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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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七十四の道 『朽木断ち』

 緑のダンジョン・Dランク十五階層。つまりはダンジョンボスのいるフロアだ。俺達はそのボス部屋の扉の前で小休止を取っていた。


 不味いブロック菓子みたいな携帯食料を水で流し込みながら、俺達はダンジョンボス戦での立ち回りを話し合っていた。…………とはいえ、直ぐに終わったけどな。



「じゃあ打ち合わせ通り、ケーシン達は壁際で防御に専念しててくれ」


「ああ。済まないな、情けないがDランクのダンジョンボスとなると、俺達には荷が重過ぎる」


「絶対にランク上のボスも居るだろうしな。二体ともリューマに任せちまう事になるけど、俺達は身を守る事に専念させて貰う」



 聞いての通り、ここのダンジョンボスは俺が一人で戦う。このダンジョンの敵に関してはマルザが《索敵》のスキルを覚えた事もあって普通に戦えてはいたが、それはこのダンジョンのモンスターが真正面から戦う事を得意としていなかったのが大きい様だ。


 俺はそんな事もねぇと思うが、ケーシンは仲間の命を預かっているだけあって慎重だ。こんな命の危険が間近にある様なトコなら、そんぐらいの方が良いんだろう。



「取り敢えず、ケーシン達は自分達の身と蜂の巣を頼む。せっかくここまで無傷で運んで来たんだからよ、無事に持って帰りてぇじゃねぇか。ここのボスは、俺がチャチャっと倒すからよ」


「リューマ、油断はダメだよ? リューマなら大丈夫だとは思うけど、気をつけて」


「ギルドの資料では、ここのダンジョンボスは『ネーベルウッド』と言う、水と木の二属性を持つ大きな木のモンスターです。枝葉や花に実は全てが魔法で出来ていて、それらを武器に襲って来るそうです!」


「おう! 任せておけ!」



 俺は今回、コイツらの命を背負っている。どんな奴が出て来るか解らねぇが、そのネーベルウッドとやらの他にも居るんだろう。扉越しにも、威圧感が伝わって来るからな。


 俺は上着とシャツを脱ぎ、《モン紋》の《疾風のスケルトン『イエモリ』》を発現させた。



「おぉ…………、それが新しいスキルか。ここに来るまでにも一度使ってたけど、その背中の絵は初めて見るな。剣を構えるスケルトンか…………?」


「相変わらず見慣れないけど、凄い絵だよなそれ。今回のもカッコいいぜ!」


「あんがとよ。イエモリって名前の奴だ。ショウ、俺の上着とシャツを預かっといてくれ」


「そ、それは良いですけど…………。脱ぐ必要はあったんですか?」


「俺はこの方が気合が入るんだよ。さぁ、行くぞ!」



 ダンジョンボスの部屋の扉が開いていくと、中の様子が見えた。広い空間の中で奥にそびえる青と緑に輝く大木と、その側に佇む赤黒い肌の鬼。


 やっぱ二体いるよな。それにあの鬼。ありゃ結構強ぇな。ケーシン達を護りながら戦うなら、あの木はいねぇ方が良いな。


 俺は左手にあるイエモリの刀を握り締め、右手を柄に添えた。



「…………俺のやりてぇ事、解るよなイエモリ。サポート頼むぜ」


『承知!!』



 扉が俺が通れる程度に空いた瞬間、俺は地面を蹴り前へと飛んだ! 姿勢を低く小さくし、イエモリの風によって進む方向の空気を斬り裂き、疾風の如く走る。


 そして大木が撃ち出す魔法も、赤黒い鬼の反応も無視して大木の間近に迫ると、刀を抜きながら大木の横を通り過ぎた!



「フジミヤ流抜刀術『朽木断ち』!!」



 駆け抜けたスピードを落として歩きながら、刀を鞘に納めると、ネーベルウッドの太い幹に線が走り、そこから漏れ出した魔力を噴き出しながら横にズレて倒れていく。



「…………悪いな。お前に構ってる余裕が無さそうなんでな。先に始末させて貰ったぜ」



 淡い光を放ちながらゆっくり消えて行く大木を尻目に、俺は鬼の前に立った。


 いやぁ、鬼だな。これこそがまさに鬼だ。


 筋骨隆々とした大柄な体躯は赤黒い肌に覆われ、腕や脛、胸は黒い剛毛に覆われている。


 黒髪のボサボサ頭は額の脇から漆黒の二本の角が生えており、肘や膝にも同じ様な黒い角が見える。


 厳つい顔に鋭い牙、真っ黒な眼の中には赤い瞳が浮かんでいて、その眼光は鋭い。


 武器など持たず、鎧も肩と腰を僅かに覆うのみ。腕を組んで俺を睨んでいるのは、自分の力に絶対の自信があるからだろうな。



「いいねぇ。血が滾るぜ」



 俺は《モン紋》のスキルを消し、鬼を見上げた。


 俺と鬼の視線はぶつかり合い、互いに拳を固めて振り被ると、同時にお互いの顔面を強打した!



『グゴッ!?』


「ハッハァッ!! なかなか良い気概してるじゃねぇか!! 打ち合いか? 乗ってやるよ!!」



 俺の拳は鬼を打ち据え、鬼の拳は俺の額に弾かれた。



「一打目は俺の勝ちだな! その程度の拳で割れる程、ヤワな石頭してねぇよ! もっと気合入れて来い!!」


『グゥ…………! ゴアァッ!!』



 鬼の二撃目が俺の頬に突き刺さり、俺は体を仰け反らせた後、反動をつけた拳を鬼の脇腹に突き刺した!



『グゴボォッ!?』


「フッ、まともに拳を食らったな。やるじゃねぇか!」



 鬼の一撃が俺の赤い壁を打ち破って俺に届き、俺ほ口の中に僅かに、滲んだ血を唾と共に吐き捨てた。


 脇腹を押さえて膝をついていた鬼も、鋭い眼光にさらに怒気を漲らせ、立ち上がった。


 そして鬼は、俺の前で地面を踏み締めて仁王立ちすると、両手の拳を固めて俺へと突き出して来た。



「ハハッ! 場所が変わっても種族が違っても、こういう作法は不思議と似通るもんだな! 力比べ、殴り合いだな。いいぜ、受けてやるよ!」



 俺は鬼の前で地面を踏み締め、両拳を鬼の拳に突き合わせた。

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