12話
「うん。でも僕が知ってる事なんてたかが知れていると思うけど」
ようやく本題に入る事が出来る。この世界の話も重要だが殺人事件の解決が先だ。僕は椅子に座り直し話を聞く。
「じゃあ、発見されたのは一週間前。休み明け月曜日に朝教室があんな事になっていたわね。最後に会ったのはいつ?」
「え〜と、金曜の放課後に一緒に帰って以来は会ってないね」
「じゃあ、土日は会ってないのね」
何か質問の仕方が尋問みたいだなと感じる。協力してほしいと言っていたが少なからず僕も疑っているのだろうか。ただ彼女の様子を見るにただ単に情報を得ようとしているだけかもしれないが。
「うん、本来土曜日一緒に買い物に行く予定だったんだけど」
「もしかして私と会った時?」
そうだ。待ち合わせ場所で待っている時に天王寺さんに声をかけられていたんだ。結局月村はその場に来る事は無かったんだ。今を思えばあの時すでに犯人に殺されていたか連れ去られていたのだろう。そう考えると悔しくて唇を噛んでしまう。
「で、結局その時には会えなかったと」
「電話やメッセージを送っても確認している様子は無かったね」
僕は論より証拠と思いたち自分のスマホを取り出す。メッセージアプリを開きそのやり取りを見せる。
「なるほど、金曜の夜には電話でやり取りをしていて次の日には連絡が取れなくなっていたと」
「という事は僕との待ち合わせに向かう途中で襲われた?」
「まあ、そうなるのかしら。家で襲われたら家の人が気付くでしょう」
そうなると土曜の朝に襲われたという事か。しかし、こういう犯行って目立たない夜に行われるイメージだが中々大胆な犯人だ。
「う〜ん、やっぱり情報が足りないわね」
「そういえば、天王寺さん、遺体を確認していたけど何か分かった事とかあるの?」
あれだけの凄惨な事件現場を目の前にしても怖気付く所かズカズカと入って調べ物を出来ていたのだから本当に刑事に向いているのではないだろうか。
「いや、すぐ先生が来てあんまり……だけど、あの遺体殺されてから時間は経ってるように見えたけど……」
「え、そうなの?」
「血の量とか、渇き具合とかで流石に時間までは分からなかったけど。でもまあ、あの加工は教室でやったわけじゃないでしょうね」
「な、なるほど」
流石、様々な事件に関わっている訳じゃないようだ。少ない情報だけでも色々分かるらしい。
「まあ、理由としては単純に時間がかかるし面倒だから教室でやるにはリスクが多い。知ってると思うけど毎日夜には警備員が教室を見てまわっているはず」
「じゃあ、運び込まれたのは月曜の深夜から朝の間とかかな?何のために?」
「遺体を皆に見せたいからでしょうね」
「え」
僕は思わず唾を飲み込んでしまう。どういう事なのだろうか。
「そうとしか考えられない。土日に遺体を置いてもそれこそ警備員か教師にしか目に止まらないし」
「な、何で普通遺体は隠したいって思うものなんじゃないの……」
「見せたい理由までは分からないけど、あんな遺体の置き方はそうとしか思えない」
「どういう事?」
僕には全く及びもつかない世界観のせいで混乱している。先程から置いてあるコーヒーに手を出せず冷えてしまっている。
「わざわざ首を切って、教壇に立つように加工までして置いてるのよ。趣味の悪い芸術品か何かだと思ってるのかもしれない」
僕はこの時、立ち向かうべき犯人は予想を超える怪物なのかもしれないと感じていた。