百一の道 涙の別れ
『ア…………ぁ…………あ…………』
リョクだった物が崩れ落ちて塵と消え、戦いが終わった。リョクが消えた後には何も残らず、ボスを倒した時に出る宝箱すら出なかった。まぁ、色々違うと言う事なんだろう。
『ケイネス…………』
「フォムちゃん。…………うん、解るよ。もう、ここでも会えないんだね」
人形状態のフォムと、ケイネスが手を取り話している。フォムは困った様な顔をしているが、ケイネスはボロボロと涙を流している。
それは、フォムとの別れをケイネスも感じてしまったからだった。
フォレストノーム自体は、単にこのダンジョンのボスだ。だが、フォムと言うのはそれだけの存在ではない。ケイネスの一族がダンジョンマスターとなってから、ただの一度も倒されていない、特異なモンスターなのだ。
ダンジョンマスターとその後継者は、ダンジョンに入ってから丸一日の間は、モンスターに襲われない。そう言うルールがある。
だがそれとは別に、ダンジョンの最奥を護るダンジョンボスだけは、決してダンジョンマスターとその後継者を襲う事は無いだ。何故なら彼らは、最奥の部屋を護るガーディアンだからだ。
その為ケイネスとその家族は、ダンジョンボスであるフォレストノームと長く家族ぐるみの付き合いをしており、フォレストノームの方も『フォム』と言う名前を貰い、家族として接していた。
そこまで長い付き合いになれば、いくらモンスターとは言えフォムの方も変わってくる物なのか。フォムはダンジョンマスターの家族と会う事を楽しみにする様になり、ケイネスにとっても、フォムは大切な友達なのだと、俺はこのダンジョンを攻略する中で、ケイネスから聞いていた。
だが、今回の戦いでフォムはリョクリュウによってその魂を喰われてしまい。残った自我で自らの魔石を俺に差し出した。その全ては、ケイネスを護る為だ。
そうして俺とも繋がりは出来た。俺はフォムの自己犠牲に侠気を感じ取り、フォムは俺にケイネスの事を託した。その繋がりによって俺は《翠緑のフォレストノーム》と言う新たな《モン紋》を手にしたが、フォムの魂自体が俺に宿った訳では無い。
フォムの魂は、すでにリョクリュウに喰われてしまっていたのだから。目の前の人形に宿っているのは、フォムの自我の残りカス、つまり残滓ってやつだ。
残滓は長く存在出来ない。フォムと言う存在はこの世から消える。
例えこのフロアに新たなフォレストノームがボスとして誕生したとしても、それはもはやフォムでは無いのだ。
「フォムちゃん…………。アタシを、護ろうと頑張ってくれたんだよね? ありがとう…………!」
『ケイネス、友達だから…………』
「うん…………! 本当にありがとう。アタシ、フォムちゃんの事、絶対に忘れないからね…………!」
『バイバイ、ケイネス…………!』
フォムの形をした人形から、緑色の光がホタルの様に舞い上がり、消えて行く。それをケイネスは滂沱の涙を流しながら見送った。
◇
「…………ゴメン、ありがとう。もう大丈夫」
「謝る事なんざ何もねぇよ。ダチとの別れだ、辛くても悲しくても、そりゃ当たり前ってもんだ」
「…………うん」
「それに、謝るってんなら俺の方だぜ。…………すまねぇ、ケイネス。お前のダチを護れなかった」
「それこそリューマのせいじゃ無いよ! あの時にはもう手遅れだったし、リューマはフォムちゃんの想いを汲んでくれたんだから。アタシだって、そのくらいは分かるよ…………」
「そうか」
ケイネスも落ち着いた事で、俺はそのケイネスの案内でダンジョンの本当の最奥へと足を踏み入れた。
ダンジョンの更に奥って話だったから、ダンジョンマスターかその後継者がいる時だけ出て来る階段とか、壁の一部が開いたりとかするもんだと思っていたのだが、違った。
俺やサゲン達には見えず、ケイネスにだけ見える何かがあるらしく、ケイネスが宙で両手を動かして何かを操作して、俺を連れて少し歩くと、俺達はいつの間にか別の部屋に飛ばされていた。
そこはそれほど広くない石造りの部屋で、壁やら床やらには光の線が走っては消えていた。
そして、そのど真ん中には何やら光る文言が刻まれた台座がせり上がっており、その上には様々な光景を映し出している光の玉がゆっくりと回っていた。
映し出されているのは、どうやらダンジョン内の各フロアの映像だ。その中には、ボス部屋で俺達を待つサゲンとラベクの姿もあった。
「はぁーー、なるほどなぁ。そもそも何が起きたのか解らなかったぜ。こりゃあ確かに、普通には辿り着けねぇわ」
「うん。ダンジョンマスターと後継者にしか見えない鍵と、魔法陣があるんだよね。他のダンジョンも同じとは限らないけど、多分似た様な形になっているんだと思う」
「まぁ、せっかく隠してある事をわざわざ言わねぇわな。で、ここで何をするんだ?」
「うん、ちょっと待ってて」
ケイネスは部屋の中央にある光の玉に手をかざし、何かをし始めた。するとやがて、ケイネスの両手が置かれた場所に手形の様な物が現れて、ケイネスは左手側を空けた。
「リューマ、ここに手を当てて」
「おう。これでいいか?」
ケイネスの左手跡に自分の左手を当てると、頭の中に声が聞こえた。
『設定完了。これにより、レンゴク=リューマが後継者となりました』
…………どうやらこれで終わりらしいが、やけに機械的な声だったな。それが何だか、妙に気になった。
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