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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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百二の道 希望と絶望

 ケイネスが正式に『農場ダンジョン』のダンジョンマスターとなり、俺は仮の後継者となった。


 この事はダンジョンを出てすぐに、領主であるイーレッド家やギルドマスターのネガーに伝えられ、国にも報告された。


 これにて、『農場ダンジョン』の後継者がダンジョンマスターに成れていないと言う問題は解決した。これについては、農場ダンジョンや牧場の継続を心配していたエルザレスやネガーも、ホッと一安心した事だろう。


 …………が、そんな事はどうでもいい。大切な事は別にある。ケイネスとクリス姉妹の命を狙い、牧場を狙い、農場ダンジョンを狙い、二人の両親の命すら取ったかも知れないカースス伯爵とか言うクソ野郎に、キツイお灸を据えてやらなきゃいけねぇ。


 権力やら金やらに護られているクソ野郎に灸を据えるのは、正攻法じゃいけねぇ。逃げられる。


 こういう時の為の裏社会であり暴力だ。正しいとは俺も思っちゃいねぇが、昔からヤクザが必要悪だとか嘯かれている要因でもある。



「首洗って待ってろ、すぐにカチ込んでやるからよ」



 どんなに偉くなろうが金を積もうが、自分が地面に立ち、お天道さんを見上げる人間に過ぎないと言う事を教えてやる。


 この鉄拳で、丁寧にな…………!!



 ◇



「ここで野営だと!? 馬鹿な、時間が無いのだぞ!!」


「いえ、ご当主様のご命令と言えども、これは譲れません。王都周辺ならばともかく、この様な禄に舗装もされていない道を夜に通るなど、いくら魔導車とは言え事故を起こします。それに夜は行軍の速さも落ちるのです。騎馬兵や歩兵を置いて行っては、何かあった時にご当主様を護り切れません! どうかお聞き届け下さい!!」


「ぬぅぅ…………! 解った! 今日はここで野営とする! これで良いのだろう!!」


「ハッ! ありがとうございます!!」



 魔導車の扉が閉められ、カースス伯爵は乱暴に魔導車のソファーに座り直した。


 本当ならば、こんな事をしている場合では無い。何せカースス伯爵の長年の願いを、薄く後退した頭皮を再び豊かにすると言う、そんな夢のポーションが待っているのだ。


 事の発端は二日前、王都のカースス伯爵の元にドラドの街に潜入させていた騎士達からの一報が届いた。


 そこにあったのは悪い報せ、『ケイネスが正式に農場ダンジョンのダンジョンマスターになった』と言う事と。


 良い報せ、いや寧ろ奇跡の報せがあった。曰く、『シャアルハーブよりも強力な、蘇りの薬を手に入れた』とあったのだ。これはつまり、毛はえ薬を手に入れたと言う事だ。


 ただし、このポーションには問題もあった。衝撃に弱く、長持ちもしない。せいぜい七日間持てば良い方と言う、そんな薬だったのだ。


 手紙が来たのが二日前、手紙が届くまでの時間や、騎士達がダンジョンから帰還する時間まで計算すると、もう本当にギリギリだ。


 時間の無さに焦りが出るが、これにより一つの疑問も解消された。


 髪に悩みを持つ者は多い。それも皆、真剣に悩んでいるのだ。そこに毛はえ薬がダンジョンから出て来たならば、大々的に売り出せば良いのだ。それはさぞかし儲かるだろうと、カースス伯爵は常日頃から思っていた。


 だがそれを売り出さない、いや売り出せない最大の障害が、この特性と使用期限なのだろう。


 衝撃に弱い薬は、割れない様に運ぶのも一苦労。さらに使用期限が七日と短ければ、それは確かに売りに出せないだろうと、カースス伯爵は考えたのだ。



「うぅむ…………!」



 やがてテントの設営が終わり、自身が泊まる豪華な内装のテントに入ってからも、カースス伯爵の頭から焦りは消えなかった。


 こうしている間にも、せっかく手に入れたポーションの効力が消えていっているのかと思うと気が気では無いのだ。


 もはや外は日が暮れる。焦ってもしょうがない事は解っているが、どうしても焦ってしまう。


 だが実の所、カースス伯爵には焦る必要などまるで無いのだ。


 何故なら、そもそもそんなポーションなど存在しないのだから。いや、シャアルハーブの研究が進めば、いつかは出来るかも知れない。だが、それは今ではなく、今はそんな存在しないポーションの使用期限など、心配するだけ無駄なのだ。


 だって、無いのだから。



「ん? なんだキサ…………!?」


「おい、どう…………!?」



 全ては龍馬が、カースス伯爵を王都から引き離す為に仕組んだ事だ。


 さすがに煉獄龍馬と言えど、いきなり王都の貴族屋敷にカチ込むような真似はしない。出来ないと言うよりは、単純にカチコミ後の様々な対応が面倒だからだ。


 だから呼び出す事にした。せっかく捕まえた駒もある事だし、獲物が欲しがる餌をぶら下げて、都合の良い場所まで誘導する事にした。



「な、何者…………!?」


「誰か…………!?」



 龍馬は目につく者を、一人ずつ確実に気絶させていく。誰一人として逃がす気は無いし、誰一人として殺す気も無い。


 一軍とも言える人数がいて、たった一人を相手に何も出来ずに無力化されたと言う、その事実て相手の心をへし折る為だ。


 絶対に勝てない相手が知らぬ内に敵に回る。カースス伯爵は、この日を境に髪の毛の心配などする必要が無くなる。


 何故なら多大な恐怖によって、髪の毛など二度と生えて来なくなるからだ。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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