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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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八十一の道 約束の魔導書

 公園にある領立図書館は、まだ開館時間前と言う事もあり外に人の姿は無かった。だが、この時間帯には既に職員は出勤して働いているのを雑談の中で聞いて知っていた俺は、構わず扉を開けて中に入った。


 取り敢えずオルーガかウルミを探すか取り次いで貰おうと考えていたが、上手い具合に受付にオルーガか座って仕事をしていたのはラッキーだった。



「すまないがまだ開館時間ではない。もうしばらく時間を置いてから…………って、リューマか。久し振りだな。こんな時間から何の用だ? また写本にでも来たのか?」


「おはようオルーガ。朝からご苦労だな。なに、ちょいとウルミと約束してた物があったんでな。届けに来ただけだ。ウルミは資料室か?」


「約束? …………まさかアレか?」



 オルーガは訝しげな顔をしてから、ボソッと何かを呟いて席を立った。



「資料室には今、他の職員もいるからウルミ君は私が呼んで来よう。…………その約束の件だが、私も小耳に挟んでいる。立ち会ってもいいか?」


「うん? 別に隠してる訳でもねぇから構わねぇが、立ち会うような事か?」


「リューマの持って来た案件だからな」


「随分な言いようだな」


「フンッ。普通は写本のついでに亡霊と戦ったりしないだろう。お前は何を引き起こすか予想がつかんと言うのが、私の評価だ」



 それを言われるとグゥの音も出ねぇな。俺が「なら好きにしろ」と言うと、オルーガはウルミを呼びに行き、その後には俺も連れて応接室へと移動した。



「ちょっと待ってろ」



 応接室に入ると、オルーガは部屋の鍵を閉めて棚から、球体を持ち上げている様なトロフィーみたいな物を持ち出してテーブルの上に置いた。



「何だそれ?」


「遮音結界を張る魔道具だ。要は、外に声が漏れなくなる。まぁ、念の為だな」



 何をそこまでビビッているのか解らねぇが、好きにしろと言った手前、俺は口を挟まなかった。


 ただ、ウルミだけがこれから何が起きるのかとオドオドしていた。



「よし、良いぞ」


「なんか改められるとやりずれぇが、まぁいいや。ウルミ、約束の物が手に入ったから届けに来たぜ。ほらよ、回復魔法の魔導書だ」


「…………ふぇ?」



 俺がマジックバッグから取り出して渡したそれを、ウルミはどこか呆けた様な顔で受け取り、何度か魔導書と俺の顔を交互に見てから、魔導書の表紙に視線を落とし…………悲鳴を上げた。



「ふええぇぇっ!? か、回復魔法の魔導書!? し、しかも鍵付き!? ひ、ひぃぃ〜〜〜〜!! ちゅ、中級って書いてるぅぅ〜〜〜〜!?」


「うおっ!? お、おい、どうした急に?」


「ウム。やはり私は正しかった」



 ウルミは何故か怖がる様に、しかし決して手放す事はせずに、腕をめいっぱい伸ばして魔導書を遠ざけ、しかし顔を背けながらも魔導書をチラチラ見ると言う、奇怪な様子を見せていた。



「ひいいぃぃっ!? ほ、本物ぉぉ…………!!」


「本物に決まってるだろう。詳しくは話せねぇが、ちゃんとダンジョンで見つけたもんだぜ。正式に俺の物になったからよ、遠慮なく受け取ってくれや」


「いやいやいやいやいや!! リューマさん!! こんなの受け取れませんって!! 鍵付きの回復魔法の魔導書、それも中級魔法の物なんてどんな値段が付くか想像も出来ない物ですよ!? こんなの、王様に献上する様な代物です!!」


「王様には別なもんを献上する事になってるから気にするな。俺はお前に約束したし、実際こうして手に入ったんだ。そいつはお前のもんだよ。ホラ、使ってしまえよ。そうすりゃ他の奴らも手が出せなくなるんだろ?」


「そ、それは…………そうだけどぉ…………!!」


「ウルミ君。リューマの言う通りだ。ここで使ってしまいなさい」



 俺達のやりとりを、どこか呆れた様子で見ていたオルーガが、ここで口を挟んで来た。



「オ、オルーガさんまで…………!?」


「短い付き合いだが、リューマが引くような奴じゃない事は解るだろ。どう足掻いても、それはもう君の物になった」


「ふえぇぇ…………!」


「リューマは解っていないが、ハッキリ言ってそれは私達平民の身には余る代物だ。存在が知られれば、奪いに来る者は多い。使わずに所持だけすると言う選択肢は無い。どうしても気が引けるのなら、私がエルザレスと渡りをつけるから献上してしまいなさい。…………だが、これは君にとっては生涯において一度だけの幸運だ。それをしたら、後悔はずっと付き纏うだろう」


「うぅ〜〜…………! で、でもそれは、使ったとしても後悔しませんかぁ? わ、私でも解ります。こんなの使ったと知れたら、貴族が私を捕らえに来るって…………!!」


「そうなるだろうな。…………ただしそれは、知られたならばだ。魔導書を外にさえ出さなければ、君が中級の回復魔法を使えると知るのは私達だけだ。隠し通すのも、不可能ではない」


「ず、ずっと隠すのなら、使わなくても…………」


「でも、覚えたいんだろう? 回復魔法を」



 その一言で、ウルミは俯いていた顔を上げた。ウルミが使うか迷っている魔導書は、いつの間にか自身の胸に抱き締められており、俺には答えは既に出ている様に見えた。



「実際、いざと言う時に中級の回復魔法を使える者が居るのは心強い。君が使った後で、私にも読ませて欲しいと言う打算もある。だから私としては、ぜひとも君に使って欲しい」


「……………………」


「なぁウルミよぅ。お前、回復魔法覚えたいんだろ? 俺にそう言って聞かせたじゃねぇか」


「…………覚え…………たいです」


「そいつはもうお前にやったもんだから、どうしようとお前の自由だ。ただ俺に一つだけ言わせて貰えるならよ、…………後悔は少ねぇ方がいいぜ」



 俺達は、魔導書を抱き締めたウルミが決断するのを待ち、やがてウルミは大きく深呼吸を繰り返してから、魔導書の鍵を開けたのだった。

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