17話
「という訳でこの後の昼休憩の時に施設一通り歩きましょう」
「勝手にそんな事やって大丈夫なのかなあ」
「何言ってんの。殺人事件が起きるかもしれないのよ」
それはそうだけど、天王寺さんは本当に怖いもの無しって感じだなあ。話してて気が強いのは重々感じてはいたが。そんな事を話していると食堂にぞろぞろと生徒達が入ってくる。そして『7th ヒロイン』のメンバー達も食堂に来たみたいだ。その時、僕とぱっちり目が合ってしまう。
「あ〜、また天王寺さんと一緒にいる〜」
そう言うのは不知火だ。他のヒロイン達も不知火の後ろを歩いて僕達を睨んでいる。また揉めるのは少々面倒だ。
「皆さん、お揃いで菊地君に話しかけに来たの?」
僕は天王寺さんの言葉を聞いてギョッとする。何故いきなり煽りだしたんだ。
「な、何なの、天王寺さん」
「今、私は菊地君と話してるの。貴方達、はっきり言って邪魔なのよね」
「は、はあ?」
皆が怒っている。今にも喧嘩が始まりそうな勢いだ。ここは僕が出るしか無い。
「み、皆、ごめん!!天王寺さんとは何も無いんだ。だけど、今、僕達大事な要件があって他の人には話せない内容なんだ」
「き、菊地君、私達その要件が気になるんだけど」
どうする……。だが殺人事件を追っているだなんて皆に話すわけにはいかないだろう。僕は必死に考えるが何と説明すればいいのか分からない。
「もう良いでしょ……」
天王寺さんは僕の腕を引っ張り離れた席まで連れて行く。ヒロイン達はただ黙って立ち尽くしていた。そうして僕達は離れた席に座る。
「何であそこまで皆を責めたのさ」
「だってあの子達いたらまともな調査出来ないでしょ」
「だからって……」
「勿論、どうしようもなかったら一人で調査とかするつもりだけど……」
それは、と言いかけてでも僕は彼女みたいにミステリーが好きでも推理力がある訳でもない。役にたてるかと言われればかなり怪しい。
「まあでも似たような境遇で仲間が欲しかったのかも……」
「え……」
そうか、彼女は彼女でこの世界に飛ばされて不安なのだ。自分の事しか考えていなかった自分自身に腹が立ってきた。
「役にたてるかは分からない……、でも出来る限りの協力はする」
「ふふっ、精々頑張って」
彼女は僕に対して初めて笑ってくれた。そしてそんな事をやっていると昼食の時間になり僕達は話し合った。
そうして昼休みの時間になり外に出てきた。調査をするためだ。
「で聞きたいんだけど。男子寮どうだった?」
「どうとは?」
「え、間取りとか見ていないの?」
やばい、さっき力になるとか言ってたのに早速呆れられてしまった。
「はあ、まあ、女子寮とほぼ同じだと思うけど一応見ていきましょうか」
「はい……、てか天王寺さん男子寮に入るの?」
「みんなほぼ、食堂で休んでるかグラウンドで遊んでる人ばっかだし平気でしょ」
僕はとてもいたたまれなくなったが大人しく二人で男子寮を見て周る事にした。
「やっぱり、女子寮とほぼ変わらないわね。トイレとか洗面台くらいかしら」
既に女子寮を見ていた天王寺さん曰く、部屋数、部屋の形など殆ど変わらないらしい。そんなものなのだろうか。
「三階建てで各階、十部屋ずつ。各部屋三人ずつ入っていて扉は内鍵のみ」
「窓も当然、内鍵のみだね」
つまり、各部屋は内側にしか鍵はかけられないし開けられないという事になる。で窓にはベランダがあり隣の部屋と繋がっている。簡単なついたてはあるが隣の部屋のベランダには移動出来そうだ。
「まあ、内鍵があるし夜中どうこうは大丈夫そうだね」
「いや、菊地君、そういうのフラグだから言わないほうが良いよ」