五十七の道 フェルマ牧場
ドラドの街の南東部、そこに目当ての牧場はある。農場ダンジョンは更にその東側に位置していて、ダンジョンを内包しての牧場敷地内が、農場ダンジョンの一階層として機能しているそうだ。
つまり牧場と言うのは既にダンジョン内であり、そこで飼育されている矢鱈とデカイ牛の様な動物は紛うことなきモンスターであるらしい。
そんな所で、牧場もだが孤児院なんかやって大丈夫なのか? と思わなくもないが、出て来るモンスターがあの牛と鶏の二種類しかいないらしく、かなり安全なダンジョンなのだと言う。ただし、4階層までは、と言う注釈がつくが。
『ブモオォォ〜〜〜〜』
で、その牛がコレ。名前を『ケトラカーウ』と言う巨大牛だ。いや本当にデケェ。例えるなら大型トラック並の大きさがある。
「いや本当にデケェな。これもう柵とか意味ねぇだろ。跨げそうだぜ」
牧場の周囲は一応柵で囲まれている。ただこれ、柵の高さが足りな過ぎるのだ。人の侵入を防ぐには十分かも知れないが、肝心の牛と比べると簡単に跨げてしまう程度の高さしかない。
これで何で牛が逃げ出さないのか不思議でならない。そんな風に話していたら、ラベクが答えを教えてくれた。
「リューマ殿、柵から更に中に手を伸ばしてみてください」
「こうか? …………おおっ!? なんだコレ!」
「『ダンジョン壁』です。聞いたことありませんか?」
ラベクの言葉に従って柵の内側に手を伸ばすと、伸ばした俺の指先に透明な壁が触れた。『ダンジョン壁』! そうか、これはダンジョンの中にある見えない壁か! 俺が殴ってもビクともしなかったヤツだ!
どうやら、この牧場の一帯はダンジョンの一階層なだけあってダンジョン壁に囲まれた場所であるらしい。ただ、そのままだと何処からが牧場なのか解らないので、わざわざ外側に柵を設置して解りやすくしているってのが、この場所だ。
ダンジョン壁はドーム型になっており、コレがあるから中の子供達が外のモンスターに襲われる事も無いのだと言う。柵が外側にあるのは知らずにダンジョン壁にぶつかるのを阻止する為だろうな。
「ほほぅ。…………ん? でもよ、牧場やってるんだから入口はあるんだよな?」
「ありますね。ダンジョン壁とかその入口なんかは、農場ダンジョンのダンジョンマスターをやっている牧場主が、色々と設定して作り出している物だと聞いています。ダンジョンの規模にもよりますが、マスターとなるとかなり細かい所まで設定出来る筈です。ここに関して言えば一階層を外に出して牧場としたのも、最初にダンジョンマスターとなった初代牧場主が設定したものだと聞いた事があります」
「へぇーー。凄ぇんだな、ダンジョンマスターってのは」
そんな事を話しながら歩いていると、その牧場の入口の門に辿り着いた。門にはアーチ型の看板が掛かっており、そこには『フェルマ牧場』と書いてあった。
入口自体は、普通の牧場と変わらない。柵が途切れ、中にある建物に向かって道が続いているのだ。
ただ、牛がいるのと道を挟んで反対側の方に、大きさはそれ程でも無いのだが、やたら派手な羽飾りのついた鶏が何羽か放し飼いにされていた。しかもその中の一羽は、さらに二回りは大きな羽飾りになっている。
「もしかして、あれが鶏のモンスターか」
「そうだよ兄貴。あれは『クレストプーレ』ってモンスターだよ。基本的には肉になるモンスターなんだけど、ああして飼っていると毎日二個の卵を産んでくれるらしいんだ。でも、あの羽飾りが凄いのは雄かな。多分群れのボスで、自分の群れを護っているんだと思う」
「アイツがボスか。って言うか、サゲンもよく知ってるじゃねぇか」
「貴族学校で習ったからね。これでも、僕は結構優秀だったんですよ」
そして建物に近づいて行くと、その家屋の近くでは子供達が遊んでおり、俺達が近づくと子供達は遊ぶのを止めて、俺達の方を不思議そうに見ていた。
そこで俺は、俺を見ている子供達の中からなるだけ年上っぽい子供を選んで声をかけた。
「おう、そこの子供。ちょいと中に行ってリューマが遊びに来たって伝えて来てくれねぇか? 頼むぜ」
「う、うん。わかった」
中へと行く子供を見送って少し待つと、家屋の中からの姉妹の姉の方、ケイネスが顔を出した。
「リューマさん!」
「おう、確かケイネスだったよな? お言葉に甘えて遊びに来たぜ。まぁ、ちょいと急に来ちまったけど、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。どうぞ中に入って下さい! お連れの二人も!」
歓迎してくれたケイネスに従って、俺達は家屋の中にお邪魔した。そして応接室に案内されると、ケイネスがお茶を持ってやって来た。
「いやーー、嬉しいよリューマさん。本当に遊びに来てくれたんだね。そのうえ子供達にお土産まで貰って、ありがとうね」
「いや、気にしないでくれ。こちらこそ、急に来て悪かったな。急に体が空いたもんでよ」
ケイネスは会話をしながら俺達にお茶を配り、それが終わると対面になるソファーに座って深々と頭を下げた。
「改めまして、この牧場を経営しているケイネスです。先日はアタシと妹を助けてくれて、ありがとうございました」
「当然の事をしたまでだ。二人が無事で良かった。俺で何か力になれる事があれば冒険者ギルドに来るといい。…………おっと、この二人の紹介もしねぇとな。サゲンとラベクだ。今は俺の身内として、ギルドで働いている」
俺の言葉に続いてサゲン達が頭を下げると、ケイネスは少し目を見開いて二人を、特にサゲンの方を見た。まぁ、そりゃ知ってるよな。領主の息子だからなコイツも。
「…………コホン。ぜ、ぜひお昼はウチで食べてってよ。クレストプーレを一羽潰して、新鮮な鶏料理をご馳走するからさ!」
「おう、そりゃ楽しみだな。それまでの間、少し牧場を見せて貰ってもいいか? 少しここの牧場の仕事ってのも体験してみてぇんだ」
「ああ、構わないよ。わからない事があったら子供達に聞いてよ。本当はアタシが案内できれば良かったんだけど、少し忙しくてさ」
「いやぁ気にしないでくれ。それじゃあちょっと、見させて貰うぜ」
そんな訳で、俺達は一日牧場体験へと繰り出した。
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