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パーティで眠りの森へ2

 地下6階層に着くと、今までのとはうって変わり、巨大な飛ぶ虫たちが出現した。


 この魔物の名前はフライングセンチピードといって簡単に言ってしまえば空飛ぶムカデのような魔物だ。攻撃力はさほどないが俊敏性が高く、集団で襲ってくるのでダメージの蓄積が大きくなってしまう。

 気づかないうちに体力を削られてしまう面倒な魔物である。

 足が何本も生えているうえに飛んでくるのでビジュアル的には気分が良くない。


「「ひいいいいい!」」


 サキとアリスが同時に悲鳴をあげながら一緒に逃げている。

 逃げ出したい気持ちは分かるが、どうにかしてセンチピードを撃ち落とさないと、じわじわと体力が削られ面倒だ。


 「おいお前ら、頼むから魔法でこいつら撃ち落としてくれ」


 ユウジが盾でセンチピードの突進を防ぎながら、後方にいるサキたちを振り返った。


「だって、だって気持ち悪いじゃない、こいつらああ!」


 女神の威厳はどこへやら、適当な攻撃魔法をセンチピードに対して放っているが、その魔法は掠りもせず、このままだと日が暮れてしまいそうだった。


 それをよそに、俺は淡々とダガーで飛来してくるセンチピード一匹一匹丁寧に撃ち落とす。しかし、これでも時間がかなり消費されてしまう。

 炎系統の魔法でも使うことが出来れば、こいつらは一網打尽なはずだ。


「アリス、ちょっと頼みがある」


 俺は逃げ回るアリスの腕を軽く掴み、なんとか動きを止めた。


「うへっ」


 アリスはダメージこそ負ってないが、顔面蒼白になっており本当に虫が嫌いのようだ。


「ハ、ハジメさん、あれは無理です。虫は気持ちが悪くて」

「落ち着けアリス、ヘルフレイムディザスターって魔法覚えてるか?」

「も、もちろんです。炎属性の魔法ですよね。私あの魔法好きです」

「そうだ。俺がお前を守るから、詠唱してそれを使ってほしい」

「は、はい、頼みましたよ。ハジメさん」


 俺はアリスの前に陣取り、センチピードが向かってこないか警戒した。群れの中の1匹が耳障りな音を出しながら向かってきたので切り落とす。


「生きとし生けるものたちよ、業火の到来を聞き給え、ヘルフレイムディザスター」


 アリスが魔法を唱え始めると杖の先からダンジョンの大きさを超えるのではないかと思われる量の炎が拡散してダンジョン内に舞い散った。

 俺たちは口を覆ってアリスの後ろ側に逃げると、魔法が撃ち終わるまで待った。

 センチピードは瞬く間に焼かれ灰となり、地面に散っていった。


「いやーハジメさん、ありがとうございます。久しぶりにこの魔法使いましたよ」


 アリスは大型魔法をダンジョンで使えたのが嬉しいのか、満面の笑みだった。

 センチピードたちは全て焼かれて消滅したが、俺たちも煤や灰だらけで白っぽくなっていた。


「アリスの大型魔法、久しぶりにダンジョンで見たけど半端じゃねぇな」


 ユウジは頭から灰を被ったような見た目で興奮している。俺たちはお互いに灰を被った姿をしているので笑ってしまった。


「ちなみにあの魔法、私も使えるけどね」


 みんながアリスの魔法を褒めたたえるので、サキが不満そうに唇を尖らせながら対抗してきた。


「お前がフルパワーであの魔法使ったらダンジョンが壊れそうだな」

「あー、それ名案ね。下に向かって撃ったら最下層まで直通でいけるんじゃないかしら?」

「俺のかわいいダンジョンを壊すのはやめてくれ」

「ダンジョン攻略が好きすぎて、ダンジョンそのものに感情移入している人初めて見た・・・」


 サキは呆れた顔をこちらに向ける。

 俺にとっては久しぶりのダンジョン攻略だからこんな気持ちになるんだよ。分かってくれ。


 10階層まで続く階層ではセンチピード以外にも、ゴブリンやスライムが出てきたが、さほど強い魔物は出てこなかった。

 強いて不安要素を言えば、久しぶりにダンジョン攻略をしたので煤と汗まみれになって、意外と疲れがたまっているくらいだ。


「早く帰ってお風呂に入りたいです」


 アリスは長い前髪の間から疲れた顔をのぞかせている。久しぶりのダンジョンは体に堪えているようだった。


「サキ、ここに風呂を作る魔法とかないのか?」

 俺は名案だと思い、真剣な顔でサキに問いかける。


「あんたってたまに真顔でおかしいこと言うわよね」

 サキは呆れた顔で俺の事を見る。


「いや、女神だったら魔法でダンジョンに風呂を生成することぐらい出来るんじゃないかなって思って」

「私はそんな便利屋じゃないんです。大体、ダンジョンでお風呂に入ることが出来たとして、順番に入るのを他の人が見てるのかしら?頭大丈夫?」


 サキのその発言にカチンときた俺はすぐさま言った。


「は?みんなで一緒に入るに決まってるだろ?俺とお前で一緒に入ってもいいけどな!」

「盛り上がってるところ申し訳ないけど、その発言はキモすぎる」


 俺に向かって汚いものを見るような顔をするサキ。

 ユウジは俺の肩を叩くと親指をあげ大爆笑し、アリスはなるべく会話に入らないように視線をそらしていた。

 そんなどうでもいいことを話していたら、俺たちは地下10階層の扉の前まで来た。


「どうやら5階層ずつ扉があるっぽいな」

 ユウジが武器の点検をしながら言った。


「ここらへんでハジメが大好きな、お目当ての魔法石が出そうね」

 サキの嫌味ったらしい発言を聞きながら、俺たちは10階層の扉を開けた。

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