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勇ましき者が極めるは道 ~任侠道を極めた漢、ダンジョン世界を無双する~  作者: ヤミマル


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百の道 天空ダンジョン・白亜の宮殿

 この世界には、まだ人がその存在を知らない場所や物が多数存在している。


 それは要するに人が到達出来ない場所にあり、何かの拍子に、例えばドラゴンや天使と言った遥かに上位の存在と会話する機会に恵まれた時などに漏れ聞いて、伝説として語られる存在となる。


 その内の有名な伝説が『天空ダンジョン』だ。


 山より遥か上、雲を越えてオーロラに包まれている様な、ドラゴンですら到達するのが難しい場所にそのダンジョンは浮いている。


 そのダンジョンの形を一言で現すのならば蓮の花だろうか。誰も見ることすら出来ない世界一美しいそのダンジョンの最深部、蓮の花のちょうど中心に位置する場所に、ダンジョンよりも更に美しく荘厳な白亜の宮殿が建っていた。


 そして、白亜の宮殿の最上階。美しいステンドグラスに囲まれた部屋のバルコニーでは、スラリとした身体に純白のドレスを纏った一人の女性が、優雅に紅茶を飲んでいた。


 もちろん、こんな場所にいる女性が普通の存在である筈もない。


 その事は、純白のドレスを纏う女性が被っている、真っ白な真珠で出来た様なヘルメットにも現れていた。ヘルメットから流れる様に出ている髪も白なのだから、彼女の事を名前以外で呼ぶのなら、純白の女性としか言いようがないだろう。



『…………ハク姉様』


『シリュウですか。ここまで上がって来るのは珍しいですね。どうかしましたか?』



 ハクと呼ばれた純白の女性しか居なかった場所に唐突に現れたのは、紫色の少年だった。


 紫色のゆったりとしたローブを来た少年は、紫色の髪を持ち、その顔は上半分が眼帯で覆われていた。


 見るからに彼も人外の者である。一番それを物語っているのは彼の周囲に浮かぶ、目玉位の大きさの七つの紫色の水晶と、彼が両手で抱える一際大きい紫色の水晶玉だ。


 シリュウと呼ばれた少年は、周囲に浮かぶ水晶の内の一つを前に出して、姉と呼んだハクに告げた。



『リョクリュウが死んだよ』


『リョクが? それは珍しいわね。あの子は人間の中に上手く紛れて遊んでいたでしょう? そこらのモンスターにやられるとも思えないけど、何か人間の法にでも触れて処刑されたのかしら?』



 ハクと呼ばれた女性は自らの予想を語り、『それならしばらくの間はまた眠りにつくのね』と結論を口にした。



『違うよハク姉様。リョクリュウは殺されたんだ。それも一人の人間に。完膚なきまで殺されて、もう復活する事も出来ないんだ。魂まで完全に消滅したから』


『なんですって!?』



 ハクと呼ばれた女性の真っ白なヘルメットに、一つの大きな光が灯った。それはさながら、驚いて眼を見開いた様な、そんな様子を感じさせる動きだった。


 これまでの会話から解る様に、彼女らも『龍』である。


 序列の頂点に位置する『ハクリュウ』と、序列の最下位に位置する『シリュウ』。姉弟同然の様な付き合い方でこの宮殿に住まう二人は、この天空ダンジョンのマスターも兼ねている存在である。


 ハクリュウはこの場所を動かずに世界のゆったりとした動きを感じているが、シリュウはその周囲に浮かぶ七つの眼のピントを各リュウに合わせて、その動向を常に見ている。


 シリュウはそれによって得た『リョクリュウの死』と、それを成した人間『レンゴク=リューマ』の存在をハクリュウに伝えた。


 この世に龍が存在してから、龍が殺された事ならば何度となくある。だが、復活も出来ない程に、その魂までもがすり潰された事などは一度として無かった。


 同胞である『龍の死』は、彼女らにとっても格別に大きな出来事である。…………良い意味で。



『…………そう。死ぬ事が出来たのね、私達は』


『ずっと出来ないのだと思っていたね。何度死んだとしても、必ず復活するんだと。でも違ったね。僕達は皆、滅びる事が出来るんだよ。ハク姉様』



 永遠とも言える命を持つ龍の中には、完全なる終わり、『死』に憧れを持つ者達がいる。その最たる例が、このハクリュウとシリュウだった。


 彼女達は常に滅びる方法を模索していた。


 別に積極的に死にたい訳では無い。限りのある物が何よりも美しいと言う信念の元で、自らも美しい存在でありたいからこそ、滅びの方法を探していただけである。


 だから彼女らにとって『同胞の死』と言う情報は、この上なく良い情報となったのだ。


 この様子を見た者には、リョクリュウが死んだ事に対して思う事は無いのかと、疑問を持つ者もいるかも知れないが、龍達は本当に長い時間を存在してしまった。


 だから、もう会えないと言う事実すらも、新鮮な気持ちで受け入れて、自分達の中に去来する初めての感情を、お気に入りの飴玉をゆっくりと舐め溶かすように味わっていた。



『…………会ってみたいわね、その人間に。『レンゴク=リューマ』と言ったかしら?』


『そうだね。リョクリュウは気づかなかったみたいだけど、人間である筈の彼の中には、何故か『龍の因子』が見えるよ。リョクリュウが殺された事にも、これが関係あるのかも知れないね』


『同族で殺し合った事もあるけど、私達は結局死ねなかった。だから『龍の因子』は関係ないと思っていたのだけど…………。 フフ、本当に興味深いわね、そのレンゴク=リューマと言う人間は』


『そうだね。…………それで、どうするのハク姉様。彼をここに呼んでみる?』



 そのシリュウからの質問に、ハクリュウは少し考えてから、首を横に振った。



『…………いいえ、止めておくわ』


『それは何故?』


『もう少し楽しみたいもの。今のこの感情を。龍を殺せる程の者なら、そう簡単には死なないでしょうから、時間はまだあるでしょう?』


『…………そうだね。リョクリュウとの戦いも見てたけど、殺しても死なない様な、それこそ龍みたいな人間だったよ』


『そう。それは本当に、いつか会うのが楽しみね』



 天空ダンジョン・白亜の宮殿。この異界の地は、今日も時間がゆっくりと流れている。

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