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「でも中々、有益な情報無いわね……」
天王寺産はすっかり冷めきったコーヒーを飲みながら愚痴をたれている。そんな事言われても僕だって何も知らないんだから仕方がないと思うんだけど心の中で呟く。
「あまり、お役に立てなさそうで申し訳ない」
「まあ、でもこの世界の事について知れたのは大きいわね。今回の事件に関係なさそうとはいえ」
「まあ、それは置いておくとしてまた犯人は殺すのかな?」
「……、恐らくね。犯人の狙いは分からないけど」
そうなると次は誰を殺すのだろうか。もしかすると次は僕かもしれないし、眼の前にいる天王寺さんかもしれない。月村が殺され遺体は弄ばれ、そして学校しかも僕達が通うクラスに遺棄された。そこまで考えて一つのある疑問が浮かぶ。
「ちょっと待って……、月村は通り魔的な犯行じゃなくて計画的な犯行かもしれない」
「それはゲームの内容に沿ってってメタ的な考えじゃないのよね?」
天王寺さんは試すように僕を見つめてくる。僕はその期待に答えられるか分からないがごくっと唾を飲んで話し始めた。
「遺体の場所だよ」
「学校……、つまり月村さんが天星学園の生徒であることを知っていた」
「そう、犯行は恐らく土曜だから私服だったはずだ。制服でも無いのに分かるかな?」
「それは分かるわよ。多分財布に学生証を入れていたはず」
「クラスまで分からないんじゃない?」
僕達はお互いに自分の学生証を見る。確かに名前と学校名と生年月日が分かるがクラスまでは書いていない。
「なるほど、教室に置くってだけなら二階の教室、しかもピンポイントにA組に遺棄するのはおかしい……」
「まあ、乱暴なことを言うと生年月日で学年は分かるし一番手前のA組に置いたとも言えなくもないけど……」
「それよりは彼女の事を知っていた人間が犯人の可能性が高いと言ったほうがいいでしょうね」
月村を殺した犯人が僕達の近くにいるかもしれない……。浮かび上がってきた事実に僕達は恐怖する。
「やはり学校関係者が犯人か……」
彼女はポツリと呟く。考えたくはない可能性が出てきてしまった。
「学校関係者……」
「だってそうでしょ。彼女の近くにいた人なら学年は分かるだろうけどクラスまでピンポイントに覚えてる人はそう多くないと思うわよ。それ以外だと本当に身内を疑う事になる」
「身内以外となると、まずは月村のクラスを知っている人が多い学校関係者を疑うべき……か」
「そうなると、もしかするとマズイ事になるかも……」
彼女は先程より動揺しているように見える。何か嫌なことに気付いてしまったのだろうか。
「どうしたの?」
「私達、夏休み入ったら二年生の行事あるの覚えてる?」
「行事?」
夏休みに学校の行事などあっただろうかと思い返す。すると一つだけ思い浮かぶものがあった。
「勉強合宿……」
「そう。私達、二年生は夏休みに勉強合宿があるのよ……」
「そ、それが何か?」
「合宿所は山奥よ。確か近所にコンビニや民家なんかは無いはず」
「で、でもそんな孤島に行くわけじゃないんだしマズイ事になるなんて事はないでしょ……」
「そうだと良いんだけど……」
天王寺さんが危惧していた事は現実となる、いやむしろ想像していたより遥かに過酷な運命にさらされることになる。