七十三の道 変わった生態
「ヤベェなこれ。倒した後の魔石の回収とか全然考えてなかったぜ。って言うかよ、戦ってる最中も何度か魔石に足取られそうになったからな。ビー玉バラ撒いたのと変わんねぇよ、こんなの」
全てのミストアーベが居なくなり、床一面にはやや青み掛かったビー玉みたいな魔石が大量に転がっていた。
ミストアーベ自体が脆いから倒しやすかったし巣に近づく俺を危険と判断したのか、俺を圧殺しようと大量に俺の回りに集まって来た。まぁ問題なく手ぬぐいで対処出来たが、足元が不安定なのはちょいと困ったぜ。
「ケーシン、お前らは大丈夫だったか?」
「ああ、こっちは問題ない。ミストアーベのほとんどはリューマの方に行ったし、マルザの『ガストスピア』とネルの風魔法が優秀でな」
「リューマから貰った魔導書で私の魔法も魔力も随分増えたからね。やれる事が多くなったよ」
「そうか。無事なら良いんだ。…………じゃあ、いっちょ気合入れて魔石拾いをするか。ミストアーベの巣はその後だな」
「魔石は小さいですけど水属性ですからね。これだけあればかなりの金額になりますよ!」
「よっしゃ! かき集めるぞ!!」
俺達は手分けをして魔石を拾って歩いた。時折魔石じゃないドロップアイテムも落ちてるが、ミストアーベの羽も針も、小さ過ぎて見逃しそうになる。
「と言うかよ、この羽だの針だのは集める必要があるのか? 何に使うんだこれ」
「僕も使い道は知りませんけど、ギルドに持ち込まれた物は集めておいて、錬金ギルドとか治癒院とかに送られてましたね。ですのでポーションとか魔道具に使われるんじゃないですかね?」
「錬金ギルドなんてもんがあるのか。錬金術ってあれだろ? 金とか作るヤツだ。それくらいは知ってるぜ。まぁ使い道があるんなら集めるぜ」
そうして集める事しばらく。取り敢えず目に付く魔石とドロップアイテムは全部拾った。見逃しもあるかも知れねぇがそれはしょうがねぇ。後に大物が控えてるからな、こんだけ集めれば十分だ。
「よし、じゃあ残るはこのデケェ巣だな」
部屋の奥、鍾乳石や苔に囲まれる様にデカイ蜂の巣があった。
しかしデケェな。膝を抱えりゃあ、俺でも中にスッポリ入れそうな程デケェぜ。壁から外すのは訳ねぇが、どうやって持ち帰るかの方が問題だなこりゃ。
「なぁリューマ、これどうやって持ち帰るんだ? どう見てもマジックバッグには入らねぇぞ、コレ」
「いやよマルザ、俺も今それを考えてたんだけどよ。どうすっかねぇ、俺が背負って帰るかと思ってたんだがよ、ホラ、巣を固定してる糸使えば背負えなくもねぇだろ? ただ、ボスとの戦いじゃあ絶対に邪魔になるからな」
「ああ、それなら俺が背負うよ。さっきの戦いじゃあ、俺は盾を構えてただけだしな。このくらいなら背負えるからさ」
「そりゃ助かるぜケーシン。じゃあ、ケーシンが背負える様に慎重に糸を外さねぇとな!」
「あ、それなら先にハチミツを採りましょう。こぼしたりしたら勿体ないですから」
そう言いながらナイフを出して巣に近づくショウを、ネルが止めた。
「待ってショウ君! 私達、まだ女王蜂を倒してないよ。多分、巣の中にいるんでしょ?」
ネルの言葉を聞いて、俺は確かに失念していたなと反省した。巣の中に気配を感じねぇからもう何も居ないと思い込んでいたが、そりゃ蜂の巣だもんな、当然ながら女王蜂がいるだろう。
気配を感じねぇのは、気取られねぇ様に潜伏してるのかも知れねぇ。ヤベェな、油断してたぜ。
そう思って俺は前に出たのだが、ショウは自信満々に中には何もいないと答えた。
「女王蜂は中にはいませんよ。調べた時に、ミストアーベは結構面白い生態をしていたので覚えているんです。リューマさん、この巣の上の方を見れませんか?」
「上を見て来りゃいいのか? ちょっと待ってろ」
俺は周囲と天井の鍾乳石を確認すると、壁際まで走って三角飛びの要領で天井まで上がり、鍾乳石を掴んで渡り、蜂の巣の上まで辿った。
上から見てもデカイ蜂の巣だ。色こそ水色で見慣れない感じだが、それを除けばスズメバチの巣によく似ている。
だが、ショウが見せたかったのは巣その物ではないだろう。何かあるとすれば、巣の上か。
俺は蜂の巣の上を目を凝らして見てみた。するとちょうど真ん中に、何かがくっついているのが見えた。なんだアレ? …………ムッ! ミストアーベの上半身か? それが巣の上にくっついてやがる!
ショウが見せたかった物はこれだろうと確信した俺は、掴んでいた鍾乳石から手を離して地面に着地した。
「見て来たぜ。ミストアーベの上半身が巣にくっついてやがったが、見せたかったのはアレだろ?」
「はい、そうです。そしてその上半身と言うのが女王蜂です。ミストアーベは、女王蜂そのものが巣に変異する特殊なハチなんです」
ほう、そりゃ面白ぇな。女王蜂が蜂の巣になっちまうなんて、地球には居なかったぜ。フッ、なるほどな。それで「女王蜂は中には居ない」か。
安全が確認された所で、ショウがミストアーベの蜂の巣を調べて、慎重にナイフを入れて壁の一部を開いた。
「えっと、資料だと確かこの辺りに…………! ありました! これがミストアーベのハチミツです!」
「どれどれ。…………ん? こりゃ、固まってんのか?」
ショウがキレイに剥がした壁の内側に、巣の穴にギッシリと詰まった琥珀色のハチミツが飴の様に固まっていた。
試しに一本抜いてみたが、小指程度の長さのハチミツがキレイに取れた。
「これ本当にハチミツ…………なんだよな?」
「ミストアーベはこんな風に固形にしてハチミツを保存するんです。水属性の魔力で溶けるので、瓶に入れてから溶かして液体のハチミツにするみたいですよ。あ、そのままハチミツ飴としても食べられます。かなり甘くて美味しいらしいです」
「そりゃ甘いだろうよ、まんまハチミツの塊なんだからよ」
形だけ見ればベッコウ飴みてぇだな。しかし、これ一本はちょいと多いぜ。
俺は細長いハチミツを二つに折って、小さい方を自分の口に放り込み、もう片方はショウの口に押し込んだ。…………うぅむ。確かに美味いが、俺には甘過ぎる。
「…………美味しいですね」
「いいな。俺達も食ってみようぜ」
「そうだな」
「うん。食べよう!」
ケーシン達は一人一本ずつ口に入れて、その表情を蕩けさせた。
その後、俺達は取り出せるだけのハチミツをマジックバッグにまずは収納。
そして、デカ過ぎてマジックバッグに入らない蜂の巣自体は、糸を慎重に外して、蜂の巣を背負ったケーシンの体に巻きつけて固定した。これで蜂の巣ごと持ち帰れるぜ。
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