勇者マネージャー、強制転移させられる
最近、新作・連載作品の準備が滞っていたのでリハビリとして書いてます。
ぶっちゃけ、気分転換で部屋を片した際に見つけた●ャイクエをプレイしてたら書きたくなってしまいました(笑)
脱字・誤字・メタな表記が多く含まれています。
※★は人物視点、☆は三人称視点となります。
★
…? 俺は休日に家であのクソゲーとも名作とも呼ばれるレトロRPGをプレイしていたはずだが?
「よくぞ参った! 異世界より選ばれし、勇者の導き手よ!」
「…………」
俺の目の前には大きな立て鏡がいつのまにか在って、その鏡の中にはイキナリ俺に向ってけったいな事を言ってのける女が居た。
髪は長い。何故かその長い銀髪の裏が某アニメのラスボスであり、主人公の実母というキャラのように虹色に輝いている。また、あからさまにウソ泣きしている眼の上の額には何故か光るアーモンド形の石が3つも埋め込まれていた。 近未来ファッションかな? ファッション初心者の俺にとっては少しばかり荷が重い。
だから、俺は無言で視線を逸らす。 が、よくよく考えれば俺の部屋にはこんなデカイ鏡など無かったはずだ。俺はナルシストではないのでな。
…というか床がボロイ。いや、壁も天井もボロイ。というかボロイ。とにかくボロイ。そしてここは俺の部屋じゃあない!?
「どこだここは!? おい!このハイレベルなコスプレめ。俺をどこに拉致りやがった!」
俺は鏡を鷲掴みにして揺さぶる。
「ど、どうか…まずは、妾のお話を聞いてはくれまいか?」
心優しい俺は鏡を叩き割る前に最後の言い訳を聞いてやった。
鏡の中に居るのは自称女神とやらのヤベエヤツ…名をスリーストーン=ライトと名乗った。ちなみに、その女神はウソ泣き続行中。
俺をこんな荒唐無稽な場所に呼び出したのは、なんと勇者の卵である3人の有望な若者を俺の手で管理・指導して立派な勇者として育て上げ、見事、魔王を倒して成果を上げて欲しいという無茶振り以外なんでもないものだった。
「無理。 帰る」
「そ、そう言わずに…なっ? なっ? なっ!? 先ずはその3人を見て給れ!」
「オイ離せ! てかアンタ鏡の中から出られんのかよ!? 紛らわしいぃ」
理性的な状況判断を下した俺に動揺した女神が鏡から飛び出して俺にしがみついてきやがった。
「ハァハァ…! そう長くは出入りできぬし、この部屋限定じゃがな…ンんっ! さあ、3人共出て参れっ!」
女神が俺をタックルして床に転がすと奥から仲間を呼んだ。まさか、女神Bと女神Cと女神Dじゃあねえだろうな?
「は、はじめまして?」
「…フンス!」
「…………」
部屋の奥にある3つのドアの先からそれぞれ出て来たのは3人の女性だった。
虎縞模様のような銀髪の混じった黒髪の短い髪を切り揃えた美少女。何故か可哀相なくらいツギハギでボロボロのローブ…いや、修道服を着ている。 金欠なのかな?
目の覚めるような青い髪を持った背は低いがこれまた美少女。3人の中では一番小柄で髪が床に届きそうなくらいに長い。そして、やたらと鼻息が荒い。金色(多分、メッキだろ)のリュートを手に持って胸を張っている。身に纏った派手なドピンク色のピエロチックな衣装が目に痛い。
最後にムッツリと黙って俺を睨んでいるのは、クシャクシャしたくなる癖の強い白髪にやや長い耳と鋭く尖った歯。それに緑がかった褐色の肌を持つ長身で筋肉質、アスリート体形の女だった。多分、俺より背が高いんじゃないかな? そして、何故に彼女だけ服を着ていないのか? い、いや…胸にサラシを巻いていて、腰にはフンドシめいたものを穿いてるだけなんだよなあ。 俺にはその肉体美が少しばかり目に毒だわ。 あ。顔は文句無しのワイルド系美人だぞ。
「3人共、自己紹介を」
「は、はい!私は僧侶のキュリコです! これからお世話になります!」
そうやって、虎縞模様みたいな髪の女の子がやや緊張した面持ちでペコリと俺に向けて頭を下げた。 アラ? 爽やかで良い娘さんじゃあないの。勇者なんかよりお嫁さんの方が向いてそうだが?
