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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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五十の道 写本の仕事

 領立図書館の司書である眼鏡の少女ウルミに案内されて、俺は図書館の奥にある作業部屋に入った。


 若干のカビ臭さと何らかの薬品の匂いがする作業部屋は、本の修復等をする為の部屋だそうだ。その部屋の更に奥には倉庫があり、ウルミはその倉庫から何冊かの薄い本を持って来た。



「リュ、リューマさんには、この絵本の写本をお願いします。え、絵本なので難しい字や表現は少なく、文字の勉強をする取っ掛かりには、ちょ、ちょうど良いかと思います…………」



 人見知りなのか、単に俺が怖いのか、ウルミは俺と目を合わせようとしない。まぁ目つきが悪ぃ自覚はあるし、こういうのは人それぞれだから別に良いがな。



「絵本か…………。まぁ絵も、描いて描けねぇ事はねぇが…………」


「あ、ち、違います。絵は、専門の方にお願いするので、描かなくていいです。ぶ、文書だけお願いします。ちょ、ちょっと待ってて下さい…………」



 そう言うと、ウルミは再び倉庫へ行き、何やら箱を持って来た。その箱には、紙の切れ端が多数入っている。



「セ、セリフの大きさに合わせて切れ端を選び、そ、そこに文字を写して下さい。書いた物は、う、裏にページ数を薄く書いて、こ、こっちの箱に入れておいてください…………」


「あーー。なるほど、そういう事か。写本ってより、修復の方が近いな。書いたコイツを、後で絵を描いた本に貼り付ける訳か」


「そ、そうです。え、絵本の場合は、この方法を取っています。絵描きの方に文書つきで頼むと、ちょっと予算が足りないもので…………」


「わかった。作業は、そこのテーブルを借りていいか?」


「は、はい。わ、私も近くで作業していますので、な、何かあったら聞いてください」


「おう」



 俺は近くのテーブルの上にウルミが持って来た絵本を積んで、まずはタイトルを眺めた。


『スライムぽよぽよ』

『ゴブリンのくつした』

『やさしい王さま』

『オークのおにく』

『ポーションころりん』


 …………なるほど、タイトルからしても絵本だな。俺も小さい孫への土産に、適当にこんな本を買った覚えはある。読み聞かせなんかもしたもんだ。


 どれ、じゃあ上から順にいくか。まずはこのスライムのヤツから行こう。スライムったらトイレにいるヤツだったよな。排泄物を食うとか言う。そういや街のゴミ捨て場にもいたか。中々に世話になってるぜ、コイツには。



「さて、子供達が読みやすい様に、大きくハッキリ書かねぇとな。えっと、確かこういう時は…………」



 昔、シノギで偽造屋の所に通った事があった。免許やらパスポートやらの偽造はもちろん、文書に書かれたサインなんかもよく偽造させたもんだ。


 俺が若い時分は法整備ってやつも甘かったからな。バブルの熱も相まって、そう言うシノギが多かったのを覚えている。


 で、相手が秘密主義で偏屈な偽造屋のジジイでも、何回も通ってりゃ無駄話だってする様になる。一緒に飲みに行った事も当然多くなる訳だ。


 そんなある日、俺は偽造屋のジジイからサインを偽造する時のコツってのを教えられた。



『サインの偽造なんてのは、そんなに難しくねぇ。それがサインだって思うから、変なクセを見つけて真似ようなんて思うから上手くいかねぇ。文字じゃなく、絵だと思って描いてみな。まぁ文字なんてのは元々は絵だったとか言うしよ、そう言うつもりで描きゃいいんだよ。あとは練習あるのみだぁな。ウェッヘッヘッヘッ!』



 まぁ結局、俺はそんな練習はした事ねぇが、どうだろうな。


 そんな考えの元で文書を書き写してみると、一度目と二度目は自分でも読めねぇ様なもんが出来て失敗したが、三度目で上手くいった。


 これなら読めるかとウルミにも見せてみたが、反応は上々だった。何となくだが、この国の文字にある法則性ってやつが解って来たぜ。


 そんな調子で作業を進め、二冊分を終えた所で今日は終業時間となった。



「ご苦労さま。これは少ないが今回の報酬だ。受け取ってくれ」


「おう、ありがとよ。この仕事はやってて面白ぇし、明日また来るぜ。いいよな?」


「ああ。ウルミからも、仕事の出来栄えに問題は無いと聞いている。またよろしく頼むよ」



 絵本二冊分の文書を写して銅貨二十枚。決して高くは無いが、今の俺には価値のある仕事だった。これをやってりゃあ、この国の文字を書ける様になれそうな予感がしたからな。


 てな訳で俺は次の日も、午前中はギルドで力仕事をして、午後になってから図書館にやって来た。


 取り敢えず、今日は残りの三冊を仕上げてしまおうと、黙々と文字を書き写していたのだが、ふと視線を感じた。


 この部屋には俺の他にもウルミが居るが、ウルミじゃねぇ。ウルミも、黙々と本の修復作業をしている。手際よくカバーを張り替えたり、破れたページを書き写して入れ替えたりと忙しそうだ。


 と言うよりも、この視線は倉庫の奥の方から来てやがる。閉じた扉の奥の方から、誰かが俺を覗き見てやがるのだ。


 …………こりゃあれだな。霊ってやつだ。シノギでいわゆる『事故物件』ってヤツで寝泊まりした時なんかに感じる視線だ。


 まぁ、こんなのは気にしねぇのが一番なんだよな。霊ってやつも元を辿れば人間に過ぎねぇ。あいつらは単に気づいて欲しいだけの奴が多いからな。何をしても気にして貰えないとなりゃ、そのうち静かになるもんだ。


 だもんで俺は無視を決め込んで仕事をしていたんだが…………。すっかり忘れていたぜ、ここには魔法なんて力がある事を。


 俺がそれを思い出したのは、ウルミが何かを取りに倉庫に行った後だ。倉庫の奥の方からの視線が途絶えて、その存在感が増しやがったんだ。


 …………これは流石に、無視って訳にはいかねぇよな。俺は溜め息を一つ吐いて、立ち上がった。

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