五十九の道 倒れた者達
「おい貴様、その手を…………」
「警告するぜ」
「なに? …………うっ!?」
剣に手を掛け、俺にチンピラの解放でも促そうとした軍服の男の言葉を俺は遮り、その二人に向けて殺気を叩きつけた。
「ガキ共がいるこの場で、その物騒なもんを抜いたら、俺はもう容赦しねぇ。…………どういう意味か解るよな?」
「「ぐぬぅ…………!?」」
俺の殺気を込めた圧に押され数歩だが後退りをした軍服二人とは別に、先に距離を取っていたチンピラ達が動きを見せた。俺と軍服達が睨み合ってる間にケイネスと子供達を人質にしようとしたのか、回り込む様な仕草をしたのだ。
「見えてるぞテメェら!!」
「「ひいぃっ!?」」
俺はチンピラ達に対して既に気絶している掴まえた男を投げ捨てる。投げた男は狙い通りチンピラ達の目の前に転がったのだが、チンピラ達は男を心配するでも回収するでもなく、ただ後退って大きく距離を取った。捨てた男の、普段の人望が見えるな。
投げ捨てた男の人望の無さを笑った俺に隙を見たのか、軍服二人が剣を抜いて向かって来る。
「抜きやがったな?」
「うるさい! 死ね!!」
一人は袈裟懸けに、一人は脇から剣をついて来る。複数人で一人を殺す為の戦術を見て、俺はコイツらが人を殺す訓練を受けている事を確信し、振り下ろされる剣と脇から突いて来る剣先をそれぞれ指で摘んで止めた。
「何だと!? う、動かん!?」
「ぐっ!? バケモノめ!!」
「…………なんか最近よく言われる気がするなぁ、その言葉をよ!」
俺は一気に手を捻り上げ二本の剣を折ると、二人の腹に拳と爪先をメリ込ませた!
「「ガハァッ!?」」
「「ひぃっ!?」」
軍服二人が崩れ落ち、それを見ていたチンピラ達が悲鳴を上げて逃げようとしたのを、俺は瞬時に動いて引き摺り倒した。
「おいおい、仲間を見捨てて逃げる気か? いくら悪党でもそれはダメだろ。少し寝てろ」
「「がっ!?」」
倒した二人の頭を掴んでぶつけ合い、気を失って倒れた二人をそのままに、俺はケイネスと子供達の所に戻った。
ケイネスも子供達もしばらくは呆けていたが、俺が近づく事に気づいた子供達は、ぎゅうぎゅうに詰めてケイネスの影に隠れてしまった。
「あぁ、怖がられちまったか。俺は子供を傷つけたりしねぇんだけどな…………」
「ゴ、ゴメン。アタシが代わりに謝るよ。で、でも無理ないと思うよ? リューマさんは、強すぎるから…………」
ケイネスの影から俺を覗き見ては目が合うと顔を引っ込める子供達に、どうしたものかと途方に暮れていると、サゲンとラベクがクリスを連れてやって来た。
「お姉ちゃん!!」
「クリス!! あぁ良かった。無事だったのね!」
クリスに駆け寄って抱きしめるケイネス。その後には子供達も続き、周囲からは建物の影に隠れて見てた子供達も駆け寄って来ていた。
子供達の感動の再会をジャマするのも悪ぃから、俺はコッチを片付けるか。
俺はサゲンとラベクに声をかけ、ロープを持って来る様に言った。そしてちょうどその時、襲って来た奴らの後に倒れていた三人が目を覚ました。
「…………いってぇ。おい、お前ら無事か?」
「ああ、何とかな…………。クッソ、何だったんだアイツらは…………?」
「…………え? いや、って言うか、何だこの状況は…………?」
起きた三人は、無事を喜び合う牧場の子供達、倒れているチンピラと軍服、そして最後に立っている俺を見て、…………悲鳴を上げた。
「レ、レレ、レンゴク=リューマだぁーーっ!?」
「「ぎゃあぁぁーーーーっ!?」」
「おいちょっと待て。俺のツラ見て悲鳴上げるってのはどういう了見だ?」
足腰をガクガクさせてヘタリ込んだ三人を見下ろしていると、サゲンとラベクがロープを持って戻って来た。
「兄貴! 叫び声が聞こえましたけど、何かありましたか!?」
「ん? お前ら! なんでここに…………!」
「「「サゲン様! ラベク!!」」」
「…………何だお前ら、知り合いか?」
「「「「「はっ!?」」」」」
何だかサゲン達が三人を知っているようだったから「知り合いか?」と聞いたんだが、その瞬間五人の目が信じられない物を見るかの様に俺へと集中した。
…………何なんだ、一体?
◇
「…………あぁ、お前らサゲンの取り巻きだった奴らか」
「…………ほ、本気で忘れて…………」
最初から倒れていた三人を目の前にの地面に座らせて、一人椅子に座る俺は足を組直した。ちなみにサゲンとラベクは、チンピラと軍服の五人を縛り上げているので不在である。
で、この三人だが、コイツらはギルドでの決闘騒ぎの時にサゲンの取り巻きにいた奴らだった。
そうか、どうも俺はクソな奴が記憶に残らねぇんだよな。悪ぃクセだよな、コレ。直そうとも思うんだけどよ、毎回「覚える必要あるか?」で止まっちまうんだよ。
「俺が言うのも何だが、お前ら頑張ってんだな」
「「「あ、あざす」」」
あの決闘騒ぎのあと、パンツ一枚で逃げた奴らは三つのパターンに分かれたそうだ。
心が折れて冒険者を引退した者。最低限の装備を買って冒険者を続けている者。ギルドに売られた装備を買い戻し、冒険者を続けている者。その三パターンだ。
目の前に座る奴らは二番目で、ギルドに売られた装備の事は諦めて最低限の装備を買い、頑張っている奴らだ。
ちなみに、三番目のギルドから装備を買い戻した者ってのは、ラベクの友人でもあるベッタとか言う奴一人だけだったりする。
何にしても腐らずに身を立て直し、こうして牧場の護衛依頼を受けてるコイツらは悪くねぇ。まぁ、実力不足で護衛依頼には躓いているが。
「お前ら名前は?」
「え? あ、はい。イロッパです」
「…………ニホベです」
「ドチリです」
「そうか覚えとく。お前達、ギルドに今回の事を報告して来い。牧場を襲って来た奴らを捕まえたってな。手柄はお前らにやる」
「えっ! いやだって、俺達は伸されただけで何も…………」
「お前達が少しでもアイツらを足止めしたからクリスは逃げられて、俺が駆けつける事が出来た。そして結果は全員が無事だった。…………十分だ。胸張って報告して来い」
「「「…………兄貴」」」
「テメェらに兄貴言われる謂れはねぇよ! とっとと行って来い!!」
「「「へい!!」」」
まるで子分みてぇな返事をして走っていく三人を見送って、俺はやれやれと首を横に振った。
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