「吾輩は世界最高の吟遊詩人!貴殿が我が名をリンリンと呼ぶ事を特別にぃィィ許すぅ!」
「……リンベルだ。そして、残念ながら楽器を持った単なる遊び人、だ…」
女神がどこか暗い顔をして俺に正しい情報を助言してくれた。 どうしてそんなにも辛い顔をするんですか? 俺も辛くなるだろうが、止めろ!
「…………」
「………え~と?」
「………ユーゴン」
ボソリと表情を変えずに背の高い褐色美人がただその一言だけ言い放つ。
「…あっ、そうなんだ」
「コヤツはユーゴン。まあ、盗賊なんじゃが戦士並みに戦闘でも期待できるぞよ」
「……僧侶のキュリコ。遊び人のリンベ「ヌッ!?( ゜Д゜)」…吟遊詩人のリンリンと盗賊、兼戦士のユーゴンのパーティか…」
平たく言えば僧侶・遊び人・盗賊のパーティ…。希望的に見れば僧侶・遊び人・戦士(盗賊)か? バランスが悪いな…特に遊び人がネック。仮に将来的に賢者になれるとしても…否、コレはあのゲームでも〇トの伝説でもないのだな。
「以上の3名が妾の誇る勇者パーティ"最後の希望"のメンバーだな」
「うん!無理だな! 俺は帰るぞ?(^▽^)/」
俺は立ち上がって爽やかに別れを告げる。
「ちょま!? 待たれよっ!せめて其方の名を、名を教えてはくれぬか?」
「ええ…? まあ、いいや名前くらい。 マサルだよ? ホラ、早よ俺の部屋に帰…」
だが女神はウソ泣きを止めて急にガバリと立ち上がって邪悪な笑みを浮かべた。
「ヨッシャア!よおおおぉし良い良いっ!! 其方の真名、この女神スリーストーン=ライトの御霊に刻み込んだぞよ! 其方を妾の勇者マネージャー"マサール"として認めるぅゥゥゥゥ!!」
「はあ!?」
俺の身体が急に光って女神の指先から何かよからんモノが俺の中へと流れ込んで来たではないか。
「ああ!? このヤロー!何しやがった!? それにマサールとはなんだマサールとは!?」
「おお、おお。このヤローとは不敬だぞよ。まあ、寛大な妾だから許すとするが。晴れてこの、女神スリーストーン=ライトの加護を与えしものとなったのだからの。見事、仕事を全うして給れ」
俺が鏡に詰め寄ったが、当の女神は知らん顔だ。
「せんなきこと。この妾に真名を明かして制約を果たしたのだからの。しかし…これで妾がこれ以上、あの糞姉妹共に馬鹿にされる事も無かろう。礼を言うぞよ、マサール…フフフッ!」
「だからマサルだって言ってんだろ!? 俺の世界じゃメジャーな名前なんだぞ!全国のマサルさんを敵に回すぞ…チクショウめ」
俺はドスンとその場に腰を下ろして大きな溜め息を吐いた。
ふと、俺の視界の端に3人の心配そうな顔をが映る。
☆
「……そいで、女神スリよ。俺にコレから何をしろというのかね」
「その手癖の悪い女神のように呼ぶのは止めい。そうだの…まあ大まかな話をしようかの」
異世界から転移させられた男、マサールが無理矢理転移させた女神スリーストーン=ライトにくたびれた表情で問いかけた。
女神の大雑把による説明を解釈すると…。
1.マサールは"最後の希望"の勇者マネージャーになった。おめでとう!
