寺さん……」
「あら、菊地君」
眼の前に制服姿の天王寺がいる。学校で見る時と変わらずクールな出で立ちである。
「制服姿でどうしたの?部活?」
「いえ、仕事よ」
仕事と言われて頭ではてなマークが浮かんだがバイトの事だろうか。それこそ制服姿でなければいけない仕事なんて浮かばない。
「なんの仕事か分かる?」
天王寺さんは不敵な笑みを浮かべて質問してくる。今までまともに話したことなどあまり無かった気がするが、今日はやけに僕に話しかけてくるなと思いつつ、何のバイトか予想する。まず客商売では無さそうだ。制服姿で仕事をすれば身元が分かって良いことなどないだろう。それに加えていつもの無愛想具合を見ればますます無いと思える。
「う〜ん、事務仕事とかかな」
「まあ、そういった事もするけどメインの仕事じゃないわね」
事務仕事もするけどメインは別にある?正直検討もつかない。僕は両手を挙げて降参のポーズを取る。
「諦めが早いのね。正解は探偵よ……」
「探偵!?」
『7th ヒロイン』では無かった設定がまた出て来て頭痛がしそうだ。そんな特殊な仕事をしていてシナリオに全く関わってこなかったというのだろうか。ふと視線を感じたので天王寺さんを見ると少し笑っているように見える。ずっと仏頂面だったので初めて見る顔だと思った。
「フフ、困っているわね」
「それを見て嬉しそうだね。もしかして僕って嫌われてるのかな?」
「嫌いではないけど……、まあ色々な女の子に唾つけてるのはあんまり印象が良くないかな」
何故、僕がやっていることがバレているんだ。色々なヒロインの好感度上げは人の目がつく場所ではやらないようにしていたはずだ。他のヒロインには嫌われる要因になるだろうし、他の生徒からしても気持ちが良い行為ではないからだ。
「探偵なんだから、クラス内の人間関係くらいは分かるかな」
「なるほど……」
しかし、確かに色々な女の子の好感度上げを同時にするという行為は確かに褒められたものではないだろう。どうにも元がゲームだから同様にゲーム感覚でやっていたところがあるように思う。
「あっ、それよりそろそろ仕事行かなきゃ」
「あ、ああ、天王寺さんまたね……」
そういえば、天王寺さん探偵の仕事と言っているがどんな事をしているのだろうか。気になったがその内容を聞くのは無理だろう。僕は彼女が去っていく姿を見ながら僕も背を向けて家まで歩き出した。
「あれっ、おにい早くない?」
家に帰るとリビングのソファーで寝転んでいた桃がこちらを見ている。
「ああ、月村が来なくてな。連絡も取れないし」
「ええっ、朱音ちゃんがブッチとかありえる?」
「とは言われても現に連絡つかないし」
僕は自室に戻りベッドに倒れ込む。こんな事なら二度寝でもすればよかったかと考えた。ベッドで寝転んでいるうちに睡魔が襲ってきたので身を任せて昼寝をすることにした。




