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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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七十五の道 鬼がいる

「「「「……………………(ゴクリ)」」」」



 それは誰かが唾を飲み込んだ音なのか、それとも自分が立てた音なのか、それすらもう解らない程の濃密な緊張感。


 ケーシン達はボス部屋の壁際に留まって、部屋の中央から自分達がいる所まで響いて来る拳がぶつかる音を聞いていた。


 部屋の中央では、ケーシン達どころか冒険者ギルドで働くショウですら知らない強力なオーガの亜種と、それすらも圧倒する龍馬が拳を打ち合っていた。


 それはケーシン達の目には、まさに二体の鬼による殴り合いに見えた。



「おいおい、何だよあのオーガ。拳をぶつけた衝撃波がここまで届くぞ? いや、それと打ち合っているリューマも大概だけどさ。もうリューマもオーガだろアレ」


「うん。まるでオーガ同士の殴り合いを見てるみたい…………」


「言ってやるなマルザ、ネル。…………でも確かに、あのオーガを力で押しているリューマがとんでもないのは同意するけどな。俺達じゃ、どっちの拳だろうと掠っただけで即死しそうだ」



 オーガの力は凄まじく、ケーシン達は全く勝てる気がしない程だった。それどころか、前に立ったなら一撃で全滅させられるのが目に浮かんだ。


 だが、龍馬の拳はそれ以上だった。何せ、オーガの拳を喰らった龍馬は顔を仰け反らせはするが、笑みを浮かべたまま、直ぐに反撃に入る。


 それに比べてオーガの方は、龍馬の拳を喰らう度に身を縮ませて顔を歪め、喉の奥から湧き上がった血を吐き捨てていた。


 龍馬とオーガ、どちらのダメージの方がより深刻なのかは、誰の目から見ても明らかだった。



「オーガの方は本気で戦っているけど、リューマの方は躱せる攻撃もわざと受けている。血も出ているが、たぶん大してダメージにはなっていないだろう。…………少しあのオーガに同情したくなる」


「ああ、ケーシン。俺も同じ事を考えてた。強ぇのは知ってたが、まだ想像以上だったな、リューマの強さは…………」



 しばらく殴り合いが続き、この戦いも終わるだろうと思われた時、ついにその場で踏ん張っていたオーガが殴り飛ばされた。


 少し息をつきながらオーガを見下ろす龍馬に対して、オーガは荒い息で肩を上下に揺らしながらも腕で口から吐いた血反吐を拭い、獰猛に笑って立ち上がった。


 まだヤル気なのか。ケーシン達だけでなく、龍馬もオーガの折れない闘争心に尊敬の念を抱いた。



『グゥ…………ウウゥ…………、グゴオォォーーーーッ!!』



 雄叫びを上げるオーガの全身から強烈で濃密な魔力が溢れ、さらにその全身から噴き出した血が体を覆い尽くした。



「な、何だよアレ!?」


「なんて……濃密な魔力…………!!」


「ち、血の鎧か!? 魔力と血液を混ぜて、血の鎧を作りやがったのか!!」


「あ、あれは! あのモンスターの正体が解りました!! あれは厄災指定モンスター『ブラッドオーガ』です!!」


「「「厄災指定!?」」」



 厄災指定モンスターとは、国軍の討伐任務やスタンピードの対策において、倒せなかった、もしくは倒すまでに千人を超える死者を出したモンスターに付けられる災害認定である。


 厄災指定モンスターを見かけたら、必ずギルドか騎士団へと報告を上げる事が義務付けられているモンスターの事だ。



「へぇ、それがお前さんの奥の手か? 良いじゃねぇか、強さがグンッと上がったな」


『グルゥゥ…………!!』


「ハッ! 屈辱か? それを出す前に俺を倒したかったか? …………傲慢な奴だな。まぁ、お前みたいにテメェの拳に絶対の信を置いてる奴は、嫌いじゃねぇがよ」


『グゴッ、ゴブッ!!』



 血の鎧を纏い構えを取ったブラッドオーガが、大量の血を吐き捨てた。それを見て、龍馬も構えを取る。



「そうかよ。その姿は、そう長く持たねぇんだな。いいぜ、テメェは俺の拳で葬ってやる。…………来いやぁ!!」


『グゴオォォッ!!』



 龍馬とブラッドオーガの最後の戦い。龍馬はこれまでとは違い、ブラッドオーガの攻撃をわざと受ける様な真似はせず、繰り出す攻撃も、ブラッドオーガの急所を的確に撃ち抜くものへと変化した。


 ブラッドオーガが振るう拳を避けざまに、龍馬はカウンターでブラッドオーガの顎を砕き、ブラッドオーガの蹴りを踏みつけて地面に落としては、つんのめったブラッドオーガの頭に頭突きを喰らわせた。


 全力を持って向かって来る者には全力を持って返す。かつてあった、騎士や冒険者との戦いではカスリ傷しか負わなかったブラッドオーガの血の鎧も、龍馬の拳や蹴りの前では砕かれ、剥がれていった。


 だがそれでも、ブラッドオーガは強者だった。肉が裂け、骨が粉砕されても立ち上がり、その命が潰えるまで龍馬に喰らいつき、その獰猛な顔に笑顔さえ浮かべて、死んでいった。



「…………良い戦いだったぜ。言葉が通じるなら、お前の名前を知りたかった程によ…………」



 地面に溶ける様に消えていったブラッドオーガに向けて、龍馬は手を合わせて祈った。そしてブラッドオーガが遺した大きな赤黒い魔石からは、光の粒子が出て来て、龍馬へと吸い込まれていった。



 《血闘鬼ブラッドオーガ》


 それが、龍馬が得た新たな《モン紋》の名前だ。血の鎧に身を包み吠えるブラッドオーガの和柄の絵は力強くリューマの身に宿った。



「そうか、お前は『ブラッドオーガ』って鬼だったのか。…………フッ、血闘鬼か。お前に相応しい二つ名じゃねぇか」



 緑のダンジョン・Dランクのダンジョンボスとの戦いは終わり、フロアの真ん中には金色の宝箱が二つ出現していた。

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