とある週末の話 その1
とある週末、瑠衣は颯葵と共にいつもの居酒屋で呑んでいた。
「もう、ほんとさぁ……こんな事でメンタルやられる自分が嫌になるよ……。」
「そこは考え方だと思うよ?あんた、毎回毎回考え過ぎなんよ。」
またメンタルがやられたとしょげる瑠衣に、颯葵はいつもと同じ言葉をなげかける。そんなお決まりのやり取りをしていると、二人のスマホから通知音が同時に鳴り響いた。
「おっ、ばんさんからだ。……今夜出来るか、だってよ?どうする?ちなみに、和輝はできるって。」
「磐人くんからのお誘いで、和輝も来れるのに……のらないわけなくない?」
通知音の正体は、二人が揃って所属する仲良し四人組サーバーに送られてきたゲームのお誘いだった。どうするかという颯葵の問いかけに、瑠衣は参加する意思を即答した。
「よし、じゃあ……そろそろ出ますか。」
「そうね。いくら週末とはいえ、和輝は明日も仕事な可能性あるし。何より、早く四人でゲームがしたい。」
磐人からの誘いで瑠衣の気分が幾分か浮上したのを感じとった颯葵が、瑠衣にそろそろ解散にしようかと提案する。その提案に瑠衣が異論を唱えるはずもなく、二人は居酒屋を後にした。
駅で颯葵と別れた瑠衣は、何時もより急ぎ足で帰路につく。そして家に着くなり速攻でやらなければいけない事を終わらせ、最近購入したパソコンの電源を入れてゲーム用のチャットアプリを立ち上げる。
すると、ボイスチャットルームには既に磐人と和輝の名前が表示されていた。
「お疲れ様でーす!」
「おっ、瑠衣ちゃん!お疲れ様だよ!」
「あら、瑠衣さん!早かったね。」
瑠衣がボイスチャットに参加して挨拶をすると、磐人と和輝が快く出迎える。そんないつもと同じやり取りに、颯葵との別れ際に幾分か回復の兆しを見せていた瑠衣の気分はさらに浮上した。
「んで、二人は何してたん?」
「僕達も少し前にボイチャ始めたところでね……ちょうど、何しようかって話してたところだよ!」
瑠衣が何をしていたのかと問いかけると、磐人が何をしようか決めあぐねていたのだと答えた。
「そうなんね!ちなみに、何やるかの案とかって……?」
「それもまだでてないんだよねぇ……」
何をするかの案すらまだ出て無いという状況に、3人で頭を悩ませていた。そんな時、誰かがボイスチャットに入ってくる音と聴き慣れた声が聞こえてきた。
「おそくなりやしたー!」
「やほやほ〜さっき振り〜」
「おっ、颯葵ちゃん!やほやほ!!」
「颯葵さん、どもども!」
声の正体は、数時間前まで瑠衣と一緒に居た颯葵だった。瑠衣の気の抜けた挨拶に続いて、磐人と和輝が颯葵に挨拶をする。
「今日は何をやるんすか?」
「それがねぇ……まだ決まってないんだよ……。」
先程の瑠衣とほぼ同じ問いかけをしてきた颯葵に対して、磐人がしょんもりとした様子で決まってない事を伝える。そのまま4人で何をしようか悩んだ末、いつも通り4人でチームを組んでオンラインのFPSゲームをすることになった。