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女神サキ1


 俺は先ほどの一件で疲れてしまった体を引きずりながら、教会へと向かっていた。  

 教会はスターティアの郊外にある丘の上、街中を一望できる場所に建てられている。


 この世界では女神が全てを創造したという神話が信じられており、その考えはミスラ教と呼ばれている。

 ミスラ教の普及拠点として教会が各所に点在していた。


 丘へ続く登り道を歩くと、教会が見えてくる。段々と教会に近づくと何やら中が騒がしかった。

 入口の扉を開け中に入ると、そこでは従来の教会の姿とはかけ離れた、異様な光景が繰り広げられていた。


「女神!女神!フゥ!フゥ!」

「はーい青春大好き!サキちゃんだよ~」

「イエーイ!」

「みんなーありがとうー!」

「サキちゃんも生きててありがとうー!」


 1人の少女がアイドル風の衣装を着て、ライブのようなことをしている。

 それを取り囲むようにして老若男女のシスターや神父、信者たちが声を張り上げ、盛り上がっていた。


 いつからこの街の教会は白昼堂々とアイドルの真似事をするようになったのだろうか。

 そんな教会の行く末を憂いていると、周りの信者から女神と称えられている白い髪の少女と目が合った。


 その少女の名前はサキ。

 サキはこの世界でも珍しい真っ白な髪と見る者を魅了する端正な顔立ちをしていた。

 その風貌は教会によると、大昔にこの世界を作ったとされる女神に似ていて、いつのまにか教会を中心に女神の生まれ変わりと崇められ始めた。


 信者の前で歌って踊っている女神ことサキは俺の姿に気づくと「みんな、ありがとうー、また来てねー」と笑顔を振りまいて、こちらのほうに向かってくる。


 どうやらアイドルの真似事は終わったようだ。

 サキを囲んでいた観衆が続々と教会を後にしている。


「ハジメよく来てくれたわね。わざわざ来てくれたお礼に私特製のサイン書いてあげるわ」

「いや、俺にファンサービスとかいらないから。頼むから普通にしてくれ」


 俺はサキのアイドル風の立ち振る舞いに頭を抱えそうになる。

 昔、一緒に旅をしていた時はこんなことをする奴じゃなかったのに。どうしてこんな奴に変わってしまったのだろうか。


「ここでの私はこれが普通なの。こっちは真剣にやってるんだから馬鹿にしないで」

「馬鹿にはしてないけど、お前がこんな事するとは思わなかったよ」

「ふん、副業でアイドルやってお金稼いで何が悪いの」


「別に悪くはないけど、あんまり副業でお金稼ぐためにアイドルやってますとか大声で言わない方が良いと思う」

「ハジメには分からないと思うけど、これはれっきとした教会の広報活動よ。私は楽しい、見てる人も楽しい、教会はお布施が増える。みんなwinwinよ」

「女神っていつからビジネスライクでシビアなアイドルになったんだ?」


 サキは俺の小言を無視する。


「ところであんたは今日何してたの?」

「クエストで薬草を取ってたら、ゴブリンの群れがいたんで、ついでに追っ払ってた」

「大変そうね。仮にも元魔女狩りのパーティがそんなことで生計たててるとはね。可哀想に」

サキは深刻そうな顔で哀れみの視線を向けてきた。

「お前にだけは言われたくねぇ」


 サキとの会話に確実に体力を蝕まれた俺は、近くの椅子に座ると本題を投げかける。


「それでなんだよ、ここに呼び出した用件っていうのは」

「あー、それはね」

わざとらしく間を置くと、ニヤリとサキは口元を緩ませた。


「頼まれた件の報告をしたくてね」

「ああ、あれか」

「あんたが今欲しいものが昔の記憶とはね。女々しいところもあるのね」

「それは俺の勝手だろうよ。なんか面白そうなことが起こる予感がして良いじゃないか」


「いまいちその感覚がわからないのよね。この世界にいて楽しいんだったら、元いた世界の記憶が無くても不都合なんてないじゃない」

「昔はそう思ってたんだが、記憶が無いとなんだか居心地が悪いんだ。俺はなんでここにいるんだろう?とか考えちゃうんだよ」


 俺たちはこの世界に転移してたった1か月程度で魔女を倒し、世界に平和をもたらした。

 その大半はこいつの能力のおかげである。


 サキの能力はチート級で、治癒、状態異常、攻撃、転移など魔力が必要な能力は一通り備わっていた。

 俺がサキに頼んでいるのは転移する前の記憶を取り戻す魔法はないのか、という件だった。


「結論から言うと、元の世界の記憶を取り戻す魔法は無かったわ。残念だったわね」

「昔の記憶が戻るかと思って楽しみにしてきたのに。女神でもさすがに記憶が戻る魔法は使えないのかよ」

「魔法も万能ではないのよ。まーそもそも?万能だったらアイドル活動なんてやらずにお金を生成する魔法使ってお金持ちになれるもんね」

「おいおい。心の声漏れてるぞ、自称アイドルさん」


 サキは腕を組んで唇を尖らせた。


「というか転移前の記憶を取り戻すなんて無理に決まってるじゃない。そもそもどこからあんたたちが転移してきたか分からないし何もヒントが無いのよ。それで女神の力に頼ろうったって甘いわよ」


 サキは腹が立つことに「チッチッチ」と指を横に振った。










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