2.勇者マネージャーはパーティメンバーのプライベートを含めてほぼ全てを管理する責任を負う。
3.勇者マネージャーはパーティメンバーのレベル・装備・状態を把握できる。
4.勇者パーティはかつて悪堕ちしてやらかした勇者パーティの事例からパーティは3人までと決めれれている。
5.国認定の勇者パーティは各女神が指定した勇者マネージャーを付けなければならない。
6.勇者マネージャーは女神の制約によって戦闘に参加できない。また、モンスター・悪しき存在(NPC規格)からの攻撃を受け付けない。
7.女神の制約下にある勇者パーティ及び勇者マネージャーは基本不死となる。例え、力尽きて倒れてもこの部屋(王城内らしい)で復活する。
8.勇者パーティの主な目的は神々や人々からの依頼を消化するのと魔王の討伐。
9.ただ、現在は国内の勇者パーティは飽和気味で最下位の女神は返却予定。
「アレだけ必死になってたのは最後の件でか」
「そこよ。妾の勇者パーティはメンバー集めに大変難儀した…!キュリコはほんに拾い物じゃったが…残りは…まあ、ユーゴンに関しては戦力になる」
「吾輩も立派な戦力である!? フンス、フンス!」
「まあまあ…リンリン?」
「…………」
「問題はジャーマネじゃった」
「そこ。女神らしく正しい言葉を使おうよ?」
「国王に認可させる為には勇者パーティの管理責任者、勇者マネージャーの存在が絶対の条件。だが、長い間…妾がアチコチに頭を下げてスカウトしたのじゃがのう。妾は女神の姉妹の中でも立場が弱かったので誰も相手にしてくれんなんだ。そこで…」
「俺を異世界から掻っ攫ってきたわけね」
「スマンかった。だが、妾も女神の一抹としてせめて地上での仕事を一度でも全うしとうかったのじゃ。許してたも…」
スリーストーン=ライトはそう悲し気な眼をしてマサールに頭を下げた。
「まあ、過ぎたことだ。あ、許しはしてないからね? でだ、俺は元の世界に帰れるのか?」
「それはあ……魔王? あ、いや大魔王を倒したら。…かのう?」
「何故に疑問形? …限りなく怪しいが、ここは従う他無いしな」
マサールは鏡を一瞥すると立ち上がり、服に付着した埃を叩いた。
「…それとさ。俺の服…なんなのコレ?」
「ああ、そりゃあ異世界のモノを持ち込めないのは当然じゃろうて。全並行異世界条規にも記しておる。常識じゃろ?」
「いや。そもそも俺は自分の世界以外に他の世界があること自体しらんかったし」
マサールは呆然と自分の服を掴んで眺める。それはいわゆる布の服…にしては少しお貧しい見た目の服であり、所々に傷付き、穴が開いていた。
「なんでこんなにダメージフルな服なんだ。ビジュアル系か?」
「ちなみに防御力は無いぞよ」
「装備してる意味ねーだろ!?」
「其方を裸にしておくのが忍びない故に妾の優しさじゃぞい? まさか其方、裸族かえ? なら仕方の無い。ただし、この部屋でだけ許可する。其方が乙女らの目が気にならぬというのならの。しかし、それ以外の公の場で裸になった場合は衛兵を呼ばれてしまうから気を付けるのじゃぞ?」
「誰が裸族か」
マサールと女神との酷い漫才がひと通り終わると、女神が「暫し待つのだ」と言って鏡の中に消えた。マサール達が数分の目線のやり取りだけの沈黙の中、再び女神が姿を現した。
「ふむ。マサール、では其方の勇者マネージャーとしての初仕事じゃぞい。キュリコらも一緒に行って貰うからの」
「何させようってんだ?」
マサールが眉間に皺を寄せる。
「国王にアポを取っておいたからの。早速、其方の"最後の希望"を率いて謁見して参れ」