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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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百四の道 解決の報告

「…………てな訳でよ。解決して来たぜ」


「……………………力業に過ぎる」



 冒険者ギルドの執務室でネガーを相手に事の顛末を語ったんだが、ネガーは膝の上で手を組んだまま、テーブルの上に額を落とした。鈍い音が結構でかく響いたぜ。今のはかなり痛ぇだろ。



「なんだよ。俺がどう話をつけるかは、事前に話しておいただろ。あの、ホラ。留置所にいるバカ共にカーススを釣る手紙を書かせた時によ」



 名前は忘れたが、牧場を襲って来た奴らの中にいた騎士。その片方を脅しつけて、俺は手紙を書かせたのだ。


 その騎士は、牧場で捕らえた時に俺の殺気をモロに喰らって、色々と酷ぇ事になっていた奴だ。


 だからなのか、俺がカーススをハメる手段にする手紙を頼みに行くと俺の顔を見ただけで震えあがり、俺の言うままに手紙を書いた。…………その間、一度も俺と目を合わせようとしなかった辺り、あの殺気の一件はかなりのトラウマになってそうだった。まぁ、どうでも良いが。



「アルブ=ジャルグな。カーススの騎士をやっている奴だ。リューマが相手だから簡単に捕まったが、貴族の間ではかなりの実力者で通っている男だぞ? ジャルグ男爵家の現当主の末の弟だな」


「関係ねぇよ。クズはクズだ。人の道を外れた外道に、俺は敬意を払わねぇ」


「まぁ、お前はそうだろうな。…………しっかしよ、カースス伯爵の私兵を全員ぶっ飛ばすだけじゃなく、元凶となったその髪の毛を全部抜いて来るとは、中々にエグい事をするもんだな」


「知った事か。首を刈られるよりずっと良いだろうが。それに、俺は誰一人として殺してねぇし、再起不能にもしていねぇ。感謝こそされても、非難される謂れはねぇぜ。アイツらの被害と言えば、消えねぇ心の傷ぐらいのもんだぜ」


「…………戦う人間からすれば、それが一番キツイだろうが。解ってて言ってるだろ」


「そりゃな」



 俺はそれを目的としてカチ込んだんだから当然だ。


 あの後、少し離れた場所から様子を見ていたが、アイツらは起きた瞬間からカーススを探して走り回った後、見つけたカーススの状態にしばらく呆然としていた。


 そしてその後、野営地を片付けると、肩を落として王都へと帰って行った。


 帰る際に振り向く者は一人もおらず、俺はそれを見て全員の心が折れている事を確認した。



「徹底的に心をすり潰したからな。もうカースス側から喧嘩ふっかけて来る事は無ぇだろう」


「まぁそうだろうな。…………多少、気の毒にも思うがな」



 ネガーはそう言うが、俺はそうは思わねぇ。面倒だし必要もねぇからやらなかったが、カーススの一派は殺されても文句言えなかった。


 アイツらは初手から間違えた。欲しい物があるならまず交渉だろ。イーレッド子爵家と交渉してもいいし、それでダメなら牧場と交渉してもいい。


 それで上手くいかなかったとしても、実力行使の前に打てる手は合った筈だ。それを全部すっ飛ばして殺しまでやったんだから、同情の余地は無ぇ。



「まぁとにかく、報告は以上だ。あとは上手くやってくれ。ギルドへの礼は、カーススから金が届いたら持って来るからよ」


「解った。ああ、イーレッド子爵家への報告はこちらでやっておくから、気にしなくていいぞ」


「そうか、ならそっちは任せるぜ。そうだ、一応伝えておくが、俺はこれから農場ダンジョンに潜るつもりだ。長くも三日で地上に戻るから、何かあればその時だな」


「なら、ついでにダンジョン産の食料の納品も頼む。リューマのマジックバッグなら、かなりの量に期待出来るからな」


「期待するのは勝手だが、集める苦労も考えろよ。まぁでも、解ったよ」



 カーススの件はこれで解決でいいだろう。まだ全て終わった訳じゃないが、アイツが俺との約束を反故にするとは思えねぇ。万が一の時は王都まで取り立てに行くが、そうはならねぇだろう。アイツは俺に、二度と会いたくはない筈だからな。



 ◇



「…………若干呆れるわね。やった事やその結果にじゃなく、それを『やれてしまう』と言う事実の方に、だけど」


「本当になぁ…………」



 イーレッド子爵家の屋敷を訪れたネガーが語る事の顛末を聞いて、エルザレスは額に軽く触れて首を横に振った。


 カースス伯爵は領地こそ持たないが、法務省の重鎮だ。その私兵は数こそ少ないが精鋭を集めている。それも、自らの属する派閥の貴族家の三男や四男を雇い入れているのである。


 例え家督を継ぐ可能性が低い三男や四男とは言え、貴族家である以上はそれなりの教育を受け、貴族学校も卒業した者達だ。一般の兵士とは比べ物にならない程の研鑽を積んでいる。


 例え数が違えども、相手が野党の類ならば三倍を超える兵力差があっても跳ね返す力があるのが、有力貴族の私兵だ。


 その精鋭達が護る陣営に、リューマはたった一人で乗り込んだあげく唯の一人も殺さずに無力化し、その中でカースス伯爵の髪の毛を毟りながら、ゆっくり話し合いをして来た訳だ。


 カースス伯爵にとっては、悪夢以外の何物でも無かっただろう。



「ネガー。貴方に同じ事が出来る?」


「…………準備をしっかりした上で、出会う奴を全て殺していいのなら、カースス伯爵の暗殺くらいは…………できると…………思う」



 そんな事を口にしながら、ネガーはそんな事は不可能だと解っていた。だが元・ゴールドの冒険者であり、現職のギルドマスターであるネガーにも、プライドがあったのだ。



「…………リューマが何者なのかって事は気になるけど。もう一つ、無視出来ない報告があるわね」


「緑の六つ目のリョクリュウか。エルザレス、覚えてるよな? 青い七つ目を…………」


「忘れる訳ないでしょ! 私の故郷は、アイツのせいで湖に沈んだんだから…………!」


「アレが何かも俺達は知らなかったが、『龍』とはな…………。各地の伝承には、時折複数の目を持つバケモノ達が出て来る。…………調べてみた方が良さそうだな」



 リューマに宿るイエモリだけではない。この世界には、好き勝手に暴れる龍との因縁を持つ者が一定数いるのだ。

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