七十の道 原動力は何であれ
十一階層から先は、これまでとはガラッと変わって洞窟になった。苔が壁にビッシリと生えた『苔むした洞窟』。それが十一階層からの名前だ。
壁には一面の苔だが、天井に僅かだけで地面には無い。苔で足が滑ることは無さそうだが、天井からは鍾乳石がぶら下がってるし、湿気は多そうだな。
「…………なぁ、俺の気のせいかも知れねぇがよ。あの鍾乳石、光ってねぇか?」
「確かにな。でもダンジョンってのは明かりが確保されてる事も多いから、その一つなんじゃないか?」
「あれ持ち帰れたら便利そうだよな? ダンジョンの一部だから無理なのは解るんだけどよ」
「あーー、いいかもね。でも、ずっと明るいのも困るんじゃない?」
天井の鍾乳石が光ってるのは確からしいが、ケーシン達も見るのは初めてみてぇだな。となると、頼りはショウだな。
「ショウは何か知ってるか?」
「はい。あれは『発光石』って言う鉱石を含んだ鍾乳石ですね。発光石は自然界には存在しない鉱石で、魔力に反応して光るって言う、ダンジョンからだけ採れる石です。ダンジョンでは、採掘場を見つけるか宝箱から手に入ります」
「採掘場? ダンジョンに掘れる場所があるのか?」
「はい。…………と言っても、僕も調べて今回初めて知ったのですが。このダンジョンだと、十二階層に二箇所あるみたいです。あと、この階層からは、設置してある宝箱に極稀に銀が交じります」
「へぇ、その採掘場は見てみてぇな。あと宝箱か。そういや、ダンジョンに設置してあるってヤツはまだ見た事ねぇな。ケーシンは見た事あるんだよな? あの爺さんの遺産が入ってたのと同じ感じか?」
「ああ。村の近くにあったダンジョンで見た事がある。木箱だけはな。近いのはボスを倒した時に出る宝箱だな。ただし、ダンジョンに設置してあるヤツは、本当に役に立たない物も出て来るからな。その辺の石なんてのまであるぞ」
「石かよ。まぁ、モンスターに投げるくらいは出来そうだがな」
なるほど。石なんかが出てくるんじゃ、わざわざ開けに行く必要もねぇな。道理で探しに行かねぇはずだ。
「ん? おいケーシン。今そこで何か動かなかったか?」
「なんだマルザ? いや、別に何も…………」
「ケーシン! 伏せろ!!」
マルザの言葉にケーシンがしゃがみ込み、その頭上をマルザの槍が払う。
『ギイィッ!?』
マルザの槍は壁際スレスレを掠り、悲鳴と共に何かが地面に落ちた。胴体を半分にされてもまだ動いているそれは、全身を苔に覆われた巨大ムカデだった。
「お見事。…………で、なんだこのデカイムカデは? やたら苔が生えてるけど、擬態か?」
「これ、『ムスゴビード』ですね。資料に、全身に苔の生えた大きなムカデだって書いてありましたから、間違い無いでしょう。胴体を真っ二つにしただけでは死にませんので、完全に殺すには頭を潰すと良いようです」
「だってよ、マルザ」
「リューマ。お前、気づいてて黙ってただろ。危なくケーシンが攻撃される所だった」
「マルザも問題なく気づいていたからな。それに、俺からだとケーシンの後を攻撃する事になるから、ケーシンでムカデを潰す事になったぞ?」
「それは勘弁してくれ」
マルザの様にケーシンに声を掛けてしゃがませる方法もあったが、俺の蹴りのスピードと威力だとケーシンを巻き込んだ可能性が高ぇ。それなら、ケーシンで潰した方が安全だったろう。…………もし自分がそれをやられたらと考えると最悪だけどな。
巨大ムカデはマルザが槍の石突で頭を潰して倒した。やや緑掛かった魔石だから、風属性だろうか? なんか若干、緑が深い気もするが…………。
「ムスゴビードは木属性です。この『苔むした洞窟』には、他にも『ポイズンアント』って言うモンスターもいて、それも木属性ですね」
「ショウ君。出て来るのはその二種類だけなの?」
「いえ、他にも『フロストバグ』って言う氷属性の光る虫と、『ミストアーベ』って言う水属性のハチも居ます。色は薄いですが、全てのモンスターが属性付きの魔石なので、かなり稼げる場所です。その代わり、危険も大きいですが」
へぇ、危険はあるけど稼げるダンジョンか。良いじゃないか。
「フッ、ならマルザは頑張った方がいいな。その『ガストスピア』の金も、ここで賄えるんじゃないか?」
「おっ! 確かにそうだな! よーーし! ここで稼いで、この『ガストスピア』を正式に俺の物にしてやるぜ!」
そう言って周囲に配慮した範囲で器用に『ガストスピア』を回すマルザは、とてもやる気に溢れていた。
フッ、ならここはマルザに前面に立って貰うとするか。ショウによると、あの『ガストスピア』は銀箱から出て来た物としては破格の性能でかなり値が張るらしいからな。チラッと予想金額を聞いていたマルザが、「足りねぇじゃん…………」と呟いていたから、持ち金だけじゃ足りなかったんだろうしな。
そんな訳で、マルザを先頭にケーシン、ショウ、ネル、そして殿の俺と言う編成でダンジョンを進んで行く。
マルザは欲望全開でモンスターを探して仕留めて行ったのだが、この洞窟のモンスターは擬態がやたらと上手く、見つけるのが大変な場所だった。
それでもマルザは気合を入れ、アンテナを張り巡らせる。その精度はマジで凄まじかった。俺でも、気配には気づいたが擬態している場所の特定に苦心するようなモンスターでも見つけ出して倒していくのだ。
その集中力を神も見ていたのか、《索敵》のスキルまで授かり、ケーシン達も気合を入れてモンスターの姿を探し始めた。
原動力が欲望でも努力は努力か。俺も少しばかり、マルザの姿勢に感銘を受けたぜ。
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