九十三の道 フォレストノーム
十階層のフロアボスを倒した俺は、デカイ羊やその子分である羊達が消えた後に残った魔石やドロップアイテムを、サゲン達にも手伝わせて手早く集めた。
白と黒が混じり合った様な魔石や、ドロップアイテムとして落ちていた羊毛を集め、最後にはフロアボスを倒した報酬として出て来た銀色の宝箱を開けた。
中に羊毛の掛け布団が入っていたのには笑ったが、素直にありがてぇ。コイツはぜひとも使わせて貰うとしよう。
そして、俺達は十一階層から十四階層までを駆け抜ける。
もはや何者かの手が入っているのは明らかだ。緑色の光に侵食されたモンスター共は、集中してケイネスを狙って来てやがるし、俺が仲間をどれだけ本気で殴り飛ばしても気にも止めやしねぇ。
ただ、ケイネスを殺すのではなく『捕らえよう』としている一点から、この一連の流れを作ってやがるのがカースス伯爵の手の者である事だけは疑い無ぇ。どうやってるのかはともかくとしてな。
俺達は絶えず襲って来るモンスターを退けながら進み続け、ようやく一息つけたのは十四階層の途中で見つけたトラップ部屋、『モンスターハウス』と呼ばれる多数のモンスターが現れる部屋をクリアした時だった。
このモンスターハウスと言う罠は、部屋に閉じ込められた上で多数のモンスターに襲われる、と言った罠なのだが、中のモンスターを全滅させてしまえば部屋を出るまでは安全地帯として活用できる場所だった。
「ふぅ、モンスターハウスってのは使えるな。今みてぇな状況だと、何とも有り難いトラップだぜ」
「普通はただ厄介なトラップなんですがね。まぁ、助かりましたよ。俺もサゲン様も、限界が近かったですからね」
ラベクが言いながらサゲンの方をチラリと見ると、その視線の先ではサゲンが荒く息を吐きながら転がっており、その横ではケイネスもまた肩で荒く息を吐いていた。
ケイネスはラベクはもちろん、サゲンと比べても体力面で見劣りする。にも関わらず、ここまで文句も言わずに俺達について来る姿勢は、素直に賞賛するぜ。大した根性だ。
なにも無い殺伐とした部屋だが、何者かが待つ十五階層で十分な休憩が取れるとも思えなかった俺達は、ここで少し長めに休んでいく事にした。
話題となるのは、必然的にも十五階層にいるダンジョンボスの話である。
「このダンジョンのボスは精霊だったよな? 確か、『フォレストノーム』とか言う」
「そうだよ。アタシも何度か会ってるけど、人間みたいな姿をした森の精霊で、アタシは『フォムちゃん』って呼んでた」
森の精霊『フォレストノーム』。子供の様な姿の精霊で、土や木を操る能力を持つモンスターだそうだ。
ダンジョンの外にもいるらしいが、目撃例は極端に少なく、伝説の存在と言ってもいい様な希少性らしい。
「フォムちゃん? 随分親しげだな、まるで友達みてぇな呼び方だ」
「友達だもん。ダンジョンボスはダンジョンマスターやその後継者は襲わないから、アタシがフォムちゃんに襲われる事は無いんだ。でも今回は、リューマ達は襲われるかも知れない」
「…………まぁ、そうだな」
今の状況だ。ケイネスがそのフォムちゃんとやらに襲われない保証なんか無ぇが、ケイネスはそれを信じたくないんだろう。俺だってその気持ちは解らねぇでもないから、わざわざ突っ込んだりしねぇけどな。
「フォムちゃんは、土や木で物とか分身を作るのが得意でね。父さんがダンジョンマスターとしてダンジョンの調整をしている時に、よく一緒に遊んでいたんだよ。ブランコを作ってくれたりアスレチックを作ってくれたり、あとは分身達も交えて追いかけっこをしたりして遊んでいたよ」
「そりゃ芸達者な奴だな」
物を作るのも分身を作るのも自在にこなすのか。敵としたら中々に厄介だな。
しかしアレだな。そのフォムちゃんってのと遊んだ話をこうも嬉しそうに話されると、戦い難いな。まぁ、ケイネスも俺達がそいつと戦う事になるだろう事は覚悟している様だから大丈夫だと思うが。
俺達はしばらく休んだ後、十四階層の残りを駆け抜けて、十五階層へと到達した。
「…………やっぱり様子がおかしいな」
「兄貴、ボス部屋の扉が…………」
「ああ、見えてるよ」
農場ダンジョン、十五階層のダンジョンボスの部屋は、扉が半分壊れる形で開いていた。ダンジョンにそれほど詳しくねぇ俺でも解る。異常事態が起きているってのがな。
そして俺達が壊れた扉の前まで行くと、中に五人の男女がいた。
俺が言うのもなんだが、人相の悪い奴らだ。ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた奴もいれば、後ろではトウモロコシを食ってる大男もいた。
一番前にいる赤い髪の剣士がリーダーか? その仲間は、浅黒い肌に短い黒髪の弓使いと、ずっとトウモロコシを食っている金棒を担いだ大男、踊り子みたいな服の女は杖を持ってるから魔法使いか? 最後の一人だけはちょっと毛色が違って、緑色の眼と髪が特徴的な、白いローブを着た気弱そうな少女だ。
そしてソイツらの後に、宙に浮かぶ棘だらけの小さな檻に閉じ込められた、植物の髪を生やした少年が見えた。
「フォムちゃん!!」
『…………ァ…………ウ…………』
ケイネスが放った悲鳴の様な呼びかけに、グッタリとした様子で力なくフォレストノームが答えた。
いくら相手がモンスターとは言え、自分より弱い奴を笑っていたぶる奴はクソだ。俺は拳を強く握りしめて、足を前に踏み出した。
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