14話
天王寺さんとの話し合いから数日、夏休み始まり前日になった。それから特に事件がが起こったとの知らせも無かったが捜査の進展も特に無いとのことらしい。だが天王寺さんの予想だが夏休みに行われる勉強合宿にて何か事件が起こるとの予想だ。
「はあ……」
一人で登校する事にもすっかり慣れてしまった。あんなに何時も一緒だった月村はもう隣にいないというのに。
教室に着くと、月村が殺されて陰鬱とした雰囲気もどこか薄れてきた気がする。僕はチラッと席が離れている天王寺さんを見る。相変わらずクラスでは一人で過ごしているようだ。あの後、連絡先を交換してやり取りをするようになったがクラスでは殆ど話していない。目立つのが嫌いらしい。
「ね〜、さっきから天王寺さんのこと見てない?」
急に現れた不知火が睨んでくる。僕はそんな事ないとブンブン手を振る。そんな事をしていると朝礼の時間になったのか担任の海野先生が教壇に現れた。未だに教壇を見ると月村の遺体がフラッシュバックしてしまう。
「おはよう。みんな席につけ〜」
海野先生に促されて生徒達は自分の席に着く。
「明日から夏休みに入る。皆に口酸っぱく言ってるが出掛ける時は十分注意しするように」
事件後、犯人が捕まって居ないから学校側もピリピリしているようだ。
「そして夏休み中には勉強合宿を行う。基本的には全員参加するように。あんな事があっても君たちは変わらず来年受験生になるからな」
こんな言い方をするのはどうやらあの事件の影響で強制参加にできないとの事らしい。色々煩いからね。こうして朝礼が終わり授業も何時もと変わらず何も起きず平和なひとときが過ぎた。
放課後、帰る準備をしていると前から天王寺さんがこちらに来た。
「一緒に帰りましょう」
「う、うん」
周りのヒロイン達は鬼の形相でこちらを見ているが天王寺さんの意図を組んで一緒に帰る。おそらく、勉強合宿の話だろう。
「合宿の事だけど」
学校の外に出て下校中に語りかけてくる。学校の関係者が犯人の可能性があるとの事で学校の中では事件の話はしないという約束をしていたのだ。
「何事もなければその方がいい。メタ的に考えるとこのタイミングで勉強合宿は備えるに越したことはない」
「分かってるけど犯人も、誰が狙われるかも分からないよ」
あの後も何回もやり取りをしたが今、僕達が分かっている情報では殆ど何も分かっていないというのが実情である。
「今回分かっているのは男子寮と女子寮が別れている事」
合宿所は学校の施設らしくどのような建物かは分かっている。真ん中に勉強用のホールや教室などがあるメインの建物がありその両隣に男子寮、女子寮があるとのことだ。
「男子寮を菊池君に注意して見てもらい女子寮を私が」
「それで殺人が抑止できるのかな……」
「……厳しいと思う。でも怪しい人物だけでも分かれば」
男子寮、女子寮が別れているとはいえ、真ん中のメインホールとは繋がっている。だが、基本的には別の寮に行くことは禁止されている為、お互い監視する必要がある。
「しかもスマホ、学校に預けなきゃいけないのが。あ〜もう」
「まあ、勉強合宿に集中しなさいってことだしね……」
このように勉強合宿に対する懸念が多いまま当日を迎えてしまうのだった。