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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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五十五の道 死霊魔法の弊害

 いつもの様に午前中は冒険者ギルドの手伝いをする。俺の奴隷となりギルドの預かりともなっているサゲンとラベクも、だいぶギルドの仕事に慣れて来た様だ。


 アイツらは俺と違って字を書けるからな。流石にイキって冒険者をやってた事があるんで受付には出せねぇが、書類仕事を片付ける要因としてはかなり役に立っているらしい。


 この国で生まれて貴族学校なんて所を卒業しているサゲンには、シンプルに学歴がある。書類整理も計算も、見てるとアイツは結構早い。バカやってた所からしか知らねぇが優秀なんだろう、実際は。


 こう言っちゃなんだが、ラベクの方もサゲンに負けてねぇ。ラベクは国の騎士団に所属していた事があり、サゲンの兄貴であるウガルに副官として付いていたらしいからな、経験がある訳だ。


 …………何だな、俺が一番役に立ってねぇ。そりゃ力仕事なら負けねぇが、ああいう頭を使う系は苦手だぜ。やっぱせめて、字くらいは書ける様にならねぇとな、本気でヤベーぜ。



「…………てな訳でよ、今日も来たぜ」


「来て早々に私を愚痴に付き合わせるな。私はこの領立図書館の責任者だぞ? 仕事ならいくらでもあるんだ」


「まぁそうなんだろうな。今日はまた、一段と眼の下のクマが凄ぇもんな」


「これは昨日の騒動についての報告書を作成したせいだ。誰かさんが騒動を起こしてくれたんでな」


「おっと藪から蛇が出て来やがった。んじゃ今日も、写本の仕事をさせて貰うぜ」



 風向きが悪くなって来たんで、俺はオルーガの横を抜けて奥へと入る。奥の作業部屋では、ウルミがいつもの様に本の修繕作業をしていた。



「よう、今日も邪魔するぜ」


「こ、こんにちは。…………リューマさん。き、昨日は叩いてすいませんでした」



 部屋に入った俺に気づくと、ウルミは作業していた手を止めて立ち上がり、頭を下げて来た。昨日は手の治療をした後すぐに帰ってたからな、気にしていたんだろう。



「いや、俺の方こそ悪かったな。手、大丈夫か?」


「あ、はい。大丈夫です。…………ところでその、見ましたよ…………ね?」


「うん? 何をだ?」


「私の…………魔法を…………」


「魔法? …………あぁ、骸骨出すヤツか? 確か『死霊魔法』だったか。面白い魔法だな」



 白骨死体を呼び出していたが、あれは別に人の死体って訳ではないらしい。魔力で作られた物なんで、今のウルミの魔力だと一体出すだけでほぼ魔力切れだとか何とか、昨日オルーガの奴から聞いた。



「やっぱり見られてる…………」


「おいおい、どうした?」



 俺がウルミの死霊魔法を見たと知って、ウルミは机に手をつき項垂れた。もしかして知られたく無かった感じか? まぁ確かに、不気味な魔法だとは思ったが。



「うぅ…………。わ、忘れて下さい…………!」


「なんだ嫌なのかあれ。でも死霊魔法と知ってて覚えたんだろ? 聞いてるぞ、ああいう攻撃に使えそうなヤツは本読んで覚えるって」


「こ、子供だったんですぅ…………。魔法なら、何でも良いから覚えたい子供で、近所の魔法使いのおじさんが持っていた魔導書が、死霊魔法だけだったんです…………!」



 あぁ、なるほどな。子供の時の失敗が尾を引いてるヤツか。たまに聞くよな、こういうの。ヤクザもんには結構多かったぜ。…………大抵はしょうもない事なんだけどなぁ。



「本当は何の魔法を使いたいんだ?」


「…………回復魔法です」


「なら、その魔導書を見せて貰えば良いじゃねぇか。ネル…………知り合いの冒険者も覚えてた位だし、持ってる奴は持ってんだろ?」


「そうなんですけど…………。死霊魔法ってのはやっぱりイメージが悪くて。死霊魔法を覚えている奴に回復魔法の魔導書を触って欲しくないって人ばかりなんですよ…………」



 そうか、解らなくもねぇな。死霊なんてのは生命の対極にあるもんだからな。そりゃ忌避もするか。


 …………ふむ。これ、ちょうどいいかもな。これなら、イエモリの件の借りを返すのにいいだろ。



「よし解った! じゃあダンジョンで回復魔法の魔導書を見つけたらウルミにやるよ。お前には借りがあるしな!」


「え? か、借り? よく解らないですけど、回復の魔導書なんてそんな簡単に見つかりませんよ。アレってかなり貴重品だし、物凄く高く売れるし。教会や治癒院では懸賞金をかけている所もあるんですよ?」


「でもダンジョンから出て来る物なんだろ? 見つけたら持って来るからよ、楽しみにしとけよ」


「…………フフッ、リューマさんって、怖い人かと思ってましたけど面白い人だったんですね。私、忘れませんからね。回復魔法の魔導書、見つけたら私に下さいね!」


「おう! 任しとけ!」



 二人で笑い合う事で、俺はウルミと少し打ち解けた気がした。おかげで、その後の翻訳の仕事にも身が入り、最初にウルミが持って来た本は全部終わらせる事が出来た。


 文字を書く方も、まだまだではあるが成長シている実感はある。この調子でやってれば、字が書ける様になるのも時間の問題だろう。


 新しい事が出来る様になるってのは、幾つになっても嬉しいもんだぜ。



 ◇



 オルーガは、偶々必要な物を探しに作業部屋に入り、その場面に出くわした。



「じゃあダンジョンで回復魔法の魔導書を見つけたらウルミにやるよ。お前には借りがあるしな!」


「私、忘れませんからね。回復魔法の魔導書、見つけたら私に下さいね!」


「……………………」



 楽しそうに笑い合う二人を見て、オルーガは確信をもって察した。『どうやらウルミ君は冗談だと思っている様だが、リューマの方は本気だな』と。


 リューマはきっと持って来るだろう。回復魔法の魔導書を、しかも鍵付きで。その時のウルミの狼狽ぶりがハッキリと頭に浮かび、オルーガは首を横に振った。



「まぁ悪い事はないか。ウルミ君が回復魔法を使える様になるなら、ウチとしては助かるしな。ウルミ君には悪いが、黙っておくか」



 オルーガの懸念通りに、ウルミが衝撃と共に狼狽する日は、そう遠くは無い。

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