16話
バスで何時間揺られていただろう。いつの間にか寝ていたようだ。隣の席を見ると天王寺さんが目を瞑ってスヤスヤと寝ている。何時もは気の強い女子と言った感じだが黙っているとやはり美人だ。だがこれから僕達が向かう場所は死地となる可能性もある為気は抜けない。
「よ〜し、もうすぐ着くから、降りる準備しておけよ〜」
もうバスは目的の場所に着くみたいだ。その舞台で何が起こるのかは僕達にもまだわからない。
その後、目的地へと無事着いた。バスを降りて少し歩くとそこにはグラウンドが広がっていた。後ろを振り返るとバスは元来た道を戻って行った。また僕達が帰る三日後になったら来るのだろう。グラウンドの先に古い校舎のようなものと左右にも建物がある。僕達はぞろぞろとグラウンドを横切り建物へと向かう。
「お〜し、施設の簡単な案内をするぞ」
校舎のような建物が目の前になった時、海野先生が施設の案内をすると生徒達を立ち止まらせた。
「まず中央の建物が学習塔だ。一階がエントランス、二階が食堂、三階が学習室だ。三階の学習室は四部屋あるが今回学年の人数が少ないから手前の三つの教室を使用する」
なるほど、ここで勉強や食事をとったりする場所になるのか。
「で、左右の建物がお前達が宿泊する寮になる。青い屋根が付いている方が男子寮、赤い屋根の建物が女子寮だ。男子は女子寮、女子は男子寮に行くことを禁ずる」
何人かは不満の声が上がっていたが当然の措置だろう。寮の中にまあまあ大きい浴場もあるようなので夜間は基本的に外に出るのは禁止ということらしい。どうしてもという場合は教師の許可が必要になるという。
「でこの後、寮にて元々伝えてある部屋に入って荷下ろしをした後に二階の食堂で昼食後、一時間の休憩を終えてから本日の授業を行う」
またまた生徒達から不満の声が上がるが先生はそれを無視して「解散」と号令をかけて僕達は自分の宿泊寮へと向かう。男子寮を見上げると学習塔と同じく三階建てになっているようだ。
「おい、菊地」
「冥道君……」
「この後、すぐ昼食なんだからさっさと部屋行こうぜ」
彼は冥道明、同じクラスメイトで今回男子寮で同じ部屋になった。僕は頷いて一緒に寮へと入っていく。中々年季が入っているようだ。僕は運が悪いことに三階の部屋があてがわれている。一階だったら出入りが楽だったのだが、まあ仕方がないだろう。
その後、僕達は自分の部屋まで息を切らしながら階段を登って部屋まで辿り着いた。どうやら部屋は四人入るようだ。二段ベッドが二つ置いてある。だが事前に聞いていた話だと僕達の年は人数が少ないため、殆どの部屋が三人入ることになっているようだ。
「じゃあ、僕が上で良いから、二人は下のベッドを使って」
僕は冥道君ともう一人の生徒に下を譲った。僕は7th ヒロインと距離が近いという理由で男子生徒から好かれてはいない。唯一、冥道君はそういうの気にしないみたいだが。二人は喜んでそれを受けて入れた。まあ、下のベッドの方が移動しやすいし荷物が近くに置ける分、着替えなども楽だろう。
そして僕達は荷下ろしを終わらせて、そのまま学習塔へと向かう。学習塔の二階へ階段を登る。男子寮と学生寮の階段を昇り降りするの中々キツイな。
「あ、菊地君」
「天王寺さん」
食堂で天王寺さんが一人で座っている。他の女子とは一緒に食べないのだろうか。
「いや、私がボッチって言うわけじゃないからね」
「まだ、何も言ってないけど……」
僕が思っている事を察したのか、先回りして言及される。別にそんな事聞くつもりはなかった。
「食事の後、施設を周ってみない?」
「施設を?」
「そう、もし事件が起きた時の事を考えるとやっておいたほうが良いでしょ」