11話
「私達がそれぞれ別のゲームの主人公として転生しているってことなのかしら……」
僕達は二人してテーブルの上で頭を抱えている。温かいコーヒーが来たが手を付けられていない。僕はしばらくした後、三ヶ月前に転生して『7th ヒロイン』達と交流を深めながら生活していたことなど転生してからの事を細かく説明した。
「なるほどね。手当たり次第可愛い女の子に手を出しているクズだと思っていたけどそんな理由が……」
と天王寺さんから正直すぎる感想を言われて少しへこむ。まあ、傍から見たらそうなのだろう。ただ僕もそう見えるであろうことは分かっていたので放課後など人が少ない時間を利用していたのだが探偵である天王寺さんからはバレバレだったことを教えられる。
「じゃあ、私の事も教えないとフェアじゃないわね」
「そ、そうだね。そちらの話も気になるかな」
「まあ、事件の話がしたいしね。手短に話す。私も三ヶ月前に転生しているの」
「うん」
「で私はタイトルにもなってる『黒雷邸殺人事件』をクリアしているの」
「え、もうクリアしてるの?」
この流れなら今もゲームのストーリー上の話なのかと思っていたらどうやら当てが外れたみたいだ。
「まあミステリーだから数日でゲームの内容は終わったわよ。ただ犯人もトリックも分かってるから雰囲気を味わう以外は面白くなかったけど」
まあ、それはそうだろう。その世界観にいるのは面白いだろうがゲームの内容を踏襲していれば事件解決など容易だろう。
「でもゲームクリアしても元の世界に戻る事は無かった」
「それが今も天王寺さんの中の人が残っている理由……」
『黒雷邸殺人事件』をクリアしてもこの世界に居続けているという事は元の世界に戻ることは出来ないということなのか。それとも別の理由があるのかは判明していないということらしい。ちなみにその事件を解決に導いた功績によって現在も探偵として活動し警察に協力しているらしい。
「まあ、一介の女子高生が殺人事件の捜査に協力できるなんてまさにゲームって感じよね」
「なるほど。でも今回の事件についてはゲームの内容からは外れているんだよね」
「そう。しかも最悪なケースは警察ではなく、主人公である私が解決しなきゃいけないかもしれないってこと」
「どういう事?」
僕は意味がわからず首を傾げる。警察ではダメというのはどういう事なのだろうか。
「普通に考えれば現代の警察はかなり有能よ。技術が発達してるから体液一粒で身元が分かったりするし、常識的に考えれば警察は犯人に辿り着く。でもゲームが終わっても私が主人公って事が重要なのか私が関わった途端に」
「主人公である天王寺さんに解かせる為に警察では捕まえられない……」
「あくまで可能性だけど……、今までの経験から考えると」
天王寺さんは元々推理が好きなようで警察に変わって犯人を特定する事があったそうだ。ただそれは主人公補正という形で現れてしまっているかもしれないとのこと。
「それじゃあ、犯人やトリックも分からないまま天王寺さんが事件を解かなければいけない……」
「そう、それで今回の事件の被害者に一番近い貴方に話を聞こうと思ったんだけど事件以外の事でこんな収穫があるとはね……」
「それだったら僕も手伝えないかな?」
「えっ」
「このままだと僕だって不安だし事件は早く終わって欲しいんだ」
僕がそう告げると彼女はまた考え込む。どうしようか悩んでいるのか、それと僕の事を疑っているのかもしれない。
「……、分かった。同じ境遇の人間同士協力してちょうだい」
こうして僕は晴れて天王寺さんの助手となることが決定した。シャーロックホームズの隣にいたワトソン博士のように上手くいくことはないだろうが自分の出来る事はしたい。
「それじゃあ事件の話をしましょうか」
ようやく話の本題に入ることになった。




