五十六の道 俺の身内
今日は図書館の休館日だ。いや正確には今日から、だな。隔月で、始めの三日間は図書館が閉まる時がある。領立図書館は十日に一日休館日があるのだが、隔月のヤツはそれとは別だ。
二カ月の間に入った本を精査したり、図書館で貸し出せる様にしたりする日であり、職員は別に休みじゃねぇ。むしろ忙しくなる日だ。
だから今日は図書館に行っても写本は出来ねぇ。邪魔になるだけだ。そして、今日はギルドの仕事も休みになった。そろそろ緑のダンジョンのDランクに入ってくれとの事で、今日は休みになったのだ。ダンジョンに行く準備をしろって事だな。
まぁ、今回もケーシン達に加えてショウも付いて来るらしいんで、準備は丸投げしてある。
本当は俺も行った方が良いんだが、今回は整備を頼んでおいた装備を取りに行ったりとかケーシン達の用事が多いとの事で、お任せだ。で、ショウの方は事前にダンジョンの勉強をすると言って部屋に引きこもっている。
そんな訳で急にぽっかりと予定が空いた俺は、サゲンとラベクを連れ出して外に出た。二人は別に休みって訳でもなかったんだが、宿舎の朝食で一緒になったネガーに、どっか連れ出してやれと言われたのだ。
二人は俺の借金奴隷だ。それなりに自由は保障されているが限度はあるし、やはり借金奴隷も奴隷階級ではあるからな、世間の風当たりは強い。特にコイツらは顔が売れているからな、油断すると…………。
「おい、サゲンがいるぜ! 奴隷に落ちた貴族様よぉ、今どんな気持ちなのか言ってみろよぉ!」
「奴隷なら奴隷らしく地面に這いつくばれよ! 俺の靴を舐めさせてやるぜ! ギャハハハハッ!」
…………こういう馬鹿が湧く訳だ。
絡んで来たガラの悪い二人は後ろにも仲間をゾロゾロと引き連れて寄って来た。数の上でも向こうが三倍以上いる上に、基本的に奴隷階級のサゲンとラベクは自分から手を出せない。
それで日頃の鬱憤晴らしとばかりに絡んで来たんだろう。…………ちょうどいいな、コイツらを見せしめにするか。
「あん? おいおい何だテメェ。別に俺達はお前に用はねぇよ。ちょっとそこの奴隷を借りるだけぇぇぇぇっ!?」
「テ、テメェなにしぃぃ〜〜〜〜っ!?」
俺は無言でサゲン達の前に出ると、絡んで来た馬鹿二人の顔を鷲掴みにして高く持ち上げた。
馬鹿共は何とか逃れようと暴れるが、俺がその度にブンブンと馬鹿共を振り回すと、すぐに大人しくなった。
「おい、俺の身内に何か用か? 言いてぇ事があんなら俺が聞いてやるよ。何だっけ? 俺の靴を舐めてぇんだったか?」
「テメェ! ブルンを離しやゲブゥッ!?」
「グルツから手をはベェッ!?」
馬鹿共を解放させようとする奴らを、馬鹿共を使って蹴散らすと、数人倒れた所で他の奴は距離を取り始めた。
「おい答えろよ。俺の身内に用かって聞いてんだよ。…………何とか言えよクソガキ共が! 頭握り潰されてぇのか!?」
「ご……ごべぇん…………ぞぁい…………!」
「も、もぅ…………ゆぶじぃ…………!」
「あん? チッ! なに言ってるか解らねぇよ」
「「グペッ!?」」
俺が放り投げると、地面に落ちた馬鹿共は顔面を押さえてのたうち回り、馬鹿共の仲間達はのたうち回る馬鹿共を引き摺って逃げて行った。
「これに懲りたら二度と来んな!!」
馬鹿共を蹴散らしてから周囲を見渡すと、何組かの冒険者やチンピラが俺から目を逸らした。
実はギルドを出てからここに来るまでに、俺達に絡もうとする素振りを見せる奴らが何人かいたのだ。
奴隷だから何しても良いとか考える馬鹿共だ、救いがねぇ。奴隷の前に人間だろうが。同じ地べたに立っときながら、人を見下して良い筈がねぇ。そんな事も解らねぇのか。
だが流石に、今のを見て俺達に絡もうなんて奴は出ねぇだろう。こう言うのはキッチリ心をへし折ってやらねぇと止まらねぇからな。
「あ、兄貴! ぼ、僕達の為にありがとうございます!」
「しかし、良いんですか? 俺達を庇ってくれるのはありがたいですが、リューマ殿が冒険者達に恨まれますよ?」
「関係ねぇよ。お前達は形はどうあれ俺の身内になったんだ。お前達を侮るって事は俺が侮られているのと一緒だ。ナメた態度を取って来た奴にキッチリ落とし前をつけただけだ。…………ただなぁ、身内だからこそ、お前らがバカやった時には今の比じゃねぇぞ? 覚えとけ」
「は、はい! わかりました!」
「はい。解っています。それで、これから何処へ向かうのですか?」
「言ってなかったか、牧場だよ。あの街の外に在るやつだ。遊びに来てくれと言われていたからな、ちょっと行ってみようと思ってな」
「牧場ですか、あの孤児院でもある所ですよね」
「おう、そこだ。…………っと、忘れる所だった。サゲン、子供達にも喜ばれそうな手土産って何かあるか? 俺じゃあ手土産なんて屋台メシか酒くらいしか思いつかなくてよ。子供相手なら甘い菓子なんかが一番いいと思うんだが、どうだ?」
「甘い菓子ですか。うーーん、孤児院の子供達ですからね、あまり贅沢を覚えさせるのも可哀想なんで、やっぱりクッキーなんかが良いんじゃないですかね。安い分、大量に買えますし」
なるほど。孤児院の子供達だからな。確かにあまり高い物を買って行くのも良くねぇな。良く気づいたもんだ。
「よし、なら土産はクッキーにしておくか。買う場所にあてはあるか?」
「はい。任せて下さい。良い店を紹介しますよ」
サゲンが案内してくれた店は、まさにクッキーを主に売っている店だった。俺は二人と相談しながらクッキーを大量に買い、更に追加料金を払って小分けにして貰った。
子供ってヤツは有れば有るだけ食うからな。こうして小分けにしておけば、一気に無くなる事もねぇだろう。…………まぁ、ちょっと買い過ぎた気もするが。
ラベクが抱えるクッキーの大袋を見て、俺は勢いで買い過ぎた事を少しだけ反省した。
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