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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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八十七の道 褒める事が大切

 農場ダンジョンの二階層が野菜畑なら、三階層は果樹園だった。


 野菜に関しては日本で俺が見ていたのと大差ねぇ。キャベツだのキュウリだのナスだのが普通にある。見た事がねぇヤツでも、よくよく考えれば「そういや、あったかも知れねぇな」ってのが多い。


 フィンネルやらバターナッツやら、見た事はねぇが聞き覚えはある気がする物があるのだ。ひょっとしたら知らずに食ってるかも知れねぇ野菜達だ。海外に行くとよくある話だな。


 果樹に関しても見慣れたヤツはやはりある。だが、野菜と違って地球には絶対に無かっただろってヤツも多い。


 なぜこんな違いがあるのか、逆になんでこうも同じ物もあるのか、なんて疑問には思うけどな。深く考えると頭痛が起きる事は、そのまま受け入れた方が良いのを俺は知っている。あるモンは仕方ねぇからな。ここには有るってだけの話だ。



「この階層は果樹園なのか。ここも、近づくと果物をくれるのか?」


「それがね、この果樹達『フルーツ・ツリーズ』は気難しくて、熟し過ぎて落ちそうになってる果物しかくれないんだよね。だから不用意に近づくと枝で叩かれるよ」


「そうなのか?」


「うん。父さんと母さんがいた時には、普通に食べ頃の果物が採れてたんだけど、アタシ達だとね。熟し過ぎているから売る訳にもいかなくて。まぁ、そもそも売る程は貰えないんだけどね」


「ふぅん」


「父さんと母さんは戦える人達だったから、果樹達にも認められていたのかな。アタシも、もっと強くならないと…………」


「強くか…………」



 ここの果樹達は、攻撃って程ではないが振り払う位はするから、それに耐えられる位には強くないと認められない、とか? うーーむ。まぁ物は試しだな、どれ。


 俺は一番近い洋梨…………とはちょっと違うピンク色の果物が生る木に近づいてみた。



『…………!!』


「おっと!」



 俺の伸ばした手を振り払うかの様に振り回された枝を躱して摘んでみる。



『!!!!』


「あぁ、悪い悪い。別に危害は加えねぇよ。良い枝ぶりだったからよ、ちょっと良く見たかっただけだ。実も良い色ツヤしてんな?」


『………………………(スッ)』



 振り回される枝を躱しながら、掴んでいた枝を離して詫びると、おとなしくなった果樹がおもむろに実を一つ取って手渡して来た。枝と葉っぱで実を取るたぁ器用なもんだぜ。



「お、くれるのか? ありがとよ」



 貰った果物に齧りついてみると、シャリシャリする桃みたいな味だった。美味いなコレ。



「うん。美味いな、好きな味だ」


『…………(もじもじ)。…………(ススッ)』


「おう、そんなにくれるのか。ありがとうよ。これも美味そうだな、後で頂くぜ!」



 俺が五つほど貰った実を抱えて戻ると、ケイネスはずいぶんと驚いた顔をしていた。



「一本の果樹からそんなに実を貰うなんて…………、やっぱり強さ…………!」


「強さか。いや、なんか違うんだよなぁ…………。サゲン、ちょっと耳貸せ」


「なんですか、兄貴?」



 俺は貰った実をマジックバッグに仕舞い込んでサゲンを呼ぶと、ある事を耳打ちした。



「…………え、そんな事をするんですか?」


「いいからやってみろ」



 俺に言われて渋々近くの果樹に向かったサゲンは、枝が飛んで来る前に口を開いた。



「綺麗な葉をしているな。空の青さに良く映えて、とても美しいく見えるよ。こぼれそうな程に生ってる実は、色っぽく見えるね」


『…………(テレテレ)。…………(ススッ)』



 果樹に向かって歯の浮く様なセリフを吐いたサゲンは、果樹から渡された果物を抱えて戻って来た。どれもちょうど食べ頃の、質の良い果物だった。



「……………………えぇ?」


「植物ってのは人間の言葉を理解していて、褒めると成長が早くなったり綺麗な花を咲かせる…………ってのは聞いた事はあったが、ここの果樹達はまんまそれが当て嵌まるらしいな」


「そ、それってつまり…………」


「ここの果樹達と仲良くしたければ、褒める事が大切って事だ。ホレ、試しにやってみろよ」



 俺に促され、果樹の一つに向かって行ったケイネスは、果樹に向かって二言三言交わした後、両手に果物を抱えて戻って来た。



「ほ、本当に褒めたら果物をくれた…………!」


「な? やっぱりそうだぜ。植物相手は褒める事が大事って事だな」



 果樹の側に立って考えてみると解るな。そりゃ何も言わずに実に手を伸ばして来る奴がいたら、振り払うだろ。逆に植物でも人でも、褒めて貰えりゃ嬉しいもんだ。お近づきの印として実の一つもくれるってもんだぜ。



「ま、まさかこんな方法だったなんて…………。父さんは果物を貰うコツはいつか教えてくれるって言ってたけど、こう言う事だったの…………?」


「そうだろうな。しかし良かったじゃねぇか、これで果物を売る目も見えて来ただろ」


「う、うん。これならウチの子達でも安全に果物を貰えるかも知れない。でも、父さんも母さんも、何でこんな簡単な方法を教えておいてくれなかったんだろ…………」


「…………何でだろうな? 案外、果樹に口説く様なセリフを言ってる所を、娘に見られたくなかっただけだったりしてな」



 口にはしねぇがよ、さっきのサゲンは中々に痛ぇ状態だったぜ。あそこまで歯の浮くセリフを並べるとは思わなかった。流石は貴族だ、口説く言葉に慣れてやがるぜ。


 いやむしろ、果樹の褒め方はサゲンに習うのが良いかも知れねぇな。

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