九十七の道 魂の暴走
「……………………(ゴポッ)」
「…………ふぅーー、終わったな」
完全に息の根が止まっている事を確認して俺は《モン紋》を解除しながら立ち上がった。足元に転がるリョクの死体に目を向けると、その身体からは大量の魔力が溢れ出し、同時に身体が徐々に細くなっていった。
「フォムちゃん!!」
戦いが終わった事を察して、ケイネスがサゲンとラベクを連れて走って来た。ケイネスは真っ直ぐに茨に包まれたフォレストノームに向かったが、その時、俺の直感が騒いだ!
「待て! ケイネス…………!」
俺がケイネスに向かって飛ぼうとした時、間違いなく死んでいるリョクの手が俺の足を掴んだ。
「っ!? こいつは!?」
リョクの身体がミイラのようにカサカサになっていったのは見ていたが、今はそのミイラから枝葉が生えていた。最初に殺され、操られていた冒険者共と同じだ。
つまりこの野郎! この状況で、どうにかして生きてやがる!!
となれば、一番ヤバイのはフォレストノームに手を伸ばしているケイネスだ。
「待ってて、今助け…………!」
ケイネスがフォレストノームが入った茨に手を触れようとした瞬間だった。茨の中から、鋭い木の根がケイネス目掛けて飛び出した!
俺はもう間に合わない。…………だが!
「ラベク!!」
「《鉄壁》!! …………ぐはぁっ!?」
いち早くケイネスに手を届かせたサゲンがケイネスの襟を掴んで後に引き戻し、それと入れ違う様に大盾を構えたラベクが木の根を受けて、吹っ飛ばされた!!
「サゲン! ラベク! 大丈夫か! 良くやった!!」
サゲンはケイネスを捕まえたまま地面を転がり、ラベクは何らかのスキルを使ってなお、盾を貫かれて吹っ飛ばされた。
だが、三人とも無事だ。俺はリョクだったミイラを蹴り飛ばすと、フォレストノームを捕まえている茨に向かって歩いた。
『ふぅ〜〜…………フフフ、惜しかったなぁ。もうちょっとで、お前が護っている人間を殺せたのになぁ…………』
「フォムちゃん…………?」
「ダメだ! 下がろう! ラベク、生きてるか!?」
「は、はい。サゲン様…………!」
俺の指示が無くても、サゲンとラベクはケイネスを引きずって壁の方まで下がって行った。いい判断だ。どうやらもう一波乱ありそうだからな。
ビキリッ! と茨の檻にヒビが入り、中からフォレストノームが姿を現した。
だがそれは、フォレストノームの形はしていても別物だ。血だらけで目が虚ろなフォレストノームには、頭部と頬に一つずつ、さらには胸や腹、肩や足にと六つの大きな緑色の眼が付いており、すでにその身体がフォレストノームの物ではない事を語っていた。
「テメェ、リョクだな? …………そんな事も出来やがったのか」
『いや、俺も驚いているよ。俺も流石に死ぬと思ったからね。死ぬのは初めてだけど、凄い恐怖だった。死にたい、滅びたい、なんて言ってる龍達もいるから、俺もこの世に飽きたらそんな事を思うのかと思ってたけど、俺に関しては無いね。メッチャ怖かったよ』
そうして話している間にも、フォレストノームの身体に不格好に付いた六つ目が移動している。それはまるで、安定する位置を探している様だった。
『どうせ死ぬならと、俺の身体を傀儡にする呪いをかけたら、魂が身体を離れてさ。この俺と相性の良いフォレストノームに入ってみたんだよ。これ、もし君の身体にスキルとして入れてたら、その身体を乗っ取れたかも知れないな。惜しい事をしたよ』
ケタケタと笑いながらペラペラ喋り続けるリョク。元々お喋りな奴ではあったが、どうもテンションが妙だぜ。
「随分とご機嫌じゃねぇか。死んであの世で酒でも飲んで来たのか?」
俺がそう言って揶揄すると、リョクはピタリと動きを止めて、その顔からもストンと表情が抜け落ちた。
『…………笑えないね。リューマ、お前のせいで俺は龍じゃ無くなった。自分で解るんだ。龍の因子こそまだ持っているけど、俺はもう龍じゃないと。言わば龍に近いモンスター。あのトカゲやドラゴン共と同じになってしまっている』
「どう違うか解らねぇが、そりゃ残念だったな。リョクリュウ」
『…………リョクリュウと呼ぶナ。もう俺は…………リュウじゃナイ』
ガクガクとリョクの身体が震え、その身体に付いた内の三つの眼が弾けて血を撒き散らした。そしてリョクの周囲の地面が盛り上がり、次々と土と木で出来た人形が出て来た。
それと同時にリョクの身体は崩れ、少しずつ崩壊していく。
『クククク…………アハハハハ!! 相性ガ良くテもモンスターの身体ジャ持たなイか!! ならモう暴れるダけだ!! 来イ!!』
リョクは最初にミイラにした冒険者達と自分の身体を呼び寄せ、周囲から出現させた土や木と共に取り込んで木のバケモノの様な姿になった。
『シバラクはこれデ良イ…………。足りナクなっタラあれラモ取り込んデヤル。…………滅びる前二、殺せルだけ殺シテヤルぞ!! 人間ドモがぁ!!』
「そんな事させる訳ねぇだろ。自然消滅もさせねぇ。キッチリ俺の拳で引導を渡してやるぜ!!」
血走り、禍々しく歪んだ眼の中で、フォレストノームだった眼だけは、少し違う鋭さを持っていた様に、俺には見えた。
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