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ユウジとの勝負

 ボロボロになっている俺をちらりと見て片手剣を取り出すユウジ。

 どうやら俺はアリスだけでなくユウジの相手もしないといけないらしい。


「えっと、分かりました。ちょっと遠くで見てますね」

 アリスは少し離れると、ちょこんと体育座りをして遠くから観戦するようだ。


「ここにきてお前と決闘するなんてな」

「お前がアリスの魔法でコテンパンにやられようが、俺は全力で行くからな」

「それで勝ってうれしいのか?」

 俺が心底嫌がる素振りを見せると、ユウジは苦笑する。


 一瞬の間があった後に、互いにダガーと片手剣を構えた。

 俺は体を低くし交戦する準備をしたが、ユウジには覇気が感じられない。


「どうした?真剣にやらないのか?」


 俺がそう言うとユウジはわざらしく剣を大きく振ってきたので、軽々と避けた。

 かなり生ぬるい攻撃だ。


「お前最近たるんでるからな。アリスに負けて気づいただろ?夜にやらしい店に行ってる場合じゃないんだよ」


 ユウジはアリスに聞こえないように小声でぼやく。


「もういいよ、その話は。散々しただろ」

「お前、アリスに魔法教えてもらえばいいじゃねぇか」

「なんでだよ」


 そう言いながら俺はダガーを素早くユウジの胸元に突き出す。

 その攻撃は盾で弾かれた。


「なんでもだよ。お前いつか魔法を覚えたいとか言ってただろ?」

 ユウジは片手剣を下ろして問いかけた。


「それは言ったかもしれないけど」

 言葉を交わし終えるとお互いに立ち止まり、勝負は自然と中断する。


「おーい、アリス、ハジメが話があるってよ」

 距離を取り座って様子を見ていたアリスにユウジは呼びかけた。


「なんでしょうか?ハジメさん」

「えーと、あのさ、良かったら魔法教えてくれよ。できればダンジョン攻略に使えそうな魔法で頼む」

 

 魔法自体には興味があるので、アリスが教えてくれるんだったら教わりたい気持ちはある。

 ユウジに促されて不本意な形ではあるが、魔法を覚えるきっかけになれば何かの役に立つかもしれない。


「私は大歓迎ですが、ユウジさんとのスキルの練習はもういいんですか?」

「ああ、戦ってみたけど俺の圧勝だったよ。勝負にならなかったよこいつは」

「おい、どさくさに紛れて嘘つくな」


 アリスの前で見栄を張ってユウジに肩を押される。


「あれほど頑なに魔法を使おうとしなかったハジメさんが魔法に興味を持ってるなんて私嬉しいです!」


 アリスは俺の手を取ってぶんぶんと上下に振りまわしている。


「できればダンジョン攻略に使えそうな魔法とかを教えて欲しいんだけど」

「いやー嬉しいですねぇ。最初はやはり攻撃魔法でしょうか?支援魔法も捨てがたいですけど、いや攻撃魔法だろうなー、攻撃魔法がおすすめだなー」


 魔法の話となったら全くこちらの話を聞こうとしない。

 こうなったらアリスの話は長い。


「というか俺、盗賊職なんだが魔法使えるのか?」

「一日のうち12時間くらい魔導書を読みつつ、残り12時間を費やし実践で魔力を鍛えればいけます」


 アリスから当然のように提案される内容に俺は眩暈を覚えた。


「意外とお前スパルタだな。俺は絶対その生活無理だぞ」

「その生活を1週間ぐらい続けてもらえば魔法が使えますよ?魔法のためにはそれくらいできますよね?」


 魔法を語るアリスは完全に目が据わっている。

 そしてアリスは何やら詠唱すると俺の体を魔法で持ち上げた。

 これから何をさせられるんだろう。


「あのちょっと、今から魔法の練習するんだったら遠慮したいんだけど。またの機会にとかにできないか?」

「そもそも魔法とは杖を補助道具として、人が持っている魔力を外部に放出する行為なんです。それを構造的に学ぶために、これから杖を売っている店に行こうと思うのですが、そのまえにこの世界における魔力と補助道具の歴史について・・・」


「おい、俺はそんなの聞いてないぞ。ユウジ、見てないで助けろよ」


 俺はアリスの魔法で持ち上げられながら、泣く泣くユウジと手を振って別れた。

 もしかして教えを請う人間を間違えたかもしれない。

 そう思いながらもアリスの長話に最後まで付き合わされた。

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