表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3.エルマとケネス(3)

 エルマの準備は整ったらしい、と見てケネスは立ち上がり儀礼を執り行う。

 部屋の中央の小高くなった玉座に座る王女に歩み寄り、一礼した。

「Apollo benedicat《太陽神の御加護があらんことを》」

 足元に跪き、黄金に輝くエルマのハイヒールに口づけをする。エルマはケネスの礼に応えた。

 「Principissa condonavit《王女は許されり》」

 

 「面を上げよケネス。そう堅苦しうするでない。我々は既知の間柄、こうして私が公務に就くのも初めてのことだ」

「おやおや王女様。これでは以前と立場が逆転したようですね」

「礼節を弁えよ、裏切り者(プロディトール)。そなたの分際でここに立てることを光栄に思え」

「これまた、手厳しいですな」

 そう言うとケネスは翻り、自席へ戻った。机上には万年筆と10冊を数える白紙の本達。ケネスは自分の仕事を知らされてこそはなかったが、大方わかっていた。


「私にあなたの歴史を書けというのですね」

「その通り。陛下に残された時間ももう長くはない。私が即位するまでにどうしても私の歴史を残さなければならない。少女エルマとしての記録の不在は、今後数百年にも渡る我が治世の歴史の土台が無いに他ならない」

「私が拒否すると言えば」

「何度言わせれば分かる。礼節を弁えよケネス。当局からの、いやここではその名前で呼ぶのは相応しくないな。「諫奏機関」からの命令だ」

「過去の恩義を忘れるような御方であれば、即位なさろうとも困難が伴うことは明白だ。どうしてあなたが……」


 「口を慎め、ケネス」

 ウェルタの怒声が荘厳な光陽の間に響いた。

「国賊元老院の主張を代弁するより先に、第一書記官としての仕事を全うしろ。話はその後だ」

「ウェルタの言う通り。ケネス、我はそちの腕を信頼している。そうでもなければこんな大仕事を任せはしまい。聞いてくれるか」

 ケネスをたしなめたエルマはその答えを待たずして語り始めた。ケネスは筆を取り、記述を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