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女神サキ2

 サキと会話をしている限り、前の世界の記憶を取り戻すのは至難の業のようだった。


「やっぱり記憶を取り戻すのは難しいか。俺はどこから来たんだろうって思ってたんだが」


 俺がため息をつくとサキは提案してくる。


「そんなに記憶が大事なら自分で探せばいいじゃない。最近あんた、他力本願っていうか、気力が感じられないわよ」

「あの旅以来、無気力っぽくてな」

「あんたは最初に出会った頃から無気力そうな感じだったもんね」


「うるせぇ、生まれつきだよ。そうだ、無気力が治る魔法とかないのかよ」

「そんな便利な魔法あるわけないでしょ。いや、あるかも」

「あるのかよ。ちなみにどんな魔法なんだ?」

「魔法ではないけど。恋愛してみるとか。なんてね」


 レンアイ?ああ、恋愛ね。ハハハ。乾いた笑いが出る。

 急にしおらしくなり、俺の反応を伺うようになったサキを俺は冷めた目で見ていた。


 俺が求めているのはそういうのじゃないんだよ。

 こうなんか、手っ取り早く効果が得られるようなやつを出して欲しい。


「そんな目で見ないで。無気力が移るから。でもほら、よく言うじゃない。恋愛していると気力が湧くとかなんとか」

「参考程度にはするよ。ただ、アイドルの真似事して信者から金巻きあげてる奴が、恋愛がどうのこうのってほざいてたことは覚えといてやるよ」

「あんたはこの知識を一生生かす機会はありません。今気づきましたー、無気力ダガーボーイ君。一生取るに足らないクエストやっててくださいー」


 俺たちは無言でお互いを睨み合っていたが、しばらくその状態が続くとサキが折れた。


「こんなことをしても仕方ないでしょ。私に八つ当たりしても記憶はとり戻せないんだし」

「正直、お前なら出来るかと思って期待してたんだよ」


 サキほど魔法が使いこなせるのであれば、記憶を取り戻す魔法を知っていてもおかしくはない。

 そう思ったのだが物事というのは上手く運ばないらしい。


「ふーん」

 

 サキは顔を覗き込み、俺の表情を読み取ろうとしているみたいだった。


「何だよ、そんなにジロジロ見て」

「心境の変化でもあったのかと思って。昔は記憶を戻したいなんて言わなかったでしょ?」

「いつも通り自堕落に生活しているだけで特に変化は無いけどな」

「嘘だぁ。今さら昔の記憶を取り戻したいって言いだすのは何かあるでしょう」


 訝し気に目と鼻の先まで顔を近づけて覗き込んでこようとするサキを、俺は軽く押しのける。

 こいつは昔から距離感が近い。


「別にどうってことないんだよ。暇だから記憶を取り戻す方法を探してるだけだ。願わくば、俺が前の世界で超絶モテモテだったら嬉しいなと思ってるだけで」

「んなわけないでしょ。あんたがどの世界に行こうが、無気力で鈍感なのは変わらないと思うよ?」


 無気力だけでなく鈍感ね。

 心当たりはないが散々な言われようだった。

 

 サキの小言は一旦無視して、ちょっと考えてみる。

 心境の変化には心当たりがあった。


「ずっと俺たち"欠けの転移パーティ"とか言われてるだろ」

「そう言ってくる奴らも確かにいるわね」

「そいつらが気に食わないんだよ」

「仕方ないんじゃない?どうせ私らより弱い奴が言ってるだけで、僻みでしかないでしょ」


 そう言うとサキは周りを見渡した。

 教会内にはサキの広報活動とやらが終わって人はまばらである。


 今回分かったことはサキほど魔法が使えて顔が広い奴でも、記憶を取り戻すのは難しいということだ。

 それが分かっただけでも良しとするか。

 今日は色々あって疲れてるし退散するとしよう。


「まぁそんな落ち込まないで。この世界で生きていれば何かしらヒントはあるかもしれないじゃない」


 「そうかもな」と適当に相槌を打つと、俺は帰り支度をして椅子から立ち上がった。


「あ、そうだ。今度、気分転換に街のレストランに行きましょうよ。新しくできたお店なの」

「お、時間があったらそこに行くか」

「楽しみにしとくわ」

「でも、お前と食事してたら悪目立ちするんだよな」


 小言を言うとサキの細くなめらかな指で軽く頬をつねられる。

 ただでさえ教会内でアイドル扱いされているのに、公の場で目立ったらそれこそ大事になるだろう。


「目立たない恰好で行くから大丈夫、ね」

「分かった分かった、行ってやるから、それやめろ」

「やった、絶対ね」


 俺の頬から指を離すと、サキは浮かれているのか笑みを浮かべた。


「でもあんた、人といるときくらいその顔やめなさいよ。最近冷めたような顔多いわよ」

 どんな顔してるんだよ、と俺は手で顔を覆った。


「大丈夫、あんたは私の言った通りにすればすべてうまくいくの。今までだってそうだったでしょ?」


サキは顔の距離を近づけると、耳元でそう囁いた。

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