4話
月村と別れて自宅へと帰ってきた。玄関で靴を脱ぐ。
「あれ、おにい、今日早くない?」
声をかけて来たのは妹の菊地桃だ。中学三年生の少女で例のごとく美少女だ。元の僕なら兎も角、菊地正人の実の妹に当たるわけなので下手なことは出来ない。いや、中学生にそんな気も起きないけど。
「この辺りで殺人事件があったろ。それで月村と一緒に帰ってきたんだよ」
「あ〜、朱音ちゃんと」
僕と幼馴染なので当然妹の桃も顔なじみだ。女子同士という事もあって昔から仲が良いらしいがこの頃は学校が離れていることもあり最近は中々会えていないようだ。
「朱音ちゃん、元気?」
「ん、ああ、元気だよ」
僕は靴紐を解きながら返事をする。妹は靴を脱いで後ろ向きになっている僕に向かって声をかけ続ける。
「それで朱音ちゃんとはキスでもしたの?」
「?いや、僕達付き合ってないし」
「ええ……、一緒に登下校してるのに……?」
別に男女が一緒に登下校したからといって付き合っていないこともあるだろう。靴を脱ぎ終えた僕は明日の事を思い出した。
「ああ、そうだ。明日、月村と一緒に買い物行くんだが桃も一緒に行くか?」
「いや、どう考えても私邪魔じゃん……」
「そんな事ないだろ……」
「ええ〜、じゃあママが一緒に行っていい?」
家の奥から母親である菊地陽子が出てきた。高校生の母親なのだからある程度歳はいっているはずだが見た目が他のヒロインと殆ど変わらないレベルだ。ヒロインではないのだがゲームのオタク達からはお母さんキャラの人気も相まってかなりのファンがいたのを思い出した。
「ママはもっと邪魔でしょ」
「ええ〜、酷い……」
僕は妹と母を放っておいて自室のある二階へと行く。後ろからうめき声が聞こえる気がするが気にせず歩く。そうして自室に行ってパソコンを立ち上げる。
「事件の事を調べなきゃな」
独り言をしながら検索サイトで調べる。割と話題になっているのかすぐニュースサイトが出てきた。クリックしていくと詳細がモニターに映し出されていく。しかし月村と話した内容と大差ないようだ。しかしこれではこの世界で何が起きているか分からない。恐らく、ゲームで写っている様子以外にも世界が広がっていてそちらで何が起きているのだろう。ゲームの範囲だけで物事が決まっていたら綻びが出るということだろうか。
「そういえば、ゲーム外の出来事なんて気にしたこともなかったな」
主人公である菊地正人の行動範囲内などたかが知れている。学校と家、その周囲くらいにしか用は無かったからだ。そんな事を考えているとスマホから通知音が鳴る。画面を見ると月村から電話の通知だった。明日の買い物についてのことだろう。僕は通話ボタンを押す。
「もしもし」
「あ、正人、今時間大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
「明日って駅前に十時で大丈夫?」
「ああ、おっけー」
「そういえば、二人きりで何処かに行くなんて久しぶりだね」
このセリフ自体は原作にもあったがこんなタイミングだっただろうか。自分の予想とは違う展開が続いているため、考えてしまう。本来ならもっと好感度が上がった状態でこういった会話が行われるはずだ。その後は数十分、世間話などをして電話を切った。
僕は天井を見つめる。
「流石に殺人事件なんて僕には関係ないだろう」
僕が口にしたその願望は全く僕の思い通りにはならなかったのである。
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