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勇者マネージャー勇者、隣人に出くわす

今日は大雪。何度も雪かきしてもう残りのライフはゼロよ。

冬将軍、やめたげて!?


※★人物視点。☆は三人称視点となっております。

 ★


「……イキナリ王様と謁見しろとかさあ。ゲームじゃないんだから無理だろ、普通は…」


 俺達は誘拐女神によって詳細を聞く暇すら与えられずに部屋から追い出された。

 部屋の外は長い通路になっていて、かなり奥に重たそうな鉄扉が見える。というか…なんだ? 通路は石造りで窓は無い。オマケに湿っていてどこか陰鬱な雰囲気が漂ってくる。牢屋みたいだな?

「ここ王城の中なんだろう?」

「は、はい。正確にはここ真鍮の国の王城に隣接する"勇者の館"ですけど」

「女神の下に集いし、正真正銘の真の勇者とその関係者以外は立ち入れぬ神聖な場所なのですぞ!」

「………その地下」

 三人が歩きながら俺の質問に答えてくれた。そして、以外にも三人は既にそれぞれ別々に国王様と謁見した事があるそうで、俺を謁見の間まで案内してくれる事に相成ったわけよ。

「やっぱ地下なのか…ところで、ひー、ふー、みー…この通路にゃ6部屋あるが。もしかして、勇者パーティって他にも結構いるのか? 女神様も他の糞姉妹がどーとかこーとか」

「はい。この勇者の館には現在、私達の他に47の勇者パーティが在籍しています。私達も含めると48のパーティ、ですね」

「…ふーん。……多くね?」

「まあ、吾輩の見解ですと実際に目立つ勇者活動をしているものは半数と少しくらいですぞ!そして国の評価によって12パーティ毎に最上位、上位、中位、下位に区分されておりますぞ? フンス!」

「……地下は下位」

「まあ、そうだろね。つまり館は左右に6パーティ…6部屋で分けてんのな」

「そうですね…私達は2階より上には行ったことはないのですが…とてもご立派らしいですよ」

「ですが、1階に部屋を構える下位の勇者パーティもおりますぞ」

「へえ、なんでだ?」

「…え、え~と」

「……例外。変人が居る」

「変人とな」

「…実はお隣さんなんですよ。さっき通り過ぎましたけど」

 ちなみに俺達の部屋は突き当りだ。

「ああ。なんかドアがやたらと綺麗で立派だったのはそーいう事か」

 確かに隣の部屋であろうドアだけテクスチャが間違っていた。いわゆるバグかと思って俺は放置していたのだが…。どうやら、この異世界はもうベータ版ではないらしい。

 俺はそのドアをもう一度確認しようと振り返ったところだったな。通路の先の鉄扉が開いたのは。

(キャ~!キャ~!キャア~!!)

 扉が開いて、その先から光が差すと共に黄色い声が漏れ出して通路に反響した。

 集団の中心人物らしき男が手を振り、他の連中によって鉄扉が閉ざされる。そしてコチラに向って歩いてくる。

「う!ま、眩しい!?」

 その男は金髪碧眼、彫刻のような黄金比の美貌、白に金色の装飾の全身鎧、腰には黄金の剣、後光の射しそうな完璧なスマイル。…ヤバイ、非の打ち所がないイケメンだわ。なんの勝負も仕掛けてないが…はい。俺の負けです。

「…アララ?」

「ありゃあ~? もしかして隣人さんかなあ~?」

 イケメンの行進は計4名。間違いなく勇者パーティなんだろうが、その内のひとりは俺と同じ勇者マネージャーということだ。

 そして、俺らを確認した途端に前に飛び出してきたふたりはイケメンの護衛か?

「…………」

 子供か? と思えるほど背が低い女の子。おそらくうちの遊び人よりも背が低い。肌は青緑がかっているが不思議と気持ち悪くない。眼が大きく顔は愛らしい短髪の少女…それと胸にとんでもないブツをぶら下げている。思わずシリコン入ってませんか? などと質問したくなるほどに俺の探究心を強く惹きつけやがる!多分、顔と大して変わらないサイズだから…いわゆる巨乳を超えた爆乳というヤツだな。実際に目にするのは始めてだ、感動した!

 それと、もうひとりは単なる人間の紫色の長い髪の女性だ。そりゃ確かに身体は引き締まってるが、素人の俺の目線で言えば…ユーゴンの方が強そうだ。何故にそこまで彼女のボディラインがわかるのかって? そりゃわかるさ。だって、服着てねーんだもん。いや、語弊があるな。全裸じゃない。ビキニアーマーの先を行く…一言で言うならワイヤーアーマーだろうか? マジで局所しか隠しておらず、トゲトゲのある肩当と部分々々にトゲが突き出ている。まるで有刺鉄線を体に巻き付けているような…だいぶパンクしてる女性だな。

 すると今度はそのふたり間をスルリと抜けて片眼鏡を片手で弄るキチっと真紅のスーツを着こなした美少()が俺の前に歩み出てきた。

「なんですかあなたは? 見慣れない顔ですね? ここは神聖な勇者の館。関係者以外は立入り禁止で破れば厳罰です。衛兵を呼びますよ?」

 アラアラ、ツンケンしちゃってかわいーじゃん。

「それはご挨拶だなあ。俺はマサル…いや、マサールだ。この"最後の希望"のマネージャーをやらされるハメになった哀れな男さ。優しくしてくれよ?」

「え!? ここ百年間、メンバーもマネージャーも集まらなくて活動できなかった万年最下位パーティがですか!」

「オイオイ…どんだけだよ」

 あの女神…いや、何だかむしろ哀れになってきたな。俺は少しだけあの女神に優しくなれたかもしれんな。

「(ジロジロ)それにしても…その恰好。本当に勇者マネージャーなんですか?」

「概ね俺も同感だ。…しかし、なってしまったもんは仕方無いだろう。それにコイツらを放ってもおけんしな。俺も元の世界に早く帰りたいしな。悪いが、これから国王陛下との謁見があるんだ…ところで、オタク達はなんて名前の勇者パーティなんだ?」

「元の世界に帰る? …って、アナタ!私達を知らないなんてとんだモグリですね!? この真鍮の国で私達の名を知らない人なんて…!」

「おい。ミソー」

 ミソーと呼ばれたそいつがその声に驚いて振り向く。声の主は件のイケメンだった。何故か振り向く片眼鏡スーツボーイの頬が若干赤い。まさかコイツ…!? というかイケメンはさっきまでのスマイルがまるで嘘かの様に不機嫌な表情をしていた。

「け、けいめんしゃま…!」

「退け!ブス共」

 なんとイケメンが前に出ていた3人、ミソーとやらの頭を鷲掴みにして後ろへと放り投げ、爆乳を蹴り飛ばし、露出過多を顔を押し退ける。何故か顔をグニャリと押し退けられた方は「ああんッ」と蠱惑的な声を上げていた。とてもエロス…!

 イケメンは誰にも邪魔することができないオーラのようなものを纏って直進してくる。そして、俺達の方をみやると先程以上の笑みを浮かべてた。なんだコイツ。情緒がアンバランスなのか?

 と、狙いはコイツらかこのイケメンの皮を被った狼めが。

 俺は彼女らを庇うようにさり気なく前に出た。…何故かイケメンの笑みが深まる。恐っ!?

「あ!」

 何故かキュリコが逆に俺を庇うように腕を引っ張る。確かに俺はリアルなファイトのファの字も知らないまごうこと無き一般ピーポー。だがな、キュリコよ。男には生まれながらに女を守るべし(保護対象と現状による)と決まっているんだぜ…!

 俺はサッ!っとキュリコ達を庇うべく右手を横に上げた…が、その手はいつの間にか息の掛かる距離にまで接近してきていたイケメン(たぶん光属性)の両手にギュウと包まれていた。

「やあ!はじめまして。僕は君達の隣の部屋を使わせて貰っている"光の貴公子"のケイメンだ!…君、この辺じゃあ見ない顔だけど…とても澄んだ綺麗な眼をしているね? …吸い込まれそうだよ(恍惚の表情) そうだ。国王陛下との謁見の前に僕と()の部屋に寄っていかないかい? 綺麗な服や…清潔なシーツ。それにとても質の良い甘いワインもある。(※耳元で囁かれる)どうかな…?」

 俺は全身に今迄に感じたことのない電流が流れた。…勿論プラスじゃなくマイナスの方な。俺は所詮、しがないノーマルなんだ。贅沢だがストライクゾーンは狭い方なのね。

 というか、YA・BA・I。

 コイツ…単なるイケメン勇者様じゃあねえぞ!?


 

